異動希望者向けの「フェア」から、全社員対象の「フェスティバル」へ
実は、「ジョブフェス」の開催以前にも、「ジョブフェア」という企画があった。似通った名称を持つ両者だが、そのねらいは異なる。「当社には、公募された他部門のポジションに社員が自主的に応募する『キャリアチャレンジ制度』があり、『ジョブフェア』は、このキャリアチャレンジで公募を行う部門と応募希望の社員とのマッチングを行うことを目的に開催したものでした。一方の『ジョブフェス』は、多くの社員が『当社にはさまざまな仕事がある』という『出光を知る』きっかけを届けることを目的としています。社員が気軽に参加できるように “祭り感”を打ち出していこう、とのねらいで名称には“フェア”ではなく“フェスティバル”を掲げ、内容も一新しました」
イベントの方向性が定まった後は、全社の各部門に出展を打診。開催の意義を説いて回った。その結果、初年度は42部門が出展。「やはり、『自分たちの事業や仕事を知ってほしい』という想いはどの部門にも共通してあるのだと思います」
「気軽に」を合言葉に、企画をブラッシュアップ
こうして、構想から約2か月半で開催に漕ぎつけた初年度のジョブフェスには、約500名の社員が参加。一定の成功をおさめたが、課題も残った。「初年度は、部門ごとにブースを設け、出展者と来場者が机を挟んで対面する会場設計でした。これだと、話を聞いてみたいと意を決して来た人でなければ近寄れず、せっかく来場してもブースを遠巻きに眺めている社員も散見されました。さらに、『異動を検討しているのでは…』と同僚に見られている気がして来場しにくい、といった声も聞かれたことから、2024年開催の第2回は、誰でも気軽に会場へ足を運び会話ができる空間づくりを目指しました」
知恵を絞る人事部のメンバーにヒントを授けたのは、「社内副業制度」(後述)によってジョブフェスの運営に参加した他部門所属の社員たちだった。「副業メンバーのアイデアを参考に、第2回は、部門ブースのレイアウトを対面式ではなくパネル展示形式にしました。また、楽しみながらより多くの部門ブースを巡ってもらえるようにデジタル形式のスタンプラリーを実施したり、各部門が展示内容に創意工夫をしてもらえるように展示物の表彰イベントを行ったりもしました」。副業メンバーのバックグラウンドはさまざま。「年代も所属も異なるメンバーとの相乗効果により、人事部内に閉じていたのでは生み出し得ないアイデアをかたちにすることができました」
「出光を知る」。その軸を堅持しながら、社員に親しまれる催しに
第2回ジョブフェスの来場者数は約1,000人と、初回の2倍に。より幅広い年代・階層の社員が足を運んだ。「開催地である本社に来られない社員も参加できるよう、すべての部門ブースにインタビューしてリアルタイムで配信するなど、オンライン企画も取り入れました。また、本社以外の社員が会場に参加する場合は、国内の旅費を人事部が負担する措置をとり、全国の支店や事業拠点から約100名の社員が来場してくれました。」
イベント実施後のアンケートでは、「業務内容や仕事の魅力を発見できたか」という質問の満足度が、第1回の70%から第2回では80%まで伸長。「『出光を知る』ための催しとして、この指標はさらに高めていきたいですね。同時に、“祭り”として盛り上げることを意識しつつも、『出光を知る』という企画の軸がぶれることのないようにしたいと考えています」
こうしたジョブフェスの趣旨と開催意義は、全社に浸透しつつある。徳山事業所では2024年に、「徳山版ジョブフェス」を独自に開催した。地元採用者が多く、他拠点への異動が稀な製造系の事業所では、同じ事業所内でキャリアを形成する人財が大多数を占める。このため、「事業所内の仕事を知る」ための機会として企画された。