高温・高圧装置に使用されるステンレスフランジと低合金鋼ボルトの組み合わせによるフランジ継手は昇降温時の熱膨脹差によりボルト締付力が変化しシール性能も変ることが知られています。そこで昇温・降温時の熱変形挙動を有限要素法により解析しシール特性の定量的評価を行いました。
シミュレーションによるフランジ継手のシール性能評価
シミュレーションの概要
装置運転のスタートアップ(S/U)からシャットダウン(S/D)までの間の図1のモデルでフランジ継手の温度分布、発生応力を解析し、ボルトに生じる軸力の変化を求めました。
ボルト軸力を基に各段階での漏れの発生しない許容圧力を算出し運転温度と許容圧力の関係を明らかにすることができました。
シミュレーションの結果
定常運転時の温度と応力は図2のように得られ、フランジ各部で温度に差が生じ、ガスケットが塑性変形することが定量的に確認されました。
これは、実際の運転で感覚的に知られていた事実とよく一致しています。
ボルト軸力変化
ボルト軸力を求める為に軸方向応力のみを取り出した結果は以下の通りで定常運転中が最大となり、シャットダウン後は最初の締付力よりも小さい結果が得られました。
最初の締付時から、スタートアップ、定常運転、シャットダウンまでの間のボルト軸力を求め、その時の運転温度に対してプロットすると図2のような運転温度-ボルト軸力図が得られます。
運転温度と許容圧力
フランジ継手においてはボルトの軸力に対してその時にシール可能な圧力が決まります。
これによりボルト軸力を、シール可能な許容圧力に換算した結果が図3の様に得られました。
運転管理方法の決定
このシミュレーションの結果安全に運転できる温度-圧力範囲が確認され、運転方法改善に反映されました。
また、石油学会規格(JPI-8R-15):「フランジ・ボルトの締付管理基準」でも特定事業所の自主基準の例示に止まっているコールドボルティング(停止時 or 停止後の締め付け)に関しても明確な判断が可能となりました。