貨油(原油)を船から陸上へ送る作業。
タンカー用語集
あ行
揚荷
揚切
揚荷作業が完了すること。
アンカー
錨のこと。VLCCのアンカーのタイプはAC-14型で重さは約16t。アンカーを繋ぎとめる鎖(錨鎖)は1節27.5mを片側各14節(385m)~15節(412.5m)保有している。
27.5mの錨鎖を継ぎ、規定の長さにするには、1節づつをシャックルという鎖を繋ぐ為の金具で繋ぐ。
錨を使って停泊する時は、錨の爪が海底を掻く力と海底を錨鎖が這う摩擦力で停泊する。
イナートガス(不活性ガス)
不活性ガス。
原油を積載する貨物油タンク内では揮発したガスが充満し、静電気による火花等で容易に引火・爆発事故を引き起こす可能性がある。これを防ぐ為に酸素濃度の低い(3%程度)のイナートガス(不活性ガス)をタンクに注入している。VLCCでは一般的にボイラーの排気ガスを用いている。
イリジウム(Iridium)
Iridium。人工衛星「イリジウム」を使って通話ができる、衛星通信の携帯電話サービス。
インマルサット(INMARSAT)
国際海事衛星機構(INMARSAT)。4つの静止衛星を通して提供される電話、テレックス、ファックス・パソコン通信などの通信サービスを提供する衛星通信サービス。
か行
カーゴタンク(貨油タンク)
貨物である原油を入れるタンク。VLCCではカーゴタンクは17個、LPGタンカーでは8個。
彼女(船を呼ぶとき)
英語で船を指す場合「彼女(She、her)」と呼び、女性の代名詞が使われている。
管理船舶
乗組員の手配、船の設備、修理およびそれに必要な資材を手配し管理されている船。
ガスフリー作業
貨物油を揚げ荷後のタンク内は、酸素濃度が低く可燃性ガスが充満している。タンク内の検査や修理を行う為に人が入る際、可燃性ガスを不活性ガスに置換、その後不活性ガスを空気に置換して人が入れる状態にする作業のこと。
機関制御室
機関室内の主機、ボイラー、発電機、補機等を集中監視する為の制御室。各機器の運転状態を把握でき、遠隔での起動や停止が行える。
喫水(ドラフト)
船体の水面下の深さ。VLCCでは船の深さは29m、バラスト航海(原油を積んでいない状態)では喫水は約11m。原油満載の状態では喫水は20m(6階建てのビル)に達する。
警戒船
多数の船舶が輻輳する海域の安全航行や、海上工事の安全を支える役目を担う船。
海上交通安全法により、指定された航路を航行する全長250m以上の巨大船、200m以上の長大物件曳航船・危険物積載船等については、警戒船の配備が義務づけられている。
係船索
桟橋等の港湾設備と船をつなぎ止めるロープ(ワイヤーロープ、繊維ロープ)。
原油洗浄
原油に含まれる堆積物がタンク内に堆積することを防ぐ為に、クリーニング専用のタービン駆動ポンプを用いてタンクに設置してある高圧ノズルから原油を噴出してタンクを洗浄すること。
さ行
再液化装置
LPG船では積荷の液化ガスがタンク内で気化し、気体(ガス)になる。この気化したガスを再度液化する為の装置。
圧縮機、凝縮器、膨張弁から構成される装置が甲板上の再液化室に据え付けられている。
載貨重量
貨物の積載能力を示す値。載貨重量t30万tタンカー ⇒ 約30万tの原油が積載できる。
シーバース
喫水の深いVLCCでは一般岸壁への着岸は行わず、洋上に設けた荷役設備“シーバース”を用いて荷役作業を行う。本船のポンプで荷揚げされた原油はここから海底パイプラインを通じて陸上のタンクへ送られる。
時化(しけ)
強い雨風で海が荒れた状態。気象学では波高4m以上をいう。
常用出力( NOR : Normal Output Rating)
航海速力を得る為に通常用いる機関出力。常用出力は連続最大出力の約90%。
シングルハル
一重船殻構造。ダブルハル船と対照に船体外板が一重の船体構造 ⇔ダブルハル。
竣工
建造が完了し、船が造船所から船主に引渡しができる状態になったこと。
進水
ドックで船を建造してから初めて船が水に浮く日。一般に中・小型の船はスロープ上に船台(船を作る台)を置きその上で建造し、船台を滑らせて進水させる。VLCCなどの大型船はドック内で直接建造を開始し、水を張って船を浮上させる進水方式をとる。
純トン数
貨物や旅客を運ぶ為に供する場所の大きさを表す値。総トン数から航海に必要な場所の容積を引いたもの。
用途としては、各種税金の算定基準に使用される。
スラッジ
油性残渣物。貯蔵する油内で自然に酸化して生じた沈殿物。複数の油を混合した場合に多量に発生する場合がある。
船名
船の名前。通常は船が進水もしくは竣工するときに、船主によって命名される。各社毎に伝統の船名や、船種によってシリーズ(関わりの有る)名前をつけている。
船齢
船舶の竣工時より起算するのが一般的。日本籍船は進水時より起算される。
船用品
船を整備する為に必要な消耗品。汎用部品(バルブ、塗料、補修剤や工具類、または乗組員の生活用品など)。
総トン数
船の大きさを表す数値で定められた船内の容積(m3)の合計に係数をかけて算出する。国際総トン数と国内総トン数がある。
