1分でわかる「e-メタノール」が広げる未来の可能性

脱炭素社会の実現に向けた取り組みの中で、Idemitsuは「e-メタノール」の製造・供給に挑戦しています。二酸化炭素を「出さない」「減らす」取り組みが多い中で、「e-メタノール」は二酸化炭素を原料として使う、いわば夢のような次世代燃料なのです。
まだあまり知られてない「e-メタノール」を、わかりやすく解説します。

Q1. 今、注目されているe-メタノールとは? どのように作るの?

A. e-メタノールとは、二酸化炭素(CO₂)と再生可能エネルギー由来の水素(H₂)を合成して得られる低炭素エネルギーのこと

e‐メタノールとe-fuel、合成燃料の違いとは? e‐メタノールの製造方法
e‐メタノールとe-fuel、合成燃料の違いとは? e‐メタノールの製造方法
e‐メタノールとe-fuel、合成燃料の違いとは?
e‐メタノールの製造方法

e-メタノールは合成燃料の一種で、再生可能エネルギーによって得られた電力で水を分解し生成されたH₂(グリーン水素)と、大気中などから回収したCO₂を合成した液体燃料です。再生可能エネルギー由来のH₂を原料とする合成燃料は「e-fuel」と呼ばれ、e-メタノールのほかにe-ガソリンやe-SAFなどがあります。
従来のメタノールは天然ガスを原料として製造されるため、化石燃料を使わずに製造されるe-メタノールへの期待がより高まっています。

●e-メタノールは、CO₂を循環させる燃料

Idemitsuが取り組む「e‐メタノール」のカーボンリサイクル
Idemitsuが取り組む「e‐メタノール」のカーボンリサイクル
Idemitsuが取り組む「e‐メタノール」のカーボンリサイクル

e-メタノールをはじめとした合成燃料は、燃料として使われたときにCO₂を排出します。ですが、原料として再生可能エネルギー由来の電力により生成されたH₂と、大気中などから回収したCO₂を使用するため、大気中のCO₂をほとんど増やしません。そのため、脱炭素の実現に大きく貢献するエネルギーとして注目されています。

Q2. e-メタノールの需要の高まりと今後の展望は?

A. メタノール全体の需要が高まる中で、e-メタノールの生産能力の拡大が期待されています

国際海運によるCO₂の排出量は国際航空よりも多く、2020年時点でドイツ一カ国分の排出量に相当するとの報告があります。コンテナ船などを中心に液化天然ガスから、よりCO₂排出量の少ないメタノールへの燃料の置き換えが進んでおり、2023年7月には、シンガポールにて初となるバイオメタノール燃料の供給が実施されました。

e-メタノールの生産能力の予測
e-メタノールの生産能力の予測
e-メタノールの生産能力の予測

メタノールの中でも化石燃料を使わずに製造されるグリーンメタノール※1への期待はさらに高まっており、今後5年間で世界的な生産能力は拡大される見込みです。

  • 1. グリーンメタノール:化石燃料を使わずに製造されるe-メタノールとバイオメタノールの総称。

Q3. e-メタノールを導入するメリットは?

A. e-メタノールには環境への配慮に加え、汎用性の高さやインフラの転用が可能というメリットもあります

●改質すればその他の燃料にもできる、汎用性の高さ

e-メタノールの汎用性
e-メタノールの汎用性
e-メタノールの汎用性

e-メタノールは船舶燃料としてそのまