LPGタンカーのドック工事 Vol.2 2/2

カーゴポンプ

カーゴポンプは各タンクに1台ずつ設置され、タンクの底部に取り付けられているので、故障した場合、簡単には修理できません。このため、ドックに入った時に専門家による開放整備を行います。開放整備は埃や小さなゴミが回転部等に入り込むと故障の原因となるので、造船所にはクリーンな作業場を用意してもらい行います。

当社ではカーゴポンプの開放整備は5年ごとに実施していますが、同じ時期に左右のタンクの2台が故障しないように、2年半で半数の4台ずつ開放整備しています。

カーゴタンクの温度計、圧力計、レベルケージ

カーゴタンクには、温度計、圧力計、レベルケージなどの計測機器が設置されています。温度、圧力は連続して計測、記録されており、船の安全を保つためにも非常に重要な機器です。また、本船に積み込まれたタンク内のLPGの数量は、LPGの液の温度、ガスの温度、タンク内の液のレベルおよびカーゴタンクの圧力により算出されます。これらの計測機器の整備はドックの時でなければできません。ドックでは専門家による整備、調整を行い、第3者の検定協会立会いのもとに精度確認検査が行われます。各機器は封印され、その結果を税関に届けて証明書を取得しますが、こうした証明書は、機器が正しく調整されており、LPG積み込み時には正確な数量であることを証明する重要なものになります。

  • 温度管理、圧力管理等行うカーゴコントロールルーム

    温度管理、圧力管理等行うカーゴコントロールルーム
    (荷役制御室)

  • 圧力管理をしながらLPG液の積み込み作業中

    圧力管理をしながらLPG液の積み込み作業中

再液化装置

再液化装置は、航海中カーゴタンクの圧力管理やLPG液の温度コントロールのための重要な装置です。この装置は冷房機、冷凍機システムと同様であり、装置の主要機器は、カーゴタンク内のガスを吸引、圧縮して液化する、再液化コンプレッサーです。この装置も全台を5年ごとに開放整備する必要があります。2年半ごとのドックでは半数ずつ専門家による開放整備を行っています。

  • 再液化装置の点検作業

    再液化装置の点検作業

  • 再液化装置の点検作業

    再液化装置の点検作業

カーゴパイプと断熱材

LPGは積み込む時と揚荷の時共に低温で行われます。このため甲板上を走るパイプラインには断熱材を取り付け、外部からの熱の侵入を防いでいます。この断熱材は耐水仕様で、外部から雨水や海水が入り込まないようにしてありますが、年数が経つと防水効果が落ちて雨水や海水が滲み込んでしまいます。このような状態になるとパイプは錆により孔があいてしまいます。外側には断熱材が取り付けられている為、どの程度錆が発錆しているのかなどのパイプの状態は外部からは判りません。ドックに入った時には所々断熱材を取り除き、パイプの状態をチェックし、錆の激しいところはパイプの残りの厚さを計測して必要であれば新しいパイプと交換し、断熱材も新しいものを取り付けます。パイプも普通のパイプではなく、低温鋼が使用されており、ドックに入る前にある程度交換する必要量を予想して日本から材料を持っていきます。

  • 断熱材を剥がし、パイプラインを点検

    断熱材を剥がし、パイプラインを点検

  • 新しいパイプと交換後、新規に断熱材取り付け

    新しいパイプと交換後、新規に断熱材取り付け

次回は、ドック工事後の作業を紹介します。

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