種々の方針や手段は、人間尊重から派生的に出てくる

小なりといえども出光商会は創業当時より理想をもち、主義を立ててきたのであります。

今日となって商売にもそれが真の行き方であったと思われる。
人間がつくった社会である、人間が中心であって、人間を尊重し自己を尊重するのは当然すぎるほど当然である。

種々の方針や手段はこれから派生的に出てくるのである。

人間尊重は、人材の養成となり、努力主義となり、家族主義となり、温情主義となり、拝金思想の排斥となる。
営業の方針も、投機の排除となり、実力主義となり、実行主義となるのであります。

過去において黄金の力は人情の弱点に乗じて金力万能の時代を招来したのでありました。
私共は人間としてこれに対抗し苦闘して来たのであります。
今や世界は一大転回をなしつつあるのであります。
次に人情の弱点を突くものは数学的理論であり、理屈万能の時代であり、理屈倒れの世の中であり、人間が理屈に使われる時代で あるかも知れない。
人間としてわれわれは理屈に挑戦して、人が理屈を支配するの本体に引き戻さねばならぬかも知れない。
人間の社会であり政治であり教育であり文化であり思想であり経済である以上、これらの中に強く人情の長所美点を織り込んだる時にこれらは永久性を与えらるるのである。
同時に人情の短所弱点を発揮したる時にまた永久性を失うのである。大衆は力足らずして人情の弱点に陥り易い、金に屈し或は理論に使われるような弊害を醸し易いのであります。
われわれは永久に人間万能の時代醸成のため奮闘を続けねばならないだけの覚悟を要すると思うのであります。
かくして初めて人生に意義あり生き甲斐ある所以であります。
世俗に超然として衆愚を中心に引き戻さんとする無欲垢衣の名僧智識の心境もかくして窺知せらるるのであります。

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