世界に示唆を与える


天津支店内

(出典:1966年刊『マルクスが日本に生まれていたら』213~214頁)

質問
日本人の和の道が、日本の、さらに世界の檜舞台に迎えられて、多くの人々の共感と理解を得るためには、どうしたらよいと思われますか。

出光
次にわれわれ出光のことだが、日本人出光が創業以来五十五年間、ただ日本人としての道を忠実に歩いた結果、資本主義・社会主義・共産主義のいずれの主義にもとらわれず、四十年前にその長短を取捨選択して、仲の良い、力強い形をつくりあげているということは、これはもう非常に貴重なことだと思うね。
ということは、出光は、小さいながらも、こうすれば愛によって平和に仲良く力強くいけますよ、という呼吸を会得して、その実態を持っているわけだからね。

そこで、われわれとしては、この実体・体験をもって、日本人および世界の人々に平和と福祉のあり方について示唆を与えなければならない、と思うんだ。かねがねぼくは、出光では石油業は手段にすぎないと言って聞かせているが、出光の真の目標は、この示唆を与えるということなんだ。
この言葉は、君たちも知っているように、戦時中、軍と一部の官吏が人間を無視して組織倒れのことばかりやったのに対して、人間中心の出光の生き方をもって、国家・社会に示唆を与えよと言ったんだが、今はもう国家・社会というよりも、世界の平和と福祉のあり方に示唆を与えるというふうに、われわれの示唆のあり方も躍進してきていると思うんだ。
君たち若い人が、そういう自覚をもって、石油業という手段をとおして、この尊い仕事を実現していってもらいたいというのが、ぼくの希望だ。

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