用途としては、海事に関する多くの法令の適用基準になる。
操練
船では万一に備え非常事態に対処する訓練を行っている。この事を操練という。操練では消火、退船、救命艇、防油、防水を始め数多くの訓練を行っている。
た行
ターミナル(terminal)
船が着桟し、積荷役、揚荷役作業を行う為の港湾設備の総称。
タグボート(曳船)
港湾内で大型船舶の岸壁・桟橋などへの離着岸作業の補助をする船。日本国内では一般的に200トン前後で3000馬力のエンジンを搭載した、大型船の入港作業を支援する。満載のVLCCでは5隻~6隻のタグボートの支援を受けて着桟する。
ダブルハル
船体外板を二重にする事で軽微な座礁や衝突において積載する原油、燃料油が外に漏れ出さないようにする構造。タンカーでは1996年以降に建造する船に義務化されている。また二重外板内はバラストタンクとして用いられる。
チクサンアーム
原油・液化ガスを積込/揚荷する為に本船と陸上を繋ぐアーム。アームの中を液体が流れる。
着桟
大型タンカーが荷役作業のために洋上に設けた荷役用の桟橋に着けることを着桟という。一般の船では岸壁に着ける為に着岸という。
通船
VLCCの様な大型船では岸壁には着かず、沖のシーバースと呼ばれる設備で荷役を行う。この為乗組員の乗下船には「通船(つうせん)」と呼ばれる小型のボートが用いられる。
積荷
原油を船に積む作業。
積切
積荷作業が完了すること。
定期用船契約
船舶所有者が所有する船舶に船員を配乗して、用船者(船を借りる者)に一定期間貸渡す契約。
用船者は一定額の用船料を支払い、船舶所有者は船員の配乗を始め、修繕、船用品の調達などの船舶管理責任を負う。
電子制御機関(フレックスエンジン)
メインエンジン各部を機械的に駆動させる従来の方式に対し、これらを電子制御で駆動させる事により、経済性を向上。また排気ガス中に含まれる窒素酸化物、有害物質を低減させる事に貢献。
ドック(DOCK)
船舶の建造や清掃、塗装、検査、修理などの修繕を行うための施設。通常ドックといえばドライドックのことをいう。
ドライドックは、陸に船などが入れるスペースを掘って作業場を設け、海への出入口を水門で仕切り、船が入った後に水門を閉めて排水し盤木(船体を支えるために用いる大きな角材)で船全体を固定して修理を行うもの。
な行
二重反転プロペラ
エンジンからの出力軸を二重(内軸と外軸)にしてそれらの回転方向を別々にし、それぞれの軸に取り付けたプロペラを別々の方向に回転させる。
プロペラが発生させる推進力には後方に流れる力(船を動かす力)とプロペラの回転方向に流れる力があり、前のプロペラが発生させたこの回転方向にロスする力を後方に配置したプロペラが回収する仕組み。 日章丸に搭載。
荷役
船舶への貨物の積み込み、もしくは船舶からの貨物の揚げおろし行為のこと。
入渠
ドックに入ること。
ノット
1時間に1マイル進む速度を1ノットという。1マイルは1852mなので、1ノットは時速1852メートル。
は行
排ガスエコノマイザー E.G.E : Exhaust Gas Economizer
エンジンプラント全体の熱効率を上げる為にメインエンジンの排気ガスに含まれる熱エネルギーを回収する装置。排気ガスが煙突から逃げていく前に含まれる熱で水を過熱し船内で必要となる蒸気を作っている。
パイロット(水先人)
船舶が輻輳する水域を航行する際や入出港の際に船舶に乗り込み、船舶を安全かつ効率的に導くその港や水域の事情に精通した専門家。
水先人になるには、担当する水域(水先区)別に国土交通大臣の免許(国家資格)が必要。
飛行機のパイロット(エアーパイロット)に対し、シーパイロット(海のパイロット)ともいう。
バースマスター
陸上の原油受け入れ施設の責任者。
バラスト
船を安定させる為に重石として積み込む海水。VLCCでは積み地に向かう際、船の安定を取るために約10万トンの海水を専用タンク(バラストタンク)に搭載する。またこの他に喫水や船の傾きを調整する為にも使用する。
バラストタンク
船を安定させる為に重石として積み込む海水を漲る専用タンク。バラストタンクには石油等は積み込まない。
バレル
原油や石油製品の容積に用いられる単位で「樽」がその語源。1バレルは約159ℓ。
バンカー
船の燃料を指す。燃料に石炭を用いていた時代に石炭庫をバンカーと呼んだ名残で用いられている。燃料補給をバンカリングという。
ファンネル
船の煙突。一般的に外から見える煙突は化粧煙突で、この中に複数の排気管(エンジン、ボイラー、発電機、焼却炉)が入っている。
ファンネルマーク
ファンネルに船会社の独自のマークやデザインを施したもので、船会社の看板のようなもの。
ブリッジ(船橋)
船を操船する場所。ブリッジには舵輪、エンジン操作盤、レーダー、海図等航海上の重要な機器・計器・警報類が集中装備されている。
一般に居住区の最上部があてがわれており、航行中は24時間体制で航海当直が行われている。
