やりがいの最大化
考え方
出光興産は、全ての従業員がやりがい・働きがいを持って、活き活きと働くことができる、より良い会社の共創を目指し、インナーコミュニケーションの活性化を図っています。従業員一人ひとりの成長とやりがい向上のためには、自由闊達な対話ができる安心・安全な場をつくり、良好な社内コミュニケーションを促進するとともに、全社・組織目標の十分な理解浸透などが基盤となると考えます。
取り組み
出光エンゲージメントインデックス
出光エンゲージメントインデックス(出光EI)は、(1)高い当事者意識、(2)当社に帰属する誇り、(3)自己の成長実現、(4)組織への貢献意、(5)企業理念の体現、(6)組織の垣根を超え変革に挑戦、という6つの要素で構成されており、人財戦略の進捗度を従業員目線で捉えた指標です。2022年度67%→2023年度69%→2024年度70%と推移してきました(2025年度目標75%)。
1. 出光EIに影響を及ぼす要素
出光EIに影響を及ぼす要素を明らかにするために、やりがい調査の質問項目を独立変数、出光EIを従属変数とした重回帰分析を実施したところ、以下の6つの質問で74%の寄与率を占めることがわかりました。
カテゴリー名 | 質問項目 |
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成長機会 | 当社には能力を伸ばし成長する機会がある |
今後当社でのキャリアを思い描ける | |
企業理念・戦略・方針 | 行動指針は仕事をする上で判断・行動の基準になっている |
所属部署の目指す戦略・方針を明確に理解している | |
創造性・主体性 | 現在の仕事に対する自身の取り組みと成果に満足している |
当社では前例にとらわれず、より良い仕事のやり方を考え出すことが奨励されている |
青字 : 当社の強み(好意的回答75%以上)
2. 「成長機会」カテゴリーの課題と打ち手
本カテゴリーを構成する2つの質問項目は対照的な結果となっています。
2-1. 成長する機会の提供
多くの従業員が、当社には能力を伸ばし成長する機会があると感じており、これは当社の強みとなっています。当社では、2023年度から全部門が一堂に揃い自部門を紹介するジョブ・フェスティバルを開催し、2024年は約1,100名が参加しました。本イベントは他部門を知り、自身のキャリアを考える機会となっており、参加者の90%以上が好意的な回答をしています。また、現職務を継続しながら、20%の時間を他部門の業務に充てる社内副業制度の利用者は累計82名に達しました。これは個人のキャリアの多様化と部門のサイロ化防止に貢献しています。さらに各自が自らに必要なスキルを獲得するための手挙げ式の公募型研修を2024年4月にスタートさせ、7月末時点で400名を超える従業員が応募しています。特に社内の常識にとらわれない柔軟な発想で社内外をリードしていけるような人財を生み出すために、越境学習や他流試合の機会の提供に力を入れています。
2-2. 当社でのキャリア形成
一方、今後当社でキャリアを思い描けると答えた従業員は51%とまだ半数に留まっており、ここに大きな課題があると認識しています。2024年4月に、「自律的キャリア形成の啓発」「多様なキャリアパスの提供」「スキル開発メニューの提供(手挙げ式)」「越境学習の機会提供」「キャリアコンサルティング」の5つをミッションとする「キャリアデザイン部」を人事部とは別組織で立ち上げました。2024年から従業員に自らどう成長していきたいかを思い描く「キャリアデザインシート」の作成を推奨し、上司や社内キャリアコンサルタントによる支援を強化しています。
3. 「企業理念・戦略・方針」カテゴリーの課題と打ち手
3-1.行動指針
当社は統合新社が誕生した2019年に、企業理念に先立ち行動指針を制定しました。成長を中核概念に置き、「自立・自律」「変革」「共創」「高潔」「健康・安全」の5つで構成されており、人事評価の能力評価項目もこれに基づいて設定されています。その後、2021年に企業理念を成文化しましたが、両者を見比べると、行動指針は表現がやや汎用的であり、当社らしさが表れていません。当社は「自分はどうしたい」を明確に持ち、自分自身の頭で考え抜き、多様なチームメンバーの力を結集し、当事者意識を持ってやりきる人財、失敗を恐れず果敢に挑戦し続ける人財を求めています。現行の行動指針を支持している従業員は66%に達していますが、今年度中には企業理念「真に働く」に基づき行動指針・人事評価基準を再定義し、2025年度の人事制度改定に反映していきます。これにより、企業理念「真に働く」を体現できる人財を一人でも多く輩出していきたいと考えています。出光EIに大きな影響を及ぼす6つの課題を年代別に分析したところ、特に「20代・30代の従業員が今後のキャリアを描くのが難しいと感じている」という課題が浮かび上がりました。この課題を解決するには、従業員が成長を実感し、仕事を通じて達成感を得ることが重要です。そのため、組織の固定された風土にとらわれず、個々の価値を大切にし、自分らしさを発揮できる環境を作りたいと考えています。これにより、若手従業員が自信を持って意欲的に働き、「出光で成果を出したい、ベストを尽くしたい」と感じるような動きを生み出したいと考えます。従業員一人ひとりの多様な価値観や意見を受け入れ、若手従業員の情熱を引き出すことで、新たなエネルギーを生み出し、カーボンニュートラルに向けた新しい事業の基盤作りを進めていきます。
3-2. 所属部室の戦略・方針の理解
短中期的な視点と自身の所属部室の戦略方針を理解している従業員が多いことも当社の強みです。一方で、全社や他部門の方針については十分とは言えません。今後、部門横断的な活動が求められる中で、このようなサイロ化現象は大きな障害となります。こうした問題意識から、2024年4月に会社から独立した組織として一般社団法人出光社員会を設立しました。
![](/jp/sustainability/society/employee_engagement/p34ccn0000004bi7-img/P7170004.jpg)
社員会による従業員向け説明会
社員会では、専任の理事が事務局となり、「部門・年代を超えた従業員の交流」「従業員が主体となった経営への提言」「やりがい調査の企画・分析」「タウンホールミーティングなど経営層との直接対話」の企画を推進しています。活動資金は会社が全額負担し、役職者も巻き込んだ活動としている点に特徴があります。同時に、社員持株会への参加率を90%まで高める施策を講じました。より多くの従業員が会社経営を自分事として捉え、部門の枠を超えて行動することを期待しています。
4. 「創造性・主体性」カテゴリーの課題と打ち手
4-1. 仕事への達成感や適性
仕事への取り組みや成果の満足度は、担当業務に対する適性(スキルや能力の発揮度)、またその結果生まれる達成感によるものと考え、これらの相関性も検証しています。当社は、従業員が自ら手を挙げて他の職種に挑戦する「キャリアチャレンジ」制度を2020年から実施しており、これまでに約90件が成立しました。今後、キャリアチャレンジ制度や社内副業制度の拡大とともに、自律的キャリア形成支援に向けてキャリアデザイン部の施策を着実に展開していきます。
4-2. 前例踏襲主義・生産性
前例にとらわれず、より良い仕事のやり方を考え出すことが奨励されているスコアも69%であり、中庸な数値となっています。総労働時間・残業時間・有給休暇取得率などの定量的な指標には表れない部分で、前例踏襲、根回し文化、実質的な多段階承認構造のストレスを感じている従業員が一定数存在していることが課題です。2023年に開始した「生産性向上30% 活動」は課題積み上がり状況が約15%にとどまっており、中計最終年度である2025年度に30%の生産性向上を実現できるよう推進していきます。
5. 多様性の包摂と組織の成長へ
「やりがい」調査アンケート
人の成長・やりがいの最大化 を重視している当社では、従業員の「やりがい・相互信頼・一体感」を定量的・継続的に分析し、組織の風土や状態を把握することを目的に、「やりがい」調査アンケートを年に1回実施しています。調査結果は経営層および調査に参加した全従業員にフィードバックし、結果の詳細分析および具体的なアクションプランの策定・実行につなげ、その取り組み成果を翌年の調査で確認するというPDCAサイクルを回しています。
●2024年度「やりがい」調査アンケートの概要
実施時期 |
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対象 |
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回答率 |
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2024年度の特徴 |
