長年にわたって研究開発に取り組み、遂に褒章の栄誉に輝く
令和6年春の褒章で舟橋は「高効率かつ長寿命の青色有機EL発光素子の開発」により紫綬褒章を受章した。紫綬褒章は、学術芸術上の発明改良創作に関して事績の著しい者に与えられる。
「青色有機EL素子の発明によって松浦氏、福岡氏とともに『恩賜発明賞』を受賞したのは2018年のことでした。そしてこの度、紫綬褒章受章という栄誉に浴することができました。これは私一人の力ではなく、たくさんの人たちの協力があってのことです。本当に光栄だと思いますし、ありがたいことだと思っています」
入社4年目に有機EL担当になって以来30年近く、有機EL開発一筋に邁進してきた。しかし、石油元売の新しい柱となりうる事業を開拓し、結果を出すまでの道のりは決して平坦ではなかった。
有機ELとは
事業としての成果が求められる厳しい日々のはじまり
「日本経済がまだ高度成長期にあった頃、当社では数十年後を見据え、石油以外の新事業を模索し、研究所でさまざまなテーマを検討していました。その中で、有機化合物である石油に関連したテーマの1つとして、電子材料が選ばれました」
出光興産が有機EL材料の開発を始めたのは1985年。当時は物理、化学各分野のエキスパートが集まり、研究所はさながら梁山泊のようだったという。しかし、時代とともに状況は一変する。
「私が入社した1993年は、まさにバブル崩壊の足音が聞こえてきた頃。配属された中央研究所の各テーマも整理検討の俎上にあげられるところでした。会社の経営状況が悪化し不安が募るなか、開発メンバー全員が集められ、定期的に合宿を行っていました。研修の主題は『どうやって利益を得るのか』。電子材料分野を推進する幹部から厳しい意見が多々あり、精神的につらかったことを覚えています」