オイルロード超大型タンカー12,000kmの旅 「一航海の軌跡」Vol.1 日本出港~シンガポール海峡通峡 3/7

最先端機器が安全運航をサポート…甲板部

甲板部は航海全般と荷役に関する仕事を行います。
船を操船する場所を「ブリッジ(船橋)」と呼び、航海上の重要な機器・計器・警報類が集中装備されています。居住区の最上階に位置し、甲板から七階の高さで、周囲を見渡せる環境にあります。船は昼夜の別なく24時間航海を続けるので、航海士は「当直(ワッチ)」に立ちますが、航海当直の主な目的は、船長の引いたコースラインに沿って、本社より指示のあった目的地まで安全に操船していくことです。当直は4時間交代制で、<0-4直(ゼロヨン)>は二等航海士が昼の12時から夕方の16時までと、夜中の0時から朝の4時までを担当します。<4-8直(ヨンパー)>は一等航海士、<8-0直(パーゼロ)>は三等航海士の担当となり、航海士1名と操舵手1名の2名体制で4時間の当直が行われます。


見晴らしのよいブリッジ

航海当直の基本は、「見張り」です。日本近海は陸岸に沿って、内航船、漁船等が輻輳しており、世界的にも非常に操船が難しいと言われていますが、行き会う船の数は陸岸から離れるにつれ減っていきます。VLCCは小型船のように舵を切ってもすぐに針路変更する事ができないため、船の多い輻輳海域をできるだけ避けた航路設定をします。

このため、内地出港後はできるだけ沖側のコースを選択しています。大洋航海では360度視界に入るのは海と空だけ。当直中の4時間、一隻も船に会わないことも多々ありますが、船の方位を示すジャイロコンパス、他船や陸岸などの方位、距離の情報を提供してくれるレーダー、船の位置を示すGPS装置、周囲のすべての船舶の位置が自動的に画面の海図上に表示されるECDIS(電子海図)と言ったハイテク装置を駆使しながら、常に厳重な見張りをすることが大切です。時代が変わり、最先端のハイテクな機器が装備されていても、当直員による昼夜を問わずの目視による見張りが安全運航を支えているのです。

夜間の航海は、自動車のヘッドライトのように進行方向を明るく照らすようなことはせず、航海灯という本船の向きを示す電灯を前後左右5個点けるだけで、その他意味のある信号灯以外、余計な光は外に出してはいけないことになっています。船橋内も海図を見るための最小限の電灯を点けるだけで暗闇の中で操船しています。相手船の灯火の見え方でどちらの向きに航行しているのかが判断できます。月の出ていない夜に、明るい船内から暗闇の船橋内に入ると最初は周囲の状況が全く見えませんが、徐々に目が暗順応し、周囲の状況が確認できるようになります。そのためにも当直が始まる15分前には昇橋(船橋内に入ること)し、目を慣らすように心がけています。

月が出ている夜は、すぐに周囲の状況を確認できるので、マラッカ海峡等船舶が輻輳する海域を航行する前には、月齢を調べておくことも大切なことです。月と言えば、晴天の夜の大洋航海では、星が良く見えます。闇夜の大洋航海で満天の夜空を眺められ、また予期せぬ光景に出会えるのは、船乗り冥利に尽きると言えます。

  • 航海灯、信号灯 スイッチボード

    航海灯、信号灯 スイッチボード

  • 2005年2月26日種子島から発射されたH2Aロケット

    2005年2月26日
    種子島から発射されたH2Aロケット

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