Mission 1 Solution
潤滑管理最前線
設備管理と潤滑管理
設備管理とは、「設備を設置する計画から、運転稼動、メンテナンスを経て廃棄にいたるまでの間、その設備が持つ機能・性能を効率的に活用するための管理」である。潤滑管理の目的は、潤滑技術(トライボロジー)を活用し、設備の安定稼動を実現することである。すなわち、潤滑管理は設備管理のためにある。
図1は、機械システムのバスタブ曲線である。今までは、初期故障期を意識した技術開発、摩耗故障期の設備診断技術が強調されてきた。偶発故障期に、焦点を当ててみたい。一般にはあまり議論されない期間であるが、実際には最も企業に利益をもたらす期間である。設備機械は故障することを想定して設計されていない。しかし、実情は思いもよらぬ故障が偶発的に発生している。
この故障はほとんどが人為的ミス(正しい作業が行われていない)から発生している。正しい設備環境、正しい操業、正しい給油脂によって長期間の偶発故障期(好調保全期)が確保される。この期間に実施するメンテナンスは潤滑管理である。
図1は、機械システムのバスタブ曲線である。今までは、初期故障期を意識した技術開発、摩耗故障期の設備診断技術が強調されてきた。偶発故障期に、焦点を当ててみたい。一般にはあまり議論されない期間であるが、実際には最も企業に利益をもたらす期間である。設備機械は故障することを想定して設計されていない。しかし、実情は思いもよらぬ故障が偶発的に発生している。
この故障はほとんどが人為的ミス(正しい作業が行われていない)から発生している。正しい設備環境、正しい操業、正しい給油脂によって長期間の偶発故障期(好調保全期)が確保される。この期間に実施するメンテナンスは潤滑管理である。

図1. 設備管理と潤滑管理
初期の潤滑管理と潤滑改善
以前は、潤滑管理とは(1)点検(2)給油(3)更油(4)適油選定(5)油種統一を実施すると考えられていた。現在は、これら初期の「潤滑管理」に、(6)適正油剤の開発(7)潤滑改善の実施という項目が加わった。「潤滑改善」とは、機械装置の潤滑系統の不具合個所を見出し、改善することである。(図2)
生産現場のトラブルを分析すると同じトラブルが繰り返されている場合が多い。これはトラブルが発生した時に、その原因を根本的に解決するのではなく対処療法による復旧のみに終わっているからである。トラブルの原因を調査し、それを解決しなければトラブル件数は減らないし、保全コストは低減しない。トラブルを(1)電気(2)機械(3)潤滑(4)その他に分類するだけではなく、その根本原因を調査し、改善する必要がある。
潤滑関連のトラブルであれば、
(1)機械メーカーおよび潤滑油剤の専門家と協力して、潤滑系統装置の改善を行う。
(2)必要であれば、潤滑油剤メーカーと協力して油剤を開発する。
等その原因を根本的に解決する対策を取ることにより、保全コストを低減できると考える。
生産現場のトラブルを分析すると同じトラブルが繰り返されている場合が多い。これはトラブルが発生した時に、その原因を根本的に解決するのではなく対処療法による復旧のみに終わっているからである。トラブルの原因を調査し、それを解決しなければトラブル件数は減らないし、保全コストは低減しない。トラブルを(1)電気(2)機械(3)潤滑(4)その他に分類するだけではなく、その根本原因を調査し、改善する必要がある。
潤滑関連のトラブルであれば、
(1)機械メーカーおよび潤滑油剤の専門家と協力して、潤滑系統装置の改善を行う。
(2)必要であれば、潤滑油剤メーカーと協力して油剤を開発する。
等その原因を根本的に解決する対策を取ることにより、保全コストを低減できると考える。

図2. 潤滑管理
潤滑改善例(油圧系)
図3は、油圧系のコンタミとその対策の一例である。油圧系のトラブルは、(1)制御機器(電磁バルブ等)の作動不良(2)ポンプの吸い込み不良(3)油漏れ等がある。

