製造業が取り組むべきコスト削減を成功に導くポイントと主要な改善施策

製造業を取り巻く環境は、原材料費・人件費・エネルギー価格の高騰に加え、省エネ法改正やGX-ETSといった規制強化によって厳しさを増しています。今やコスト削減は単なる経営効率化にとどまらず、企業の存続や競争力維持のための重要課題といえるでしょう。

本記事では、コスト削減の考え方から具体的な施策、成功事例までを整理し、工場責任者のみなさまが明日から取り組めるヒントをご紹介します。

1. 製造業におけるコスト削減の必要性

製造業では原材料や人件費、エネルギー価格の高騰が収益を圧迫しており、競争力を維持するためにもコスト削減は避けて通れない課題です。加えて、省エネ法の改正や2026年度から本格稼働するGX-ETSなどの規制対応も強化され、効率改善や体制整備への対応力が問われるようになりました。

さらに、ESGやカーボンニュートラルへの取り組みは取引先や投資家の評価基準となり、対応の遅れは受注機会や資金調達の面で不利に働く可能性があります。

このように、コスト削減への取り組みは財務面の改善だけでなく、企業価値を高めるうえでも欠かせないテーマといえるでしょう。

2. コスト削減に取り組む前に押さえるべき考え方

コスト削減を効果的に進めるには、場当たり的な対応ではなく、体系的なアプローチが必要です。ここでは、取り組みを始める前に理解しておきたい4つのポイントを解説します。

2-1. 自社のコスト構造を把握する

製造業のコスト構造は、材料費・労務費・製造経費(間接費)など複数の要素で構成されています。

「製造原価」では、費用を直接費・間接費に分類し、部門別・工程別に配賦して分析する手法が一般的です。業種によって材料費や経費の比率が異なることも多いため、構造の把握が重要になります。この作業を通じて「どの費用が全体を押し上げているのか」といった仮説が立てやすくなり、以降の改善方針の方向性も見えてきます。

まずは自社のコスト構造を正確に理解することが、効果的な削減計画づくりの出発点だといえるでしょう。

2-2. 削減効果と実現しやすさで優先順位を決める

効果的なコスト削減を進めるうえでは、「削減効果の大きさ」と「実現しやすさ」の両面から施策を評価し、優先順位を整理する姿勢が重要になります。例えば、無駄な電力使用を減らす運用改善や契約見直しなど、低コストで即効性のある取り組みは、早い段階で着手したいところです。

一方で、設備更新やプロセス改善は一定の投資を伴うものの、中長期的には大きな削減効果が見込めます。短期と長期のバランスを意識しながら計画を立てることで、安定した成果につながるはずです。成果が期待できる施策から段階的に進めていく考え方がポイントといえるでしょう。

2-3. 短期・中期・長期の施策を組み合わせる

コスト削減では、即効性と持続性のバランスを取ることが欠かせません。短期的には、照明のこまめな消灯や不要設備の停止、電力料金プランの見直しといった運用改善が効果を発揮します。中期の施策には、高効率設備への更新や生産ラインのレイアウト見直しなど、一定の投資を伴う改善が位置づけられます。

さらに、長期的には再生可能エネルギーの導入や大規模な設備投資、脱炭素プロジェクトといった全体最適化を視野に入れた取り組みが重要です。これらを組み合わせることで、短期の即効性と将来の成長性を両立でき、継続的にコスト削減へつなげる体制づくりが進んでいきます。

2-4. 投資回収期間やCO2削減量など定量指標で判断する

施策の優先順位を決めるには、定量的な指標に基づいた判断が不可欠です。

例えば、鉄鋼業の「グリーンスチール」ではCO2排出削減効果を明確に数値化し、その結果を競争力強化に結びつけています。省エネ設備更新や空調・圧縮機の更新などでは、投資額に対してどの程度の電力削減やメンテナンス削減が得られるのかを試算し、投資回収期間で評価する手法が一般的です。

ある製造業のケースでは、設備投資額と年間の削減額を具体的に示すことで、社内の意思決定に大きく貢献したと報告されています。感覚的な判断ではなく、数値に基づく客観的な評価を行うことが、コスト削減を確実に前へ進めるうえで重要だといえるでしょう。

3. 【コスト項目別】具体的な削減方法

製造業のコストは多岐にわたりますが、主要な項目ごとに効果的なアプローチがあります。ここでは、エネルギー、消耗品、人件費の3つの視点から、実践的な削減方法を見ていきます。

3-1. エネルギーコスト削減(見える化・高効率化)

エネルギー費は、製造業のコストの中でも大きな割合を占める項目です。まずは設備ごとの電力使用量を「見える化」し、無駄な稼働や待機電力を把握することが削減の第一歩になります。

そのうえで、空調や圧縮機を高効率機器に更新したり、自家消費型の太陽光発電を導入したりすることで、省エネとコスト低減を両立できます。さらに、照明を蛍光灯からLEDへ切り替えると、電気代を最大60%程度削減できるケースもあり、即効性の高い施策として取り組みやすいのが特徴です。

