出光興産がSAFプロジェクトに取り組む意義とは
「社会の大きな流れの中で、CO₂の排出量を減らさなければならない。一方で、社会の発展も不可欠です。その両立を果たすことができるSAFや合成燃料などの次世代エネルギーが着目されているわけですが、大量のエネルギーを供給してきた当社だからこそ、社会実装できると確信しています」
SAFプロジェクトは、社会実装に最も近いところにあると期待されている。
「カーボンニュートラル社会の実現を牽引するという覚悟をもって、当社は事業を行っています。生活に必要な燃料や素材を供給する社会インフラとして、当社は環境負荷を下げた製品やサービスを世の中に出していかなくてはならない。社会のニーズを受けて、そのニーズに見合った形に我々も変わっていく必要があると思っています」
カーボンニュートラル達成のために活かせる強み
「当社は2050年に自社操業に伴う排出量のカーボンニュートラル達成を目標としています。加えて、脱炭素化商材やスキームの提供を通して世の中のカーボンニュートラル達成にも貢献します。その通過点として、『2030年までに年間50万kLの国内SAF供給体制を構築する』という目標の達成があり、重要施策としてSAFプロジェクトの推進に取り組んでいるわけです」
日本国内で長きにわたってエネルギーインフラを支えてきた出光興産は、国内のSAF製造・供給事業を牽引する企業の一つだと目されている。
「当社はすでに、ジェット燃料の製造・輸送・販売の供給網を有しています。SAFに関して、原料調達・製造の部分は新たに構築する必要があるものの、輸送・販売の供給網には既存のネットワークを活用できる点が大きな強みです。また、ニートSAF※5は単体では製品にはならず、化石由来のジェット燃料と混合することで製品SAF化する必要があります。製品SAFの品質管理・品質保証においても化石由来のジェット燃料を製造・販売している当社の知見を活かすことが可能だと考えています」
新たなエネルギーを導入するための挑戦
SAFと従来の化石燃料では、原料や製造工程に大きな違いがある。そのためにどのような苦労や新しい課題があるのだろうか。
「石油精製の工程は、中東などで産出された原油を調達して精製し、製品化するというのが大きな流れです。しかしSAFの場合、環境負荷を下げる、という点を常に考慮しなくてはなりません。原料は、廃食油や動物性油脂など従来廃棄されていた材料を再活用する。それだけでなく原料が出来上がるまでの工程、製油所・事業所への輸送、製造過程、顧客への配送まで、一連のフロー全体でCO₂排出量がカウントされるのです。コストだけでなく投入エネルギーについても配慮する必要があります」
地球規模の課題に取り組むプロジェクトに携わることを個人的にどのように感じているのか。
「自分の仕事が何に役立つかクリアになっていることで能動的に仕事ができますし、やりがいにもつながると思います。昨今では一般的なニュースでもSAFが取り上げられていますし、社会的なニーズが高まっていることを感じます。先日、小学生の娘が解いていた文章問題に脱炭素への移行や再生可能エネルギーについての記述がありました。自身の仕事が地球規模の課題に関わり、次世代に繋がる取り組みであることを実感しました」