百年以上もの歴史で
培われてきた
潤滑油の技術と心を
次世代へつなげる。

  • 潤滑油二部関東第二潤滑油課
    M.YAMADA

出光興産は1911年の創業後間もなく、潤滑油の開発を始めた。以来100年以上にわたって、需要に即した潤滑油を開発し、販売してきた。連綿と続いてきた潤滑油の歴史の裏には、技術や心を伝えてきた人々がいる。時代とともにスペックが向上し、変容を遂げてきた出光興産の潤滑油。入社以来、潤滑油の販路を開いてきた営業担当者に「つなげる」をテーマに、潤滑油の販売活動にまつわるインタビューを行った。

INTERVIEW POINT

2015年入社、2年間の研修を経て2017年関東第一潤滑油課に配属。関東第一潤滑油課では南関東を担当エリアとし主にグリースの販売に従事。その他トラックメーカーの担当、ITMs※の担当に従事。2022年から関東第二潤滑油課にて課長補佐として、収支管理等の課の取りまとめと特約販売店様の担当に従事。また、北関東を担当エリアとし、エリアマーケティングを遂行中。
※ITMs=出光テクニカルマスターズの略。お客様のニーズに応じて提案販売できる営業マンを育成し、販売基盤強化を目指す特約販売店様の集まり

いつの時代にも
潤滑油は
働く現場や
日常を支えている。

時代の要請や社会的な課題に応え続ける出光の潤滑油

出光興産 (当時は出光商会)は1919年に極寒地でも凍結しない車軸油を開発以来、現在に至るまで、ニーズに応じてさまざまな潤滑油を提供してきた。「近年では、潤滑油としての性能だけでなく、EV化や省人化に合わせた付加価値を備えた潤滑油がより一層重要な位置づけ になりました。例えば、物流業界は2024年問題により働き方の改革が求められています。そこで出光興産では、潤滑油が貢献できることは何か、と考えて高性能ディーゼルエンジン用潤滑油「idemitsu AshFree(イデミツアッシュフリー)」を開発、2022年に上市しました。この潤滑油を使用することで、ディーゼルエンジン車の部品にススが溜まりにくくなり、アイドリングや部品洗浄の時間を削減できます。また、カーボンニュートラルに貢献できる潤滑油の提案、更なる開発も急務とされています。そのため、日々の営業活動のなかで開発につながる現場の生の声を吸い上げ、スピート感を持って開発担当に届けることを何よりも大切にしています」

製造現場だけでなく暮らしの中で役立っている潤滑油

潤滑油は機械装置の“血液”として、さまざまな機械の摩擦を低減し円滑な運転を助けています。しかし、潤滑油は人々の日常生活になくてはならないものだ、と言われても自動車のエンジンオイル以外の用途を思いつく人は少ないかもしれません。「物が動くところに潤滑油は使われています。製造現場の生産機械類をはじめ、身近なところでは、PC内部を冷却するためのファンの軸受け部分とか。ほかにも、エアコン内のコンプレッサーを潤滑させる冷凍機油や、携帯電話やゲーム機に使われる振動モーターにもロスを減らすのに潤滑油が使用されています 。また、ボールペンのインクが入った芯の中には、インク漏れや乾燥を防ぐためにグリースという半固体の潤滑油が入っています」

過去から未来
人から人へ
伝えることで
つなげていく。

開発者とお客様のコミュニケーションをつなぐ

「お客様から『性能をこのように変えて欲しい』という要望があった場合、私たち営業がその潤滑油への想いや目指す性能をくみ取り、関係者 に伝えます。そして開発者は柔軟な発想で、スピーディに解決に向けて取り組んでくれます。また、開発の想いをお客様に伝えるという場面もあります。お客様には潤滑油の性状や物性を見ていただきますが、そこから開発思想・背景までくみ取ることは難しいです。どのような設計思想に基づいて開発したのか、お客様のメリットは何か。社内の技術的な知見・経験をお話しして、お客様と開発者、両者の気持ちをつなぐことが現場の役目だと思います」ときには社内の人間同士をつなぐこともある。「あるとき、グリースを大増販するプロジェクトの担当として、製造業や運送業などあらゆるお客様への提案と採用を推進しました。これは関連各所の人たちが連携し、お客様を想って行動することではじめて実現できたものです。潤滑油事業部の中には、品質保証、供給・調達、開発、物流など、それぞれの担当者がいます。例えば調達担当は、商品を安定供給するために適正な原材料の在庫管理を行います。品質保証は、正確な品質検査を迅速に行っています。私自身がこの一環した体制の懸け橋となりグリースを納品することに高い評価をいただき、その結果、社内外で関係者と共にグリースを大増販することができました。この一連の活動は海外拠点にも参考となるグローバル好事例発表会に選出され、国内外の実績にもつなげることができました」