図3. 油圧装置のコンタミコントロール
これらのトラブル原因の大半がシール不良による油漏れとコンタミである。油圧系の保全はコンタミコントロールを如何に実施するかが大切である。
コンタミの種類としては
(1) 塵埃(外部から浸入)
(2) 水分(凝縮水、クーラント混入)
(3) 他油(摺動面油、切削油、防錆油等)
(4) 摩耗粉(潤滑性不足、給油不良により発生)
(5) スラッジ(作動油自身の劣化生成物および外部からの混入物によるスラッジ生成)
等があるが、(1)、(2)、(3)は、油圧系への浸入個所を発見し、混入対策を実施しなければ根本的な解決とはならない。
例えば、
1. 適正な形状のエアブリーザーに変更・設置する
2. シール材・シール機構の変更等
である。
しかしながら、混入個所を100%発見し、対策を取ることは難しい。そこで、コンタミ物質を取り除くバイパスフィルターの設置、ラインフイルターの追加設置等の装置の改善を実施する。フイルターの設置・オイルクーラーの容量変更等の潤滑改善を実施することにより、トラブルが低減できる。
また、高性能油剤の開発により、潤滑トラブルを減少させることも可能である。例えば非系作動油の開発により、スラッジによる油圧機器のトラブルを解決することが可能になった。
研削盤等の水溶性油剤を使用する工作機械の油圧装置においては、研削液が油圧ユニットに混入すると粘着性スラッジが発生する。このスラッジが電磁バルブ等の油圧機器の作動不良を起こす。このトラブルについては、スラッジ対策油の開発により、トラブルが低減された。(図4)
コンタミの種類としては
(1) 塵埃(外部から浸入)
(2) 水分(凝縮水、クーラント混入)
(3) 他油(摺動面油、切削油、防錆油等)
(4) 摩耗粉(潤滑性不足、給油不良により発生)
(5) スラッジ(作動油自身の劣化生成物および外部からの混入物によるスラッジ生成)
等があるが、(1)、(2)、(3)は、油圧系への浸入個所を発見し、混入対策を実施しなければ根本的な解決とはならない。
例えば、
1. 適正な形状のエアブリーザーに変更・設置する
2. シール材・シール機構の変更等
である。
しかしながら、混入個所を100%発見し、対策を取ることは難しい。そこで、コンタミ物質を取り除くバイパスフィルターの設置、ラインフイルターの追加設置等の装置の改善を実施する。フイルターの設置・オイルクーラーの容量変更等の潤滑改善を実施することにより、トラブルが低減できる。
また、高性能油剤の開発により、潤滑トラブルを減少させることも可能である。例えば非系作動油の開発により、スラッジによる油圧機器のトラブルを解決することが可能になった。
研削盤等の水溶性油剤を使用する工作機械の油圧装置においては、研削液が油圧ユニットに混入すると粘着性スラッジが発生する。このスラッジが電磁バルブ等の油圧機器の作動不良を起こす。このトラブルについては、スラッジ対策油の開発により、トラブルが低減された。(図4)

図4. 水溶性研削液の混入トラブルと対策
設備診断技術としての潤滑診断
図1のバスタブ曲線の摩耗故障期の有効な保全方式はCBM(Condition Based Maintenance 状態監視保全)である。つまり、機械故障の予兆を知り、適切な保全を行うことである。機械の状態を知る設備診断技術としては、振動法が一般的であるが、設備の損傷の初期状態を知るには潤滑診断法が有効である。
潤滑診断としては、フェログラフィ、SOAP法が知られているが、生産現場で測定することは出来ない。また、分析には時間と費用がかかる。
そこで開発されたのが図5に示す潤滑油鉄粉濃度チェッカーである。この潤滑油鉄粉濃度チェッカーは機械の摩耗状態を簡易的に測定する手段として有効であることが確認されている。(図6)
時間と費用をかけない簡易診断機の開発とオンラインでの診断技術の開発により、手間のかからない診断が可能になってくると考える。
潤滑診断としては、フェログラフィ、SOAP法が知られているが、生産現場で測定することは出来ない。また、分析には時間と費用がかかる。
そこで開発されたのが図5に示す潤滑油鉄粉濃度チェッカーである。この潤滑油鉄粉濃度チェッカーは機械の摩耗状態を簡易的に測定する手段として有効であることが確認されている。(図6)
時間と費用をかけない簡易診断機の開発とオンラインでの診断技術の開発により、手間のかからない診断が可能になってくると考える。

