熱交換器チューブ振動解析

概要

  1. 熱交換器の設計または条件変更の際に、チューブ振動を回避する様に配慮することは、プラントの安全操業の面で重要となります。
  2. 従来のチューブ振動解析手法はHTRI(Heat Transfer Research, Inc.)の伝熱計算プログラム(Xist)を用いているため、一般的に安全サイドな評価となります。それが原因で装置稼動ロスを招くことになるため、精度の高い評価方法の確立が求められていました。
  3. そこで当社では、より精度の高いチューブ振動評価を実施するために、HTRIの振動解析プログラム(Xvib)を用いたチューブ振動解析手法を採用しています。

ここでは、当社のチューブ振動評価方法について紹介します。

チューブ振動のメカニズム

チューブ振動のメカニズムには以下の3つの形態があります。図1に流量と振動強度の関係を示しました。図1の3に該当する振動形態(Fluidelastic instability)は振動強度が大きく、最も注意すべき振動形態となります。

図1. 流量と振動強度の関係

XistとXvibの比較

表1にXistとXvibの比較表を示します。Xvibの長所はFEM(有限要素法)を用いた厳密解析により、チューブ振動強度が大きいFluidelastic Instabilityおよび、Vortex Sheddingを精度良く計算できる点です。更に、チューブ一本ごとの振動解析を行えるため、損傷の可能性が高いチューブおよび位置をより明確にすることが可能です。

表1. XvibとXistの振動解析機能の違い

Xist Xvib
適用振動形態 ・Fluidelastic instability
・Vortex shedding
・Turbulent buffeting
・Acoustic vibration
・Fluidelastic instability
・Vortex shedding
固有振動数の計算方法 スパン長さに基づく算術計算 有限要素法に基づく計算
振動モード 1次モードのみ 1~15次モード
解析対象チューブ シェル内を3分割
(Inlet/Central/Outlet)
チューブ1本ごとに解析
総括 ・振動ダメージの発生確率を簡易的に評価
・ダメージ発生チューブのスクリーニングに有効
振動ダメージの最も大きいFluidelastic instability、Vortex sheddingを精度良く計算可能

チューブ振動評価方法

チューブ振動評価方法

詳細解析(Xvib)の評価方法

図2に示す熱交換器を例に、Xvibを用いたチューブ振動評価方法(手順2)について解説します。

Xvibを用いたチューブ振動評価方法

1. 対象チューブの選定

Xvibは、FEM(有限要素法)に基づくチューブ振動解析を実施するので、まず振動に対して条件の厳しいチューブを選定することになります。
例えば図3に示すように、流速、チューブスパン等の観点から対象チューブを選定することとなります。

1:Impingement Baffle近傍のチューブ(Inlet部:流速MAX)
2・3:Baffle tip近傍のチューブ( Central部、Outlet部:流速&Tube Span MAX)

図3. 振動評価実施チューブの選定図
図3. 振動評価実施チューブの選定図

2. 解析条件の設定

対象チューブの位置および機器構造を考慮して、流速、流れ方向および減衰率を設定します※。

3. 評価方法

得られた解析結果について、Fluidelastic Instabilityについては臨界速度、Vortex Sheddingについてはチューブの振幅の観点から、チューブ振動による損傷の可能性を評価します。
例えば「3. Baffle tip近傍チューブ」の場合、図4から分かるようにAの部位で振幅が大きくなり、この近傍において損傷の可能性があると評価されます。

図4. チューブ振動の振幅(Xvib)

図4. チューブ振動の振幅(Xvib)

※XvibはXistと比較して、構造解析面では飛躍的に精度が向上していますが、流動解析面ではあまり向上していません(ただし、Xistでは設定できなかった「流速、流れ方向」を部位ごとに設定することが可能となりました)。

まとめ

Xvibを用いた熱交換器チューブ振動評価手法は、従来(Xistのみ用いた)の手法と比較して、解析精度が大幅に向上しただけでなく、チューブ振動による損傷箇所を詳細(チューブ毎、スパン毎)に特定することも可能となります。現在、チューブ振動評価結果と運転実績との比較検証、流動解析を活用したシェル流体の挙動把握等を通して、更なるチューブ振動解析の精度向上に努めています。

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