プロペラクリーニング
船のプロペラに海洋生物などが付着すると効率が低下(スピードダウン)する。これを掃除する事。掃除には停泊時にダイバーが潜って掃除・研磨を行う方法とドック時に行う方法がある。
ホルムズ海峡
アラビア湾入口に位置する海峡。海峡の幅は最狭部で約30キロ強。
ま行
マイル
1マイル(1海里)は1852m。赤道上での地球の中心角1分(1/60°)の長さに相当する。
1海里の1/10 は約185mで、1ケーブルとなります。
1ケーブル=1/10海里
1ケーブル=約185m
マラッカ海峡
マレー半島とスマトラ島の間に位置し、全長約1000km、最も狭い部分で70kmの海峡。
日本とペルシャ湾とを結ぶオイルロードの通過点で世界でも有数の船舶輻輳地域。
狭く浅い海域で海の難所といわれている。
マラッカマックス
マラッカ海峡を通過できる最大船型。
やらわ
ローディング/ディスチャージング (Loading / Discharging)
荷物を積む事を"LOADING"、荷物を揚げ降ろす事を"DISCHARGING"という。
Loading port:積み出し港 Discharging port:揚げ荷港
ワールドスケール : Worldscale (W.S.)
タンカー運賃の算定は、主に輸送される貨物の重量(M/T:メトリックトン)と各航路に適用される基準運賃および契約(用船契約等)で合意された運賃率によって計算され、その基準運賃には殆ど全世界的にワールドスケールによる方法が用いられる。
例えばWS150は基準表に記載される運賃の150%、WS50は50%を意味する。
ワールドスケールはロンドンとニューヨークのワールドスケール協会が決める。
連続最大出力 (MCR : Maximum Continuous Rating)
エンジンが安全に連続使用できる最大の出力をいう。
ABC
AIS : Automatic Identification System (船舶自動識別装置)
Automatic Identification Systemの略で船舶自動識別装置。
自船の情報(船名、針路、速力、位置、行き先等)を他船に発信するとともに、他船からAISを介して発せられた情報を受信、表示する装置。
2004年より国際航海に従事する300t以上の船への設置が義務化された。
ATフィン(省エネルギー装置)
舵の両側にフィンを取り付ける事によりプロペラ後方回転流中のエネルギーを回収し、フィンの推力に変換する省エネルギー装置。
API : American Petroleum Institute
American Petroleum Instituteの略で米国石油協会
API度:同協会が定めた石油および石油製品の比重を示す単位。
CLC条約 International Convention on Civil Liability for Oil Pollution Damage
油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約。
油濁事故が発生した場合、船主の責任で支払われる補償制度
COC : Cargo Oil Control room
Cargo Oil Control roomの略。
タンカーでは石油・液化ガス等の揚げ荷には本船備え付けのポンプ(カーゴポンプ)を用いる。COCではこのカーゴポンプの起動および停止のほか、バラスト水の漲排水を遠隔で行うことが出来る。荷役全般をコントロールする制御室。
C重油(F.O. : Fuel Oil)
Fuel Oilの略で原油からガソリン、軽油や灯油などを分留して最後に残った燃料成分。重油はJIS規格によって油の粘度別にA、B、Cと大きく三種類に分かれる。外航大型船ではこのうちもっとも粘度の高いCグレードを用いる。VLCCで一日100tを消費する。
ECDIS: Electronic Chart Display and Information System (電子海図表示システム)
Electronic Chart Display and Information Systemの略で、従来、紙に表記されていた海図をモニター画面上に表示する装置。
さらに自船の位置を海図上に自動表示し、また他船の位置も自動的に表示される。
ETA(Estimated Time of Arrival)
入港予定日時。
ETB(Estimated Time of Berth)
着岸予定日時。
ETD(Estimated Time of Departure )
出港予定日時。
FC条約 International Convention on the Establishment of an International
Fund for Oil Pollution Damage
油による汚染損害の補償のための国際基金設立に関する国際条約。
CLCでカバーできない被害が生じた場合、この不足額を補う為に作られた条約。
