循環型社会

考え方

出光グループは、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の社会を変革するとともに、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷を可能な限り低減する社会を形成することが、循環型社会実現の目的と考えています。再生可能な資源は、その再生能力の範囲内で再利用し、再生能力のない資源については、最大限有効な形で消費するとともに、長期時間軸では使用を抑制しつつ、再生可能な別の資源へシフトしていけるよう、様々な取り組みを推進しています。

方針

サーキュラーエコノミー・ガイドライン

1. 目的
当社グループは、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の社会を変革するとともに、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷を可能な限り低減する社会を形成することが、循環型社会実現の目的と考えています。一方で、廃棄物の発生量の削減とともに、資源の有効利用の観点から原材料の再利用や、リサイクル原料の活用を進め、環境負荷の低減に努めています。
出光グループサステナビリティ方針の中でも、「革新的技術開発を進め、事業活動による環境リスクを予め低減し、自然環境の保全と循環型社会の実現に貢献します」という一文を有しています。上記サステナビリティ方針を補完し、サーキュラーエコノミーの更なる活動遂行の指針として、本ガイドラインを定めます。
 
2. 本文
(1) 既存事業や今後取組む事業のすべてにおいて、資源の効率的な活用、廃棄物の最小化、リサイクルや再利用を促進し、環境負荷の低減、原料の安定調達に繋げます。
(2) 経済性を充分に留意して、リサイクルなどのコストが成り立つ上で需要を取り込むように枠組みを作り、サーキュラーエコノミーを実践します。
(3) 製品の設計段階からリサイクルや再利用を考慮し、廃棄物を新たな資源として再利用することを目指します。
(4) 実現には技術面・原料調達面など、関連企業やサプライヤーとの連携が不可欠であり、パートナーシップの協働のもと推進します。
(5) 従業員のみならず関係先の教育と意識啓発にも勤め、サーキュラーエコノミーに対する理解・浸透を図り、定着させます。

戦略

当社グループは、各部室で保有している技術を基に、再生可能な資源をできる限り再利用し、事業サプライチェーンの中に取り込むことで、持続可能なサーキュラービジネスの実現を目指す検討を社内横断的に進めています。具体的には、プラスチックリサイクルや、長期的視点ではCO2を資源として取り扱うカーボンリサイクルの取り組みを行っています。

リスク管理

リスクマネジメント

指標と目標

定量目標

石油
ゼロエミッション(最終処分率1%以下)の維持・継続
使用済みプラスチックリサイクル
2万トン(2025年度)
サーキュラーパートナーズ

当社は、上記の定量目標策定にあたり、経済産業省が設立したサーキュラーエコノミーの実現を目指す、産官学連携を促進するためのパートナーシップである「サーキュラーパートナーズ」に参画しています。
経済産業省が、2023年3月策定した「成長志向型の資源自律経済戦略」に基づき、同イニシアチブを設立しました。サーキュラーエコノミーの実現は、個々の企業だけで成し遂げるには難しいことから、ライフサイクル全体の関係者の連携と取り組みの拡張が必要であり、本取り組みはその一環となります。

取り組み

使用済みプラスチックケミカルリサイクル

当社では資源循環サプライチェーンの構築に向けた取り組みを加速しています。
2023年4月に使用済みプラスチックを原料とした油化ケミカルリサイクル設備への投資を決定し、同時に当社子会社としてケミカルリサイクル・ジャパン(株)(以下、CRJ)を設立しました。CRJでは、年間2万トンの使用済みプラスチックを処理する油化ケミカルリサイクル装置を当社千葉事業所隣接エリアに建設中であり、2026年からの商業運転開始を目指しています。 
CRJが独自技術を用いて、回収した使用済みプラスチックから原油相当のCR油を生産し、当社の石油精製装置及び石油化学装置で処理を行い、基礎化学品へと再資源化します。新たな「ケミカルリサイクル化学品」の生産体制を早期に構築することにより、資源循環社会の実現に貢献します。
千葉事業所の隣接エリアでの事業モデル確立後は、他のグループ製油所・事業所へ油化ケミカルリサイクル装置の設置を行い、全国の使用済みプラスチックを対象とした大規模な事業展開を進める予定です。

  • CR油:ケミカルリサイクル油。使用済みプラスチックを油化して生産した油。

ケミカルリサイクルで「ガンプラ」を支える

バンダイナムコグループが販売するガンダムシリーズのプラモデル「ガンプラ」には、発売開始よりグループ会社であるPSジャパン(株)(以下、PSJ)のポリスチレンが採用されています。「ガンプラ」は2020年に40周年を迎え、累計7億個以上を販売する大ヒット商品です。バンダイナムコグループが2021年に始動した「ガンプラリサイクルプロジェクト」に、PSJはケミカルリサイクルの面で参画しています。同プロジェクトは、「ガンプラ」の枠の部分「ランナー」を回収し、世界初のケミカルリサイクルによるプラモデルの製品化を目指すものです。
ケミカルリサイクルの技術は、使用済みポリスチレン製品を熱分解し、その原料であるスチレンモノマーに戻す最先端の技術で、今後PSJが実証実験を積み重ねて確立させていきます。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律への対応

2022年4月1日施行「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」に基づく、当社の2021年度からの廃プラスチックの排出量は以下の通りです。

廃プラスチック排出量( t )
2024年度
898
2023年度
739
2022年度
836

2019年に政府が策定した「プラスチック資源循環戦略」の中で、「2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制すること」をマイルストーンの一つとしており、それを達成するために廃プラスチック排出量を期間平均で年3%程度削減していかなければなりません。そのために、当社は以下の実施事項に取り組んでいきます。