このようにエネルギーコストの削減は、環境対応と経済性を同時に実現できる重要な取り組みとなります。

3-2. 消耗品コスト削減(仕入れ・在庫・潤滑油)

仕入れや在庫管理の見直しは、製造業における基本的なコスト削減のひとつです。購買ルートの再検討や在庫の適正化を進めることで、無駄な出費を抑えられます。

さらに、潤滑油のような専門商材では、省エネ・脱炭素の観点から「摩耗抑制」「補給量削減」「メンテナンス頻度削減」といった効果があるとされている分野です。直接的な費用削減に加え、設備寿命の延長や稼働率向上といった副次的効果も期待できます。

消耗品は一つひとつの金額は小さく見えますが、積み重ねることで大きな削減効果を生み出せる可能性がある領域です。

3-3. 人件費・業務効率化(標準化・動線改善・IT)

人件費の抑制では、単純な人員削減ではなく、業務効率をどれだけ高められるかが大きく影響します。他社事例でも、生産ラインの動線見直しやプロセス改善によって効率を高めたケースが多数報告されています。

さらに、ITツールや自動化を活用してデータ収集・モニタリングを効率化することで、省人化と省エネを同時に進めた例も増えてきました。業務の標準化を図れば属人化が解消され、教育コストの低減にもつながります。

現場の負担を増やさず、効率化を通じて人件費を最適化していく姿勢が重要です。

4. コスト削減の進め方(手順)

コスト削減を確実に成果につなげるには、体系的な手順に沿って進めることが重要です。ここでは、現状分析から効果測定までの実践的なステップを解説していきます。

4-1. 現状分析と課題の見える化

まず、設備や工程ごとのデータを収集し、どこに課題があるのかを明らかにすることが必要です。例えば、機械稼働率やエネルギー使用量をリアルタイムで記録し、BIダッシュボードや可視化ツールで見える化する、といったような方法があります。

この段階では、省エネ法やGX-ETS対応でも求められるような定量データをもとに、どの工程が消費を多く占めているのか、どの設備が非効率なのかを特定することが目標となります。データに基づいた客観的な現状把握が、効果的な改善施策立案の土台となるためです。

4-2. 施策の選定と投資回収の試算

改善施策を選ぶ際には、投資額と効果を定量的に比較し、投資回収期間を試算するプロセスが欠かせません。

ある金属加工メーカーでは、老朽化したコンプレッサーや空調設備を高効率機種に更新し、年間の電力コスト削減額を算出したという例があります。投資回収の目安を明確にすることで、経営判断の裏付けとなり、CO2削減量の評価にも役立つ結果となりました。

こうした定量評価の考え方は、省エネ法やGX-ETS対応でも重要な視点です。複数の施策候補がある場合は、投資対効果を比較し、優先順位の高いものから着手していくとよいでしょう。

4-3. 実行・効果測定・改善サイクル

施策は実行して終わりではなく、その効果を継続的に確認する仕組みが不可欠です。省エネ法やGX-ETS対応でも、報告・検証・改善のサイクルを回すことが前提とされています。

実行後にエネルギー消費やCO2排出量を測定し、期待どおりの成果が出ているかを確認することが重要なポイントです。その結果をもとに改善を繰り返すことで、長期的な削減効果の維持が可能になります。

PDCAサイクルを確実に回し、継続的改善の文化を組織に根付かせることが、持続的なコスト削減を実現するうえで重要な役割を果たします。

5. コスト削減で失敗しないための注意点

コスト削減は重要ですが、誤った進め方をすると逆効果になることもあります。ここでは、失敗を避けるために押さえておくべき3つの重要なポイントを解説します。

5-1. 品質を損なう削減は避ける

コスト削減に取り組むなかで最も避けるべきなのは品質低下です。原材料を安易に安価なものに切り替えたり、必要な工程を省略したりすると、製品の信頼性が損なわれ、後に大きな損失を招く恐れがあります。

他社事例でも、材料特性や耐久性を軽視した結果、故障やクレーム対応でかえってコストが増大した例が指摘されています。品質を守ることは、結果として長期的なコスト削減につながるでしょう。目先の削減額だけでなく、品質への影響を慎重に評価することが重要です。

5-2. 従業員モチベーションの低下に気をつける

従業員に過度な負担を強いるコスト削減策は、現場の士気を下げ、生産効率の低下を招く恐れがあります。

例えば、省エネの徹底だけを指示して改善策を共有しないと、「押し付け」と受け取られ、逆効果になってしまう場合もあるでしょう。現場の意見を取り入れながら進めることが重要です。

従業員の協力を得ることで、持続的な効果を生み出しやすくなります。改善提案制度を設けるなど、現場が主体的に参加できる仕組みづくりも有効です。

5-3. 全社で効果を継続させる仕組みを作る

コスト削減は一部の部署だけで完結するものではなく、全社的な取り組みが欠かせません。成功事例では、経営層が方針を示し、現場と管理部門が連携して進める体制づくりが重視されているケースが多いです。

