利潤と事業の社会性は対立しない


輸入石油ポスター

(出典:「働く人の資本主義」147~149頁)

私の利潤についての考えはこうです。人間はお互いに助けあわなければならない。ところが人を助けるためにはまず自分の力を養成することが先決でしょう。企業であれば、その力を養成するために利潤をあげなければならないということなんです。しかし、その利益を得るために人を害してはなんにもなりませんよ。先に人を害しておいて、あとで助けるということはないですよ。たとえば、金の力によって買い占めや売り惜しみをやり、消費者に迷惑をかけて、儲けた金で人を助けるなんて意味ありませんからね。
まず、自分が努力して合理的に働き、またいろいろな見通しや計画なんかもうまくやって、人に迷惑をかけないで利益をあげて自力を達成する。その力で人のためにも尽くすというのが、互譲互助のあり方だと思いますね。世間では利潤の追求というが、この追求などという言葉がいかんと思うんです。利潤は尊重しなければならないが、人間がその奴隷になってはいけませんよ。(中略)
企業の社会性を実行しながら、自力を養成するために得るものが利潤であり、自力をつけてまた社会性を実行するということですから、私は社会性に反するような利潤を考えたことはありません。
前にもお話したように、出光は、内池先生の生産者と消費者の間にただ一つ介在して、両者のためにつくすという教えから出発しています。出光の事業の社会性とは、消費者にいいものを安く提供する。いかなる場合にも、石油は私どもにまかしておいてください。けっしてご心配はかけませんという供給の安定にある。これがほんとうの社会性だと思うんです。その社会性を実行するためには、自分が放漫な経営をやっておっては駄目であるから、真剣に真面目に努力して利潤を得なければならない。私は利潤と社会性は対立しないと思いますよ。

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