図5. 潤滑油鉄粉濃度チェッカー

図6. 潤滑油鉄粉濃度チェッカー活用事例
メンテナンスの時代
現在は、メンテナンスの時代といわれている。
バブル経済が破綻し、低成長経済に移行した現在では設備の使い捨ての時代から、今ある設備をいかに上手にメンテナンスを行い、生産を続けるかという時代に変わった。
ところで、メンテナンストライボロジーという言葉を聞くようになったが、メンテナンストライボロジーの考え方を簡潔に述べると次の様になる。メンテナンスにトライボロジーを活用していくのが「メンテナンストライボロジー」である。
図7に示すように潤滑トラブルが全トラブルの25%以上を占めるという事実かもトライボロジー(潤滑技術)の活用により、保全コストが低減されることは容易に想像される。
しかし、現在はこのトライボロジーの成果が保全に充分に生かされているとは言い難い状態である。
メンテナンスの時代とは言っても最近の状況では、各企業ではマンパワーの確保が難しく、今後多く保全業務をアウトソーシングしなければならない時代になると予測される。とは言っても高度化された種々の機械装置の保全業務をすぐにアウトソーシングすることは難しい。
潤滑管理は、以前は石油メーカーのメンテナンスサービスに頼って来たが、もはや無償でのサービスは期待できない。潤滑管理のように従来から外部のサービスに頼っていた分野は、すぐにアウトソーシングされる対象領域になると考える。
バブル経済が破綻し、低成長経済に移行した現在では設備の使い捨ての時代から、今ある設備をいかに上手にメンテナンスを行い、生産を続けるかという時代に変わった。
ところで、メンテナンストライボロジーという言葉を聞くようになったが、メンテナンストライボロジーの考え方を簡潔に述べると次の様になる。メンテナンスにトライボロジーを活用していくのが「メンテナンストライボロジー」である。
図7に示すように潤滑トラブルが全トラブルの25%以上を占めるという事実かもトライボロジー(潤滑技術)の活用により、保全コストが低減されることは容易に想像される。
しかし、現在はこのトライボロジーの成果が保全に充分に生かされているとは言い難い状態である。
メンテナンスの時代とは言っても最近の状況では、各企業ではマンパワーの確保が難しく、今後多く保全業務をアウトソーシングしなければならない時代になると予測される。とは言っても高度化された種々の機械装置の保全業務をすぐにアウトソーシングすることは難しい。
潤滑管理は、以前は石油メーカーのメンテナンスサービスに頼って来たが、もはや無償でのサービスは期待できない。潤滑管理のように従来から外部のサービスに頼っていた分野は、すぐにアウトソーシングされる対象領域になると考える。

図7. 潤滑トラブルの割合(潤滑ハンドブック 養賢堂)
おわりに
生産活動のグローバル化に伴い、メンテナンス技術者の資格制度もISOで検討されており、メンテナンスという地道な業務に携わっている人々が世の中から評価される時代になりつつある。
石油メーカーとしては、機械メーカー、製造現場と協力して長年培ってきた潤滑技術(トライボロジー)を有効にメンテナンスに活用する「メンテナンストライボロジー」を実践していくことを考えたい。
石油メーカーとしては、機械メーカー、製造現場と協力して長年培ってきた潤滑技術(トライボロジー)を有効にメンテナンスに活用する「メンテナンストライボロジー」を実践していくことを考えたい。
参考文献
1)福永 一郎 (社)日本トライボロジー学会トライボロジー会議予稿集(東京 2002-5)
1)福永 一郎 (社)日本トライボロジー学会トライボロジー会議予稿集(東京 2002-5)