オイルロード超大型タンカー12,000kmの旅 「一航海の軌跡」Vol.1 日本出港~シンガポール海峡通峡 5/7
巨大VLCCタンカーを動かすエンジン…機関部
VLCCタンカーの大きさは全長333m、幅60mでこれは東京タワーと同じくらいの長さにあたります。船底から一番高いアンテナまでは68m、船底から甲板デッキ上までは29mもあり、そのスケールの大きさは、まさに威風堂々とした趣です。この巨大なタンカーを人間に例えた場合、手足や心臓に当たる「機関部」について、ここで少し紹介します。機関部は主機関やボイラー、発電機など、様々な機器の操作、整備、修理を行っていますが、特に重要な仕事に“見回り”と“掃除”があります。この二つを厳重に行う事でトラブルを未然に防ぐ事ができます。この“見回り”には五感の全てをフル稼働させ、知識だけでなく記憶と経験が大切になります。
現在、機関部は、船橋当直のような24時間当直体制を引いておらず、朝8時から夕方5時までは見回りと整備、掃除などのデイワークを行い、夜間は機関室無人当直といってコンピューターが機関の状態を監視し、異常が発生した場合は、警報で当直機関士に知らせるという運用方法が取られています。機関無人当直を開始する前には、毎日必ず機関士と機関部員で機関室の見回りを行っています。
本船の主機関は最高出力約3万7,000馬力を出す2サイクルのディーゼルエンジン、燃料はC重油(原油をガソリンや灯油などに分留して最後に残った燃料成分。極めて粘度が高く、加熱して使われます。)を1日約100t消費します。ピストンの直径は84cm(1,500ccの乗用車のピストンが約7cmなので、その12倍)で、見えている部分は主機の上段排気弁の部分で、主機関の高さは約14mになります。
毎分74回転の低速回転でプロペラを廻し、石油満載時には本船を約15ノットの速力(時速約28km)で走らせることができます。またそれ以外にエンジンを動かすために必要な補機類、ボイラー、発電機等を機関制御室で集中的に制御・管理しています。そんな機関室は、巨大な工場のようなもので、すべて熱を発する機械ばかりのため、じっとしていても汗だくになる程蒸し暑く、機械音がいつも響いています。ちなみに主機関は機側以外に機関制御室・船橋の2ヶ所でリモート操作ができます。