1. 長期間使用に努める。
2. 過剰な使用を抑制する。
3. プラスチック製品を廃棄する場合、健全な部分は継続使用に努める。

当社では毎年、環境管理能力向上研修にて「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」についての従業員教育を実施しています。

ソーラーパネルリサイクル

使用済み太陽光パネルは2030年代から急増することが予想されています。当社グループのソーラーフロンティア(株)では太陽光パネルのリサイクルを全国規模で推進する準備を進めております。

全固体リチウム電池リサイクル

EV普及に伴い、リチウムをはじめとする原材料の需給が長期的に逼迫する見込みであり、廃電池のリサイクルスキームの検討を通じ、将来的に全固体電池バリューチェーンの付加価値向上を目指しています。

EV普及に伴い、リチウムをはじめとする原材料の需給が長期的に逼迫する見込みであり、廃電池のリサイクルスキームの検討を通じ、将来的に全固体電池バリューチェーンの付加価値向上を目指しています。

循環型社会実現に向けた協業

循環型社会の実現には、様々な企業、自治体、大学等研究機関との協働が不可欠であり、当社は下表の通り様々な協業を実施しています。

協業名 概要 目標や成果など 協業先
環境配慮型サービスステーション「apollostation Type Green」における木材活用推進 2022年11月より国産木材をキャノピーや建屋に使用した環境配慮型SSの営業を開始 年間約80tのCO₂削減 銘建工業(株)
廃食油由来の低炭素燃料「出光リニューアブルディーゼル(IRD)」と「出光バイオディーゼル5(IBD5)」を販売 車両、重機向けにIRDとIBD5を販売し、サプライチェーン全体のCO₂排出量削減を目指す IRD: CO₂排出量を100%削減
IBD5: CO₂排出量を5%削減
※国内法制上CO₂排出削減量
名鉄バス(株)、(株)大林組/鹿島建設(株)、エア・ウォーター(株)
CO₂とコンクリート廃棄物を原料とした合成炭酸カルシウムの社会実装 排ガス中のCO₂を固定して炭酸カルシウムを製造し、CO₂排出量削減と資源循環に貢献 CO₂固定量20% の合成炭酸カルシウムを、アスファルトなど、工業材の原料として社会実装 日本コンクリート工業(株)、他
有機廃棄物の有効活用・資源循環に貢献する技術を持つスタートアップへの出資と事業化検討 当社100%子会社である出光アメリカズホールディングスは、資源循環ビジネスの知見・ノウハウの獲得を目指し、有機廃棄物を短期間で堆肥化する技術を持つカナダのスタートアップに出資を実行 国内における実証を含む、事業化に向けた検証の推進国内外のプレーヤーとの協業による将来的な事業化可能性の追求 Anaconda Systems社
スマートエコステーション鹿の子台SS

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IBD5ロゴ

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合成炭カル(カルカーボⓇ)

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合成炭カル(カルカーボⓇ)

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合成炭カル(カルカーボⓇ)

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カーボンリサイクル

カーボンリサイクルとは、CO2を炭素資源(カーボン)と捉え、CO2から様々 な炭素化合物を生成することで、化学品や燃料、鉱物などに再利用する取り組みです。当社は現在、炭酸塩化、CO2電解還元技術などの研究開発を行っています。

炭酸カルシウム化技術

当社は、CO₂の炭酸カルシウム化技術の開発と、その社会実装に取り組んでいます。具体的には、未利用のカルシウムを含む廃棄物を原料とし、CO₂との化学反応により炭酸カルシウムを合成・再資源化。これをアスファルト舗装材やコンクリート材料など多様な用途に展開することで、CO₂の固定化と廃棄物の有効活用、資源循環の実現を目指しています。
2023年には、日本コンクリート工業株式会社との共同研究により、コンクリート廃棄物を活用した合成炭酸カルシウム(登録商標 カルカーボ®)の製造プロセスを確立しました。さらに2025年3月からは、コンクリート工場内に実際の製造設備を完成させ、本格的な量産体制を整えました。本設備では、従来産業廃棄物として処理されていたコンクリートスラッジと、コンクリート工場の熱源として稼働するボイラー排ガス中のCO₂を原料として利用しています。
カルカーボ®の社会実装に向けた取り組みも着実に進展しています。2025年8月までに、道路会社との協働により、当社事業所や公共施設、一般道路などにおいてカルカーボ®配合アスファルト舗装を施工し、性能評価を継続実施しています。加えて、ゼネコン各社と共同でカルカーボ®配合コンクリートの試作・評価を進めており、近く実際の建設現場での施工が予定されています。
今後も原料の多様化や製品用途の拡大を積極的に推進し、持続可能で循環型の社会形成に貢献してまいります。

CO₂資源化

当社はこれまでに、独自開発した触媒を使ったガス拡散電極を用いて、水とCO2から炭化水素やアルコールの直接合成に成功しています。従来、CO2を一度水に溶かした状態で反応させる方式が多かった中、CO2をガスのまま直接反応させることができるガス拡散電極を採用したことが特徴です。このガス拡散電極を用いたCO2資源化技術(電解還元技術)において、電極触媒の高性能化・低コスト化・貴金属フリー化・長寿命化などにより、CO2処理能力をさらに高める開発を進めています。
このガス拡散電極を用いたCO2電解還元技術の研究・開発をさらに進め、再生可能エネルギーを用いて、CO2から高効率で化学品や燃料などの有用物質を製造する技術を確立し、CO2の再利用による2050年カーボンニュートラル実現への貢献を目指します。