安全を最優先に、慎重を期してトラブルの対処にあたる
製油業務は機械相手のことなので、ときには思わぬトラブルに見舞われることもある。「当事業所は設立から50年以上経っていることもあり、最新のプラントなら起きないような装置のトラブルもあります。トラブルと言ってもその状況はさまざまです。機械が止まったり、水漏れがあったり、スイッチが入らなくなったり。油を精製している装置の配管には水や他の用役、蒸気、スチームなども巡っています。例えば、回転機を冷やすための冷却水が継手の隙間から漏れていたとします。家庭用の配管ならば外して取り替えれば済みますが、精製装置の場合そうはいきません。連続運転している回転機の、冷却水の不具合箇所を交換するにはどこから止めればいいかを十分に検討し、計画してから機械を止めて対処しなければならないのです。異常時や運転上の変化が起きた際にはアラームが発報しますが、アラームはグレード分けされており 、グレード分けやプロセスによって2段階でアラームが鳴る部位もあります。緩やかな故障などは1段階の警報後にリカバリーを図ることができるように。しかし急激な故障などで一気に2段階まで突破してしまうことも考えられますので、瞬間的に判断ができるように日頃から訓練をしています」
非常時に求められるのは、正しく供給し続けること
「東日本大震災の時には、ガソリンスタンド前の大行列がニュースでも報道されました。私自身も、実際にその状況を目にしました。当時の上司がそのとき、インフラをいかに“正しく”供給し続けることが大切か、ということを話したのを覚えています。“正しく”とは安全に安定して供給すること、正しい管理値の中で収まった品質のものを供給すること。私たち製油課の場合は、ガソリン基材を供給し、ブレンドして製品を出すことです」もしも大きな地震が起きたとき、製油所内の装置はどうなるのか。「震災などの非常時には、自動的に装置が止まるように設計されています。安全性には信頼を置いていますが、現場の人間としては『再び装置を立ち上げなければいけない』という別のプレッシャーを受けることになります。すべての装置が停止した場合には、綿密な計画を立てた上で、運転を開始します。1装置につき2~3日から4日かけて段階的に装置をスタートしていくため、全ての装置が通常通りに稼働するまでには1カ月ほど要します」