木造サービスステーション実現を阻む消防法の壁
「木を使ったSSであるとお客様に認識いただくため、木目が見える意匠で検討を進めました。SSは危険物取扱所という性質上、お客様の安全確保のために様々な法令・条例のもとに厳格な規定を守って建設されています。消防法の政令である『危険物の規制に関する政令第17条』はSS建設の上での条件が記載されていて、『壁、柱、床、はり及び屋根を耐火構造とし、又は不燃材料で造る』とされています。素材そのものではこれらに該当しないCLTを前面に押し出したSS建設は、許可を下す側も作る側も初めての事例でした。戸惑いと心配の声が上がった事は、今振り返れば当然であったと思います。結果として、建設候補先の選定という最初の段階から困難に直面しました」あらためて法令や条例に準拠した木造のSSを実現するために様々な方法が検討された結果、たどり着いた解決策とは何だったのか。
日本で初めての試みに、ともに挑む協力者を求めて
「私たちの想いを実現するために検討を重ねるうち、消防法に『不燃又は耐火構造』と記載されている点について、耐火性に特徴のあるCLTの上に不燃木材を貼り付けることで理解を得られないか、という結論に至りました。そして、各省庁に事前確認を行ったり、CLTを推進している地域の拠点を選定したりと、認可に向けて再度チャレンジしました。結果として、全国3か所でType GreenSS建設に向けた許可取得に至ることができました」木造のSS建設には誰も取り組んだことがないため、当然のことながら従来の協力先である設計会社や建設会社にも知見がなかった。「前例がない事案ですから、訪ねる先々で理解していただくまでに時間がかかりました。木材の調達元となった銘建工業(岡山県)にも何度も足を運び、私たちも徐々に知識を蓄え、道筋を整えて進めてきました」
より多くの人々に理解を得て、さらに次の目標へ
2022年11月7日、ついにType Greenの1号店「スマートエコステーション南国バイパス」が高知県南国市に開所、続いて同年11月に兵庫県神戸市「スマートエコステーション鹿の子台」、12月に埼玉県飯能市「スマートエコステーション美杉台」が営業を開始した。「開所後は社内外から大きな反響がありました。林業が盛んな地域の特約販売店様から建設の打診があったほか、全国紙を含め32媒体で報道、『CLTで地方創生を実現する議員連盟』やハウスメーカー、ゼネコンから協力の申し出を受けました。さらにウッドデザイン賞2023の建築・空間分野『ライフスタイルデザイン部門』を受賞、石油元売会社で初めて『環境配慮型 SS(木造建築)への挑戦』が認められました」杉の香りが漂う店内では、訪れたお客様に向けてType Greenの取り組みを伝えるコンセプトムービーも上映された。「国内の森林では樹齢の長い老木が増えているため、実はCO₂の吸収量が下がっています。だから、木材をたくさん使って、どんどん新しい木に変える必要があります。私たちはType Greenを通じて、カーボンニュートラルへの貢献を目指しています。出光興産がSSというお客様に一番近い部分で木材を使い始めた理由を実感していただけたと思います」2024年3月には、兵庫県明石市に4か所目となるType Greenが開所する。