やりがいの最大化

考え方

出光興産は、全ての従業員がやりがい・働きがいを持って、活き活きと働くことができる、より良い会社の共創を目指し、インナーコミュニケーションの活性化を図っています。従業員一人ひとりの成長とやりがい向上のためには、自由闊達な対話ができる安心・安全な場をつくり、良好な社内コミュニケーションを促進するとともに、全社・組織目標の十分な理解浸透などが基盤となると考えます。

取り組み

出光エンゲージメントインデックス

出光エンゲージメントインデックス(出光EI)は、当社が独自に開発した指標で、組織に対する社員のコミットメントを測定するものです。「高い当事者意識」「当社に帰属する誇り」「自己の成長実現」「組織への貢献意欲」「企業理念の体現」「組織の垣根を超え変革に挑戦」の6つの要素で構成されています。この出光EIに強い影響を及ぼす要素を明らかにすべく、やりがい調査アンケートの質問項目を独立変数、出光EIを従属変数とした重回帰分析を実施し、特に高い寄与率を示すキードライバー6項目を抽出しています。

●出光EIとキードライバー

出光EIとキードライバー
出光EIとキードライバー
出光EIとキードライバー

出光EI

各キードライバーに対するアプローチとして、2024年度はキャリアデザイン部や出光社員会の創設といった、個々人の自律キャリアの支援、主体的な職場風土づくりの促進を実施し、2024年度の出光EIは70%となりました(2022年度: 67%、2023年度: 69%)。

出光EI
出光EI
出光EI

性別

2022年度で5ポイント差のあった男女差は2024年度時点で3ポイントまで縮小しました。これはメンタリングをはじめとする様々な施策が一定の成果を挙げてきた結果だと受け止めています。一方、特に「行動指針は仕事をする上で判断・行動の基準になっている」に関するスコアが男性に比べて女性が顕著に低くなっていることが明らかになりました。今般新たに制定した行動指針をより丁寧に説明し理解浸透を図ります。

性別
性別
性別

勤続年数別

勤続年数別では、勤続10年未満の属性が、勤続20年以上の属性と比べて2022年度時点で10ポイント以上低くなっていました。特に、「当社の企業理念は、日常業務において私の指針となっている」に関するスコアが、勤続20年以上の属性と比べて顕著に低くなっていることが分かりました。勤続10年未満の属性には、当社に新卒で入社した社員とキャリア採用で入社した社員の双方が含まれており、今後特にキャリア採用者への企業理念の理解浸透策を講じてまいります。

勤続年数別
勤続年数別
勤続年数別

出光成長スコアの設定

既存事業の構造改革を通じた持続的な成長を実現するために、当社はゴール指標として出光EIを最重視しています。出光EIは、2022年度:67%、2023年度:69%、2024年度:70%と漸次改善している一方、2025年度目標: 75%を達成するためには一段と思い切った施策が必要です。
従来の出光EI分析は、平均値をもとにした対応策検討に終始していたという反省を踏まえ、今般各職場のリーダー層30名強を抽出し、匿名かつ記述式のアンケートを実施して現場の社員が実感している課題を抽出することにしました。アンケート結果を分析したところ、

  • 成長実感が得られない

  • 職場での貢献実感が得られない

  • 個人のキャリアを描けない

の3点が課題として浮かび上がってきました。この3点は、特に出光EIへの寄与率が高いキードライバー6項目のうち、「当社には能力を伸ばし成長する機会がある(成長実感)」「現在の仕事に対する自身の取り組みと成果に満足している(貢献実感)」「今後当社でのキャリアを思い描ける(キャリアを描ける)」の3項目と一致しています。そこで、この3項目を新たに中間指標「出光成長スコア」として設定することにしました。なお、出光成長スコアと出光EI の相関係数は0.8と高い数値を示しています。現状開示を行っている出光EIはゴール指標として継続的に開示を行い、出光EIの向上につながる先行プロセスであり、喫緊の重要組織課題達成のための中間指標である出光成長スコアを経営上の重要指標として追跡し、かつ社員全員で向上のためのムーブメントを起こしてまいります。これが結果的に既存事業の成長にもつながっていくものと考えています。
なお、2024年度の出光成長スコアは64%でしたが(2022年度60%、2023年度62%)、上位3分の1の平均スコアが70%であるのに対し、下位3分の1の平均スコアは58%と12ポイントの差がありました。事業内容、所属するメンバー特性等、部門毎に出光成長スコアにばらつきがあり、部門毎にきめ細かな丁寧なアプローチが必要であることを再認識しました。

●出光成長スコアの設定

出光成長スコアの設定
出光成長スコアの設定
出光成長スコアの設定

●出光成長スコアと出光EIの関係

出光成長スコアと出光EIの関係
出光成長スコアと出光EIの関係
出光成長スコアと出光EIの関係

出光成長スコアに資する打ち手の展開

当社の人的資本経営に関するKPIおよび中間指標は、下図のとおりとなります。これらを踏まえ、出光成長スコアの向上に向けて、本年度は主に以下の点に取り組みます。

出光成長スコアに資する打ち手の展開
出光成長スコアに資する打ち手の展開
出光成長スコアに資する打ち手の展開

キャリアを主体的に考える機会の拡大

出光成長スコアを構成する「今後当社でのキャリアを思い描ける」のスコアが51%に留まっていることが課題です。当社では様々なキャリア支援策を用意し、社員に選択肢を提供していますが、それを自分事として受け止め、自ら主体的にキャリアを描ける社員の割合がまだまだ不足しているのが現状です。
これを打開すべく、全部門が一堂に会し他部門の業務理解、自身のキャリアを考える機会となる「ジョブフェスティバル」、現職務を継続しながら20%の時間を他部門の業務に充てることができる「社内副業制度」、部門を超えたプロジェクトへの参画、社外への越境学習等へ参加した人の割合を測定する「自部門外活動参加率」をKPIとして設定します。また、これらの経験を経て自ら主体的にキャリアに関し意思決定する社員を後押しする「自律的キャリア意向比率」を併せてKPIとして設定しフォローしていきます。これらは出光EIを構成する「組織の垣根を超え変革に挑戦」にも寄与すると考えています。

