2023年6月15日
多様な省資源・資源循環
「金属分を含まない無灰型ディーゼルエンジン油「idemitsu AshFree」の開発」が第22回GSC賞「奨励賞」を受賞 ドライバーの労務時間の短縮など、2024年物流問題にも貢献する新技術
出光興産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:木藤 俊一、以下「当社」)は、「金属分を含まない無灰型ディーゼルエンジン油「idemitsu AshFree」の開発」により、公益社団法人新化学技術推進協会の第22回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞(以下「GSC賞」)で、「奨励賞」を受賞しました。本年4月の第73回自動車技術会賞「技術開発賞」に続く受賞になります。
当社は本技術を用い、昨年9月に無リン無灰のディーゼルエンジン油「idemitsu AshFree」を業界で初めて発売しています。「idemitsu AshFree」を通じ、労働時間の短縮や燃料費の削減など物流業界が直面する、さまざまな課題の解決に貢献してまいります。

受賞者4名
(左から藤浪行敏、清水保典、甲嶋宏明、葛西杜継)

受賞者4名
(左から藤浪行敏、清水保典、甲嶋宏明、葛西杜継)

受賞者4名
(左から藤浪行敏、清水保典、甲嶋宏明、葛西杜継)
GSC賞は、「人と環境にやさしく、持続可能な社会の発展を支える化学」を定義とする、グリーン・サステイナブルケミストリー(以下「GSC」)※1の推進に貢献する優れた業績を挙げた個人、団体を表彰するものです。GSC推進への貢献が将来期待できる業績に贈られる賞である「奨励賞」を、当社の社員4名が受賞しました。
1. 受賞テーマ
「金属分を含まない無灰型ディーゼルエンジン油「idemitsu AshFree」の開発」
2. 受賞者(4名)
清水 保典(しみず やすのり)
甲嶋 宏明(こうしま ひろあき)
葛西 杜継(かさい もりつぐ)
藤浪 行敏(ふじなみ ゆきとし)
3. 受賞の背景と概要
環境負荷低減を目的に、ディーゼル車には排ガス中の微粒子物質を捕捉するための排ガス浄化処理装置DPFが搭載されています。一方で、走行距離が増えるにつれ、排ガス中に存在するエンジン油添加剤(清浄/耐摩耗剤)由来の灰がDPFの目詰まりを引き起こし、トラブルの原因となっていました。
灰の発生源である金属系清浄剤などを使用しないのが理想ですが、エンジン内の表面温度は最大300℃を超えるため、添加剤自身の堆積によるエンジン損傷の発生が懸念されていました。そのため、従来の油では使用量の減量(低灰分化)により灰そのものを減らすことが、目詰まりを防ぐ唯一の手法となっていました。
この課題の根本的な解決へ向け、当社の研究員らは、灰を減らすのではなく、出さないというコンセプトを採用。全く新しいディーゼルエンジン油の開発に取り組みました。その結果、灰の発生要因である金属系の清浄剤や耐摩耗剤を使用しない、独自の添加剤処方技術の開発に成功しました。
昨年9月に販売したディーゼルエンジン油「idemitsu AshFree」は、本技術を採用しており、DPFを搭載するトラックやバス向けの日本製ディーゼルエンジンとDPF適合性能の規格である「JASO DH-2」相当の性能を有しています。「idemitsu AshFree」は、DPFの目詰まりの要因となる灰を出さないため、DPFの寿命延長によるメンテナンス費用の削減やDPF再生※2時間短縮による労務時間および燃料使用量の削減を実現します。
【idemitsu AshFree 特長(期待効果)】
- DPFの寿命延長でメンテナンスコストを削減
DPFに灰が溜まらず、DPFの寿命延長が可能になり、DPFメンテナンスコスト(DPF交換、洗浄)を削減できます。 - 労務時間の改善が可能となり、ドライバーや経営者にも貢献
DPF手動再生を減らせるため、突発的な車両停止によるドライバーのストレス軽減や待機時間の短縮による労務時間の削減が可能になり、経営にも貢献します。 - 整備士の業務負荷(時間)を低減
DPF交換には半日を要しますが、時間の低減が期待できます。また、メンテナンスに伴う休車(配送できないことによる売上げ機会の損失)も防ぎます。 - 燃料消費量の削減
DPF再生回数増加を抑えることができ、再生に使用する燃料消費量を削減します。 - カーボンデポジットの生成抑制により、EGR、エンジントラブルを防ぐ
蒸発しにくく、カーボンデポジットとなるスス生成を抑制できるため、EGR(排気ガス再循環装置)やエンジンのトラブルを防ぐことが期待できます。 - 環境への貢献
DPFの再生回数抑制などによりCO₂排出量を削減します。また、リンを使用しないため触媒の被毒を抑え、触媒の交換を減らすなどSDGsへの取組みにも寄与します。
4. 受賞者コメント(代表)
この度は名誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。本開発は、環境やユーザーの負荷軽減を目指し、2000年代に検討を開始しました。開発には多くの関係者が関わり、困難を乗り越えながら本技術を確立しました。本開発を支援下さった社内外のすべての関係者の皆さまに、深く感謝申し上げます。
近年、物流業界は、運転手不足や高齢化などに加え、2024年4月1日から施行される運転手の時間外労働時間の上限規制などさまざまな課題に直面しています。上市後、たくさんの反響をいただき、物流業界の皆さまの負担軽減につながる本開発の意義は、開発当初と比較しても、より高くなっていることを感じています。今後も、私たちは将来を見据えた製品開発を通じ、社会に貢献してまいります。
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DPFは定期的な点検・清掃が必要で、残存する金属灰分を燃焼させる「再生」処理をすることで、フィルターの性能を保持します。走行条件によっては自動再生では再生が完了しない場合があり、手動での再生を実施する必要が生じます。手動再生は30分程度車両を停止させて行う必要があります。
【参考】
2022年8月29日付
業界初、商用ディーゼルエンジン車のDPFを“超寿命化”する無リン無灰オイル「idemitsu AshFree」を新開発
2023年4月27日付
「業界初のJASO DH-2規格性能を有する金属非含有のディーゼルエンジン油の開発」が第73回自動車技術会賞「技術開発賞」を受賞
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