GMDSS: Global Maritime Distress and Safety System(遭難救助通信システム)
Global Maritime Distress and Safety Systemの略で世界海洋遭難安全システム。
通信設備を自動・デジタル化、衛星通信を多用し海上における遭難および安全に関する世界的な制度。
IMO : International Maritime Organization(国際海事機関)
International Maritime Organizationの略。
1946年「船舶輸送の技術面に関する常設国際機関が必要」として前身のIMCOが発足。1982年に現在のIMOと改称。
IMO ナンバー
国際海事機関 (IMO) が発行する船舶識別番号のこと。個々の船にその船を識別するため恒久の番号を指定したもの。
船舶の国籍が変わっても、この番号は変わらない。
IMO:International Maritime Organization。
LPGタンカー
原油採掘時に副産物として出る石油ガス(主にプロパン、ブタン)を液化し運搬するタンカー。
LPG:Liquefied Petroleum Gas (液化石油ガス)。
MARPOL 73/78
Protocol of 1978 Relating to the International Convention for the Prevention of Pollution from Ship, 1973「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書」と訳され、条約名のMARPOLはMARINE POLLUTIONの略。
船舶の運航や事故による海洋の汚染を防止するための条約。
OBM:On Board Maintenance (オンボードメンテナンス)
オンボードメンテナンス。船内で実施する運航維持および必要な作業を乗組員自らの手によって実施すること。ドック等で行う作業をOBMで実施することでコスト削減を行うことが出来る。
OCIMF:The Oil Companies International Marine Forum(石油会社国際海事評議会)
原油および石油製品の荷役およびターミナルに関心を持つ石油企業の自主的組織。
(本部はバミューダ、支部はIMO(国際海事機関)との関係からロンドンに置く)
1993年に構築されたタンカーに関するSIREプログラム(Ship Inspection Report(SIRE) Programme)は、サブスタンダード船の排除等、海洋汚染事故防止に一定の功績を挙げている。
P&I保険:Protection & Indemnity Insurance
船舶の運航に伴って生じる船舶の所有者(運航者)の損害賠償を担保する相互保険。
通常の船舶保険がカバーしない、船舶が港湾設備に加えた損害や荷役中の人命損害、油濁事故に伴う海面清掃費用など、船主の第三者に対する損害賠償責任・費用を担保する。
PIMA:Petroleum Industry Marine Association of Japan(石油海事協会)
石油精製・販売に携わる企業で構成される任意団体。
POB(Pilot On Board)
パイロット(水先人)が乗船すること。POB Position(水先人乗船地点)。
Port / Starboard(左舷/右舷)
船の左舷をPort、右舷をStarboardという。Starboardとは昔の船が舵を船の右側に配置していたことからSteer(配置、操作する)board(板、舵)がなまって"Starboard"となった。これとは反対に舵をつけていない反対側を港に着ける為、左舷側を"Port(港)"と呼ぶようになった。
SBM : Single Buoy Mooring (一点係留ブイ)
一点係留ブイ。洋上に係船ブイを設置し本船の船首からチェーンで繋ぎとめ係留する方法。
SOLAS:International Convention for the Safety of Life at Sea
海上における人命の安全のための国際条約。タイタニック号の事故を契機に海上における人命安全の為に必要な救命設備、無線設備、安全教育等に関して定められた条約。
STCW条約
International Convention on Standards of Training, Certification and Watchkeeping for Seafarers(船員の訓練および資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)
海上交通の国際性から船員の資格要件等に関して国際的に統一すべきという考えからIMOで正式に取り上げられ1978年に採択された。
VLCC:Very Large Crude Oil Carrier
原油タンカーの中で載貨重量tが20万tを超えるタンカーの総称。現在では載貨重量トン30万tが主流。