キャリア支援の実感向上と、次世代リーダー層の拡大

各種キャリア支援策や上司をはじめとする周囲の人たちのサポートが社員にどのように実感されているのかを測定し、適宜軌道修正できるようにしていきます。そのため、「キャリア周辺サポート比率」を新たにKPIとして設定します。また、自らのキャリアプランを明確にする過程で当社において現在の女性役職者比率だけではなく、リーダーとして活躍したいと考えている社員の層に厚みを持たせたいと考えております。そのため「リーダー層希望比率」を中間指標として測定していきます。これにより、性差のない将来のリーダー層・役職者のパイプラインを形成します。

役職者の面談力向上による、キャリア支援力の向上

部下のキャリア支援に当たって直属の上司の役割はきわめて重要です。2025年度上期は新行動指針に基づく人事制度の考課者訓練、そして下期以降、2年をかけて重点的に面談力(傾聴・フィードバック)向上に資する研修を全役職者対象に実施していきます。まずは、上司である役職者に対し、部下の成長実感、貢献実感の向上に資する面談を実施できているかどうかを確認する「効果的面談実施率」をKPIとして設定します。

人的資本の可視化と最大活用

当社は、人的資本の可視化と最大活用を図るため、生成AI技術を活用したプラットフォームを構築しています。これにより、社員のスキルやキャリアポテンシャルを可視化し、最適な配置や育成計画に役立てています。本年度は上記で設定したKPI情報を有機的に組み合わせ、経営情報としての活用を図っていきます。

「やりがい」調査アンケート

人の成長・やりがいの最大化 を重視している当社では、従業員の「やりがい・相互信頼・一体感」を定量的・継続的に分析し、組織の風土や状態を把握することを目的に、「やりがい」調査アンケートを年に1回実施しています。調査結果は経営層および調査に参加した全従業員にフィードバックし、結果の詳細分析および具体的なアクションプランの策定・実行につなげ、その取り組み成果を翌年の調査で確認するというPDCAサイクルを回しています。

●2024年度「やりがい」調査アンケートの概要

実施時期
2024年7月下旬~8月上旬
対象
当社および国内外関係会社(31社)の計12,070名
回答率
96.5%
2024年度の特徴
指標とする全社の“やりがいスコア” は71%から72%へと改善が見られ、課題であった属性間(特に性別、年代)のスコア差もこの5年で徐々に縮まっています。今年は特に「成長機会」に改善が見られ、キャリアデザイン部の発足をはじめとする、個々のさらなる能力発揮や成長を支援するためのキャリア関連施策を講じた成果と考えています。本調査結果も踏まえながら、経営層と従業員(出光社員会)で対話を重ね、本質課題を見極め、適切なアクションにつなげていきます。

●やりがいスコア(性別・年代別)
●Engagement score (gender, age group)

やりがいスコア(性別)

性別

やりがいスコア(年代別)

年代別

Engagement score (gender))

gender

Engagement score (age group)

age group

経営層と従業員との対話

出光社員会の取り組み

人財戦略

タウンホールミーティング

人財戦略

人事諸施策に関する社員との意見交換

当社グループは、国内外の各地域における労働関連法令の順守に努めるとともに、全ての従業員が安心して仕事に注力できる職場環境づくりを進めています。労働基準法に基づき、従業員代表が労使協定および就業規則の制定・改定に伴う意見書の作成などを行います。人事諸施策の変更に関する周知は、社員向け説明会などの場で行っています。
既存の制度について任意回答の社員アンケートなどで意見を募り、社内ポータルやメールなどによりその結果を共有するとともに、タウンホールミーティグなどで同テーマを議題にするなど会社と社員の対話の機会を設けています。
当社の労働組合であるFTOE(Forward Together with Our Energy)との間では、定期的に労使協議を行っています。これらの取り組みを通して、人事諸施策の内容や賃金水準、労働条件や福利厚生について、納得性・共感性の高い施策の展開を目指しています。
また今後の人事制度設計にあたり従業員へパブリックコメントを募集して、検討しています。

企業風土醸成の推進

Activity Based Working(ABW)の推進

大手町オフィス改善PJの様子

大手町オフィス改善PJ

当社は、いかなる環境変化にもスピーディかつフレキシブルに対応し事業目的を果たしていきます。その原動力である従業員一人ひとりの生産性・働きがい・創造性を高め、新たな価値創造に挑戦するため、Activity Based Working (ABW)を進めています。ABWとは、「いつでも・どこでも・誰とでも」、時間・場所にとらわれず、従業員が自らの業務に最適な働き方を自律的に選択できることであり、当社はその環境を整備しています。
2020年12月に大手町本社へ移転して以降、社員の生産性向上を目指し、ABWを推進してきました。毎年アンケートにより社員の声を集め、オフィスに反映しています。2023年度は大手町オフィス改善PJを発足させ、オフィスの改善体制を強化しています。2023年7月にはオフィスの各スペースに活用方法を記したガイドラインを設置し、誰もが各スペースを有効に活用できるようにしました。その他、転入者向けにオフィスガイダンス実施や活用頻度の低いスペースの変更など 、社員がより働きやすい環境を目指して日々対応しています。本社のみならず、各事業所など でもABWの推進を行っています。