最新鋭VLCCタンカー「IDEMITSU MARU」が備える「安全」「安心」 1/3

出光は、大型タンカーの歴史を作ってきました。世界最大のタンカー「日章丸(三世)」の建造(1962年)、当時の常識を覆し、初めて20万tを超えて世界中を驚かせた超大型タンカー(以下VLCC)「出光丸」の建造(1966年)――いつの時代にも、出光タンカーはVLCCのパイオニアとして、VLCCの建造と運航で海運界をリードしてきました。

最近では、アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド社(IHIMU)と共同で開発した、最も経済的な船型の最新鋭VLCCが、2007年11月に竣工しました。世界最高レベルの安全性を維持し、究極の経済性を追求して、出光輸送船団のフラッグ・シップとなる「IDEMITSU MARU」(以下、本船。初代出光丸から数えて三世となる)の性能をご紹介しましょう。

最大輸送効率を求めて

石油資源の世界的な供給地であるペルシャ湾で生産される原油は、アラビア海からインド洋、そしてマラッカ海峡を通り、さらに南シナ海へと続く約6,500マイル(約1万2,000km)の道程を、VLCCで運ばれて来ます。VLCCにとって、「オイルロード」と呼ばれるこの海路での最難関は、シンガポールを含むマラッカ海峡です。狭く浅い海域で、東西に行き来する多数の船舶が途切れることはありません。そのマラッカ海峡を通過できる船型は時代と共に変化してきました。同海峡を通過するVLCCは、長い間、25万tが標準船型でした。
最近では、同海峡の水深測量精度もアップ、造船設計技術の進歩により、従来型のVLCC(社船では「スーパーゼアス」)と同じ船長、船幅、喫水で貨物タンクの容積を約9%大きくできる船型となりました。
“マラッカ海峡を安全に航行できる最大船型”という意味を込めた「マラッカ・マックス」という新しい呼称も定着しました。本船は、もちろん30万tを超えるマラッカ・マックスの船型で、船速は原油満載時で16ノット強(約30km/時)となっています。
現在、タンカーの構造は、油濁事故のリスクを最少化するために二重船殻構造(ダブルハル)(図-1)となっていますが、本船はさらに燃料油タンクも二重船殻として、対策に万全を期しています。VLCCを長期に、安全にかつ経済的に運航するためには、バラストタンクを腐食(錆)から守ることが必要です。わが社では、早くからOBM(オンボードメンテナンス)を採用し、高品質塗料の使用と安全な作業環境を整え、航海中には乗組員によるバラストタンクの自主保全を実施してきました。最近になって、同じ主旨で、高品質な塗装が要求される国際条約が決まりましたが、本船では高品質塗装の採用だけでなく、OBMの経験を活かして、保全作業がし易いタンクの構造を採用、さらなる安全性と経済性を実現しています。

図-1 二重船殻(ダブルハル)の断面図

建造中のIDEMITSU MARUの断面図

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