出光の精神的定款を忘れるな


43年度新入社員教育 千葉製油所タンク上

(出典:『我が六十年間』Ⅲ巻 1001~1007頁)

今日、こういう会をどうして開いたかというと、これは君らが出光というものをわからなくなってきているからだ。このままほうっておいたら、出光はただ石油業をやっている会社になって、出光の本体はなくなってしまう。君らは石油業しかやっていないのだ。このままいけば私一代で、あるいは出光というものはなくなるかもしれない。出光石油会社というものは残るかもしれないが、出光というものはなくなるということだ。
それはどういうことかというと、出光には定款が二つある。
第一の定款は法律上の定款であって、現在君らがやっている石油業である。
第二の定款は出光では精神的定款といっておるが、人間が真に働く姿をあらわして国家社会に示唆を与えることである。今ならば、世界に示唆を与えるということなのだ。このことは石油業じゃない。人間のあり方だ。そして、それがなくなりつつあるということだ。(中略)

君らの質問の中に、「出光は今後、社会の情勢に乗っていかなければいけない」というのがあるが、そんな馬鹿なことをいつ私が言ったか。社会を引っぱっていけ、国家社会に示唆を与えよとは言ったが、社会の情勢に乗っていけというようなことは、私が一番戒めていることなんだ。これは堕落せよということだ。(中略)
石油業をやれと、いつ私が言ったか。石油業という小さいことをやってさえも、こんなに強くできるということを見せる手段なのだ。人がしっかりしておれば、石油業でもこうなるということを見せる手段なのだ。(中略)他のものに引きずられるな、他のものを活用せよということなのだ。君らは帰ってすぐに勉強会を始めなさい。勉強もせずに、順調な出光の形にのっかって、ボーッとしているようでは、世界を動かすようなことはできない。

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