先人たちの知見を積み重ねる、見聞を引き継ぐ

日々の現場で、過去の知見が生かされる場面もある。「新発売の潤滑油を提案するときに同じ用途の古い製品の資料を見返して、開発時期が数十年前と知って驚くことがあります。潤滑油は一度発売したら完成というわけではなく、改良に改良を重ねて現在の仕様に至っているので、その変容を辿ることも重要だと感じています。出光興産には長い年月をかけて培ってきた知見があるからこそ、新しい商品の開発につながっているのだと。」また、社員の間で共有される情報にも先輩たちの経験や見聞が詰まっています。「先輩社員から引き継いでいる需要家ファイルがあります。製造現場の工程や、それぞれの工程に使われている潤滑油について選定経緯が取りまとめられており、新たな提案をする際に参考になります。古いものは紙ベースでファイリングされていることもありました。また潤滑油の開発経緯が記されているケースもあり、当時の開発背景を知ることで、お客様と一緒に新たな潤滑油の開発を検討する際に非常に役に立ちます。」

個々の考えを尊重し、達成感に導くアドバイスを胸に

「営業という仕事の楽しさや達成感は、最初の配属先で教えてもらったように思います。汎用製品を使い続けていたお客様に、性能の高い潤滑油を提案した時のことです。高機能潤滑油は価格が高いのですが、汎用製品から変更することで使用量の削減につながり、トータルコストではメリットがあると納得いただいた上で採用していただきました。このとき、自分が提案した内容でお客様の改善、ひいては達成感につながるという体験ができ、やりがいを感じることができました。いま考えてみると、自分で答えを導いたと思わせるように上司、先輩、同僚がアシストしてくれたのだと感謝しています」現在では周囲が後輩ばかりになり、育成も山田の仕事の一つだと言われるようになったそう。「後輩を育成する立場となった今、かつての上司や先輩のように本人の考えを尊重しながら成功に導く協力ができるように心がけています。私の憧れである先輩女性営業マンが最前線で活躍している姿を手本とし、励みになっているように、私自身も後輩たちから『あの人が頑張っているから自分も頑張ろう』と思われるような存在になりたいですね」

技術を伝え
心を伝えることで
新しい価値を
つくり出したい。

潤滑油のブランドメッセージ“The Heart of Technology”

出光興産が長年培ってきた潤滑技術はお客様や消費者、そして社会全体のテクノロジーの革新を支えている。“The Heart of Technology”という潤滑油ブランドメッセージには、テクノロジーを通じて、真に心豊かな世界を実現したいという思いが込められている。「このメッセージを実践するために必要なのは『やりきること』だと考えています。一人一人立場が違う人たちがいるなかで、みんなが自分の仕事に対して誠実に取り組んで、結果にこだわってやりきった先に、人の心を動かす『心豊かな世界』があるはずです。私が周囲の人を巻き込んで、やり抜く姿を見て、後に続く人たちの心を動かすことができたらいいなと。そんな仕事に対する姿勢や、取り組み方をつなげていければいいですね」その姿勢は、企業理念の“真に働く”にも通じる。「企業理念に想いを巡らせたときに、結果的に私たちが仕事に取り組む姿勢は理念とつながっているように思います」

100年以上の歴史をこれからもつないでいくために

これまで先達が積み重ねてきたものを伝え、次の世代にバトンを渡す立場にある山田にとって、商材である潤滑油の進化こそが重要だ。「新しいものを開発するためには、過去の技術にさらなる価値を加えることが求められます。例えば環境改善につながるもの。人体に影響が少ない成分の使用により労働環境を改善する、使用量削減から廃棄物の削減、地球の環境改善へつなげる。あるいは静音性に特化し、機械音を減らして静かな環境を実現するなど。過去から継続してきた製品に新たな考えや開発要素を加えて、付加価値を生み出すものにつなげることが望ましいですし、それが私たち世代の役割だと受け止めています。潤滑油という製品を通してお客様の心を動かしたり、お客様の環境改善を実現したりすることを目指し、新開発や改良、ラインナップに新しく加わる潤滑油を広めていくことで、先達の想いや技術を未来へつなげていきたいと思います」

ANOTHER STORY

それは書店での出合いから始まった。
出光興産入社のきっかけとなった一冊の本。

「就職活動を始めるにあたって、理念に共感できる会社に勤めたいと考えていました。商材は時代に合わせて変わっていくものだから、ありたい姿に共感 できればどのような環境でも働ける、業種にこだわらず理念優先で選ぼう、と。その頃、書店で一冊の本を手に取りました。当時、本屋大賞を受賞した
『海賊とよばれた男』(創業者である出光佐三をモデルとした小説)です。そこで、出光興産の理念を知って、一番しっくりくる会社だと感じました」そして入社後、偶然か必然か、山田は創業時からの技術と理念を受け継ぐ潤滑油課に配属されたのでした。

※2024年3月時点