地域社会への貢献(エネルギー&モビリティ)
考え方
地域創生と社会課題解決に向けた取り組み
出光興産は、社会課題の解決を重要な経営課題と位置付け、エネルギーのみならず、環境、交通、産業、観光、防災防犯、福祉、人財育成の8つの切り口で、地域課題に寄り添ったソリューションの共創に取り組んでいます。
モビリティとコミュニティの拠点、「スマートよろずや」構想
「スマートよろずや」では、我々のブランドであるapollostationが、それぞれのまちの人と豊かなくらしをサポートする「生活支援基地」へ進化することを目指しています。「いろんなa!を、このまちに。」の新スローガンのもと、apollostationは、それぞれのまちのニーズに即してYOROZU(無限に多様に)に進化し、エネルギー・モビリティを支える存在となるべく取り組んでいきます。
2021年4月より展開をスタートしたapollostationは、2023年末で約1,300台のローリー・物流システム、約6,000カ所のSSに至るまで、全てのブランド統合が完了します。当社は重要なパートナーである特約販売店・運送会社の皆さまと共に、将来にわたってお客様に支持され続けるapollostationブランドを目指していきます。
取り組み
モビリティサービス
モビリティサービス展開による地域の移動課題解決
当社は、これまでモータリゼーションを支えてきた「モビリティ」領域での強み、そして「エネルギー」の安定供給を通じて地域に貢献してきた拠点の強みを生かし、今後も移動に関する社会課題の解決に取り組んでいきます。
これまで培ってきた顧客接点基盤をさらに広げ、当社のSSネットワークおよび車両メンテナンス技術と、超小型EVをはじめとする様々なモビリティラインナップの展開を通じ、移動に関する潜在ニーズに応えていきます。また、当社は車両の開発・提供だけでなく、新たなサブスクリプションやカーシェアモデルの展開、MaaSに関するデジタルプラットフォームの構築、リサイクルシステムの開発などを進めていきます。
さらに今後は、apollostationで展開している電力販売と様々なモビリティデバイスを組み合わせた新たなサービスの開発、個々の車両を蓄電池と見立てた分散型エネルギーの構築、車両・バッテリーのリユース・リサイクルシステムなど、モビリティサービスの開発に取り組んでいきます。
具体的な取り組み事例として、2022年10月より福島県大熊町にて、超小型EVを活用したカーシェアリング実証を行っています。当実証においては、大熊町、地域の特約販売店と連携して、震災復興に取り組む住民や来訪者の移動ニーズに対応し、新たな交通手段としてご利用いただいています。今後も、自治体や特約販売店と協力して、各地域のニーズに根差した新たなサービス展開を行っていきます。また2023年6月に、当社の研修施設である石岡研修センター(茨城県)にて、超小型EV idetaの試作車を用いた公道走行のモニタリングを開始しました。改良点などを抽出しながら開発を継続していきます。
ドローンを活用した将来構想
当社は、2022年12月の航空法改正を踏まえ、ドローンの社会実装に向けた国産ドローンの共同開発に、双葉電子工業(株)と着手しました。これを用い、SS拠点を通じた地元地域に密着したサービスを展開します。
現在、機体のメンテナンスなどを含めた提供方法に加え、プラント設備点検、生育監視や農薬散布などの農業利用、将来の物流配送などの事業検討を開始しました。SSの強みを生かし、機体開発から運用、人財育成まで一気通貫したドローンの事業化を展開していきます。
コミュニティ共創/ライフサポート
種子島におけるカーボンニュートラルへの取り組み
カーボンニュートラル実現に資するモビリティの社会実装の一つとして、鹿児島県西之表市内全域を網羅するデマンド型乗合タクシー「どんがタクシー」を一部EV化し運行しています。種子島石油(株)、西之表市との共同実証として、公共交通車両のEV化、種子島石油が運営するSSなどでの公共交通EV車両の充電を含めたEV関連事業を検証中です。
また、鹿児島県南種子町役場庁舎や種子島空港ターミナルにおいて、小規模オンサイトPPA※1による各施設への電力供給とEV共同実証を行っています。本実証では、当社が開発した再生可能エネルギー電力分別供給システム「IDEPASS」※2(イデパス)およびEV充電をするお客様が再生可能エネルギーかそれ以外かの電力種別を選択できるシステム「再エネチョイス」※3を活用しています。 加えて、ニッポンレンタカーサービス(株)が実証提供するEVレンタカーに、島内2か所の急速充電器での充電と、その充電料金決済に当社グループ会社が提供する決済システムを活用する実証も2023年5月から実施しています。
これらの実証を通じて、協働する種子島石油(株)と当社は、種子島におけるエネルギーの地産地消の推進に取り組んでおり、種子島における環境意識を喚起し島内のカーボンニュートラル実現に貢献します。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の提供を開始