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![やりがいスコア(性別)](/jp/sustainability/society/employee_engagement/Rewarding_Score_Gender.jpg)
性別
![やりがいスコア(年代別)](/jp/sustainability/society/employee_engagement/Rewarding_Score_by_age.jpg)
年代別
![Engagement score (gender))](/jp/sustainability/society/employee_engagement/P22-02.jpg)
gender
![Engagement score (age group)](/jp/sustainability/society/employee_engagement/P22-03.jpg)
age group
経営層と従業員との対話
出光社員会の取り組み
タウンホールミーティング
![ミニタウンホールミーティング(事業部開催)の様子](/jp/sustainability/society/employee_engagement/p34ccn0000004bi7-img/356_1034-img05.jpg)
ミニタウンホールミーティング(事業部開催)
会社の方針や経営層の思いを知る従業員と経営層との対話の機会として「タウンホールミーティング」を開催しています。
ミーティングでは事前に従業員から寄せられた質問に経営層から回答するとともに、オンラインチャットでも質問に回答します。
年2回のタウンホールミーティングに加え、決算説明や管掌役員と事業部の従業員が直接対話するミニタウンホールミーティングも開催しています。
人事諸施策に関する社員との意見交換
当社グループは、国内外の各地域における労働関連法令の順守に努めるとともに、全ての従業員が安心して仕事に注力できる職場環境づくりを進めています。労働基準法に基づき、従業員代表が労使協定および就業規則の制定・改定に伴う意見書の作成などを行います。人事諸施策の変更に関する周知は、社員向け説明会などの場で行っています。
既存の制度について任意回答の社員アンケートなどで意見を募り、社内ポータルやメールなどによりその結果を共有するとともに、タウンホールミーティグなどで同テーマを議題にするなど会社と社員の対話の機会を設けています。
当社の労働組合であるFTOE(Forward Together with Our Energy)との間では、定期的に労使協議を行っています。これらの取り組みを通して、人事諸施策の内容や賃金水準、労働条件や福利厚生について、納得性・共感性の高い施策の展開を目指しています。
また今後の人事制度設計にあたり従業員へパブリックコメントを募集して、検討しています。
企業風土醸成の推進
Activity Based Working(ABW)の推進
![大手町オフィス改善PJの様子](/jp/sustainability/society/employee_engagement/p34ccn0000004bi7-img/356_1599-img01.jpg)
大手町オフィス改善PJ
当社は、いかなる環境変化にもスピーディかつフレキシブルに対応し事業目的を果たしていきます。その原動力である従業員一人ひとりの生産性・働きがい・創造性を高め、新たな価値創造に挑戦するため、Activity Based Working (ABW)を進めています。ABWとは、「いつでも・どこでも・誰とでも」、時間・場所にとらわれず、従業員が自らの業務に最適な働き方を自律的に選択できることであり、当社はその環境を整備しています。
2020年12月に大手町本社へ移転して以降、社員の生産性向上を目指し、ABWを推進してきました。毎年アンケートにより社員の声を集め、オフィスに反映しています。2023年度は大手町オフィス改善PJを発足させ、オフィスの改善体制を強化しています。2023年7月にはオフィスの各スペースに活用方法を記したガイドラインを設置し、誰もが各スペースを有効に活用できるようにしました。その他、転入者向けにオフィスガイダンス実施や活用頻度の低いスペースの変更など 、社員がより働きやすい環境を目指して日々対応しています。本社のみならず、各事業所など でもABWの推進を行っています。