定期的な効果測定や報告を仕組み化し、改善サイクルを維持することで、成果を長続きさせることができます。単発的な取り組みで終わらせず、組織に根付かせることが重要です。

部門横断的なプロジェクトチームを編成し、全社で情報を共有する場を設けることも有効でしょう。

6. 製造業のコスト削減事例

理論だけでなく、実際の成功事例から学ぶことも重要です。ここでは、さまざまな業種・規模の企業が実践したコスト削減事例を5つご紹介します。

6-1. LED照明の更新による電力コスト削減

ある企業では、オフィス天井に設置された蛍光灯35本をLED照明に更新しました。更新後は年間の電気代が約60%削減され、削減額は約47万円にのぼります。さらに補助金を活用することで初期投資の負担を抑え、投資回収期間は約3年9ヶ月と試算されました。

LED化は省エネとコスト削減を同時に実現できる代表的な取り組みです。照明は工場全体で多くの本数を使用しているため、削減効果も大きくなります。初期投資が比較的少なく、効果も見えやすいため、最初の一歩として取り組みやすい施策といえるでしょう。

6-2. 高引火点油の採用による操業効率と安全性の向上

設備停止リスクを解消し、1日あたり約2,800万円の機会損失を回避した事例です。

大手鉄鋼メーカー系列のE社では、ギヤ油・作動油を高引火点タイプの「ダフニーバーシタルフォース」へ切り替えました。その結果、消防申請が「許可制」から「届出制」に簡略化され、年間300時間の労務削減を実現。さらに、ギヤ摩耗や油の劣化も抑えられ、設備寿命と安全性の両面で高い改善効果がみられています。

潤滑油の選定は、直接的なコスト削減だけでなく、操業の安定性向上にも大きく寄与することが分かります。高引火点油の活用は、安全面とコスト面を同時に改善できる有効な選択肢といえるでしょう。

6-3. 圧縮機更新とエア漏れ改善によるエネルギー削減

ある金属加工工場では、省エネ診断を踏まえ、古い圧縮機を高効率機種に更新し、工場内のエア漏れも点検・修繕しました。あわせてエネルギー使用状況を「見える化」し、従業員の意識改革とともに省エネを推進しています。

削減額の具体的数値は公開されていませんが、設備更新と運用改善を組み合わせることで、省エネとコスト削減の両立を実現した事例です。圧縮空気は製造業で広く使われるエネルギー源ですが、意外と見落とされがちな領域でもあります。設備更新と細かな改善を組み合わせることで、大きな効果が得られることを示している好例といえるでしょう。

6-4. IoT×DX導入による業務効率化・人件費削減

ある自動車部品メーカーでは、工場設備に後付けセンサーを導入し、稼働データをリアルタイムで可視化しました。ムダ稼働や停止時間を把握し改善を重ねた結果、労働時間を43%削減し、人件費と電力コストの最適化を実現している事例です。

リアルタイムデータ活用により意思決定のスピードも従来比で約10倍に向上し、投資回収期間は1年以内だったと報告されています。デジタル技術の活用は、コスト削減だけでなく、現場の働き方改革や意思決定の質向上にもつながります。

IoTやDXは、限られた人員で生産性を高めたい企業にとって、有力な選択肢です。

6-5. 高性能切削油の導入によるCO2削減と生産性向上

切削液寿命を2倍以上に延ばし、CO2排出量を年間38t削減した事例です。

農業機械メーカーのD社は、高性能ソルブル「ダフニーアルファクールWX-1」を採用しました。腐敗臭の発生がなくなり、工具寿命もリーマで約5倍に向上しました。補給・廃液処理の手間を減らすことで、作業効率も大きく改善されています。

自社削減による省エネ効果として、温対法・GX-ETS対応の前段階施策に位置づけられる取り組みです。切削油の見直しは、環境負荷低減・作業環境改善・コスト削減を同時に実現できる好例といえるでしょう。

7. まとめ

製造業におけるコスト削減は、エネルギー費・消耗品費・人件費など多岐にわたり、短期的な運用改善と中長期的な投資をバランスよく進めることが重要です。投資回収期間やCO2削減量といった客観的な指標を活用し、継続的に改善していくことで、持続的な競争力強化につながります。

LED更新や潤滑油管理など、実際の成功事例も参考にしながら、自社に合った施策を一歩ずつ積み重ねていくことが大切です。コスト削減は一度きりの取り組みではなく、組織全体で育てていく改善活動といえるでしょう。

出光リテール販売では、エネルギー最適化支援や潤滑油の改善提案、カーボンオフセットfuel「ICOF」など、製造業のコスト低減と脱炭素を総合的にサポートしています。 「何から取り組めばよいか知りたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。

ページトップへ遷移