当社は、CO₂排出量削減・カーボンニュートラル(CN)実現に取り組む自治体・企業向けに、利用電力とモビリティのCN化、災害レジリエンス向上の推進をワンストップで支援する「idemitsuCN支援サービス」を提供しています。そのサービスの一つとして、2024年4月から電気自動車(EV)・蓄電池の充放電と空調出力制御を連携させたEMSの提供を開始しました。
提供開始にあたり、宮崎県の国富町役場庁舎にて、EMSの導入実証実験を行いました。実証実験は、電力需要を常時監視・予測し、電力需要ピークの時間帯のEV・蓄電池からの放電と空調出力の抑制、およびピークの時間帯以外でのEV 充電を自動的に行うものです。その結果、電気料金とCO2排出量の削減を実現しました。
当社は今後も自治体や企業への再生可能エネルギーやEV 導入を促進することで、CN社会の実現に貢献します。
シニア向けヘルスケア事業の展開
当社は、「高齢化社会を見据えた次世代モビリティおよびコミュニティ」の実装の一環として、地域のシニア世代の皆様の健康維持・増進に貢献するリハビリ型デイサービス事業(介護保険適用)に取り組んできました。2021年にはQLCプロデュース(株)を子会社化し、現在では全国170事業所で2万人のご利用者様の自立支援に貢献しています。今後も出店活動の強化、介護を取り巻く環境変化に合わせた新しいサービス開発に取り組んでいきます。
また、介護未満の皆様の、健康で安全な移動を支えるヘルスケアサービスの導入の検討も進めております。
エネルギーの地産・地消
次世代営農型太陽光発電の実証事業を実施
2023年6月より、千葉県木更津市の水田で、農業と再生可能エネルギー発電を両立する次世代営農型太陽光発電の実証を行っています。従来の固定型架台を使用した営農型太陽光発電では、パネルによる太陽光の遮蔽によって、稲等の多くの日照量を必要とする作物の生育に影響を及ぼすことから、全国に広がる水田等の農地には活用しにくいという課題がありました。
当社は太陽光を自動追尾して可動する架台を用いて、稲作期にはパネル下で栽培する稲への太陽光照射を優先し(稲作モード)、米の収量と品質の維持・向上を図ります。また、両面受光型の太陽光パネルを採用することで、水田の反射光による裏面での発電と休耕期のパネルへの日射最大化(発電モード)によって、稲作期の逸失発電量を通年で補います。発電した電力は、当社の電力事業を通じて、一般のお客様に販売しています。
当社は不足しつつある大規模太陽光発電設備の新たな適地として、全農地面積の50%以上を占める水田を有効活用する可能性と、農業従事者に新たな収益源(地代/売電収入等)を示すことで、再エネの更なる普及拡大と持続可能な営農に貢献します。
本システムは、財団法人日本デザイン振興会主催の「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しました。
山口県周南市の木質バイオマス材利活用推進協議会へ参画~エネルギーの地産地消と林業振興に向け、木質バイオマス材利活用を実証・推進~
2021年1月、当社は山口県周南市が発足した木質バイオマス材利活用推進協議会に、協議会委員として参画しました。協議会では豊富な森林資源とバイオマス発電設備を併せ持つ周南市の特性を生かし、エネルギーの地産地消と林業振興を目的に、国産の木質バイオマス材利活用を推進します。
2022年9月、協議会の活動の一環として周南市・東ソー(株)、(株)トクヤマ、丸紅(株)と植林実証共同事業契約を締結し、2022年、2023年に周南市市有林の一部において、早生樹を含む複数樹種の植林を実施しました。早生樹による短期間・低コストのバイオマス生産や、森林と消費地の近接立地を生かした運搬費低減などを検証しています。また本実証実験を踏まえ、早生樹による木質バイオマス材生産を市内他地域へ拡大することを目指すほか、国産の木質バイオマス利活用の方法についても協議していきます。
当社はより低炭素なエネルギー供給を目指し、徳山事業所において旧製油所跡地を利用したバイオマス発電所を稼働しています。当社および徳山事業所は今後も周南市と共に、再生可能エネルギーの活用とエネルギーの地産地消モデル確立を推進します。
さいたま市との連携協定を推進
さいたま市と締結した「ゼロカーボンシティ実現に向けた再生可能エネルギー等の利活用推進に関する連携協定」において、市内の一般家庭で生じる太陽光発電の余剰分を、当社を通じて市内の施設に供給する地産地消モデルを展開しています。このモデルでは、余剰電力のデータをモニタリングし、太陽光発電設備の異常の可能性を通知する「お知らせサービス」や、点検やメンテナンスの事業者を紹介するサービスも提供し、過去に設置された太陽光発電設備の有効活用をサポートしています。
さらなる協定の推進に向け、今後、市内のapollostationにおいて、カーボンニュートラル時代を見据えた実証を予定しており、太陽光発電設備や蓄電池、エネルギーマネジメントを導入するとともに、EV急速充電サービスを提供し、再生可能エネルギーを充電することで、EVの真のゼロカーボンを実現する計画です。
このような取り組みを通じ、本協定に掲げる「地域循環共生圏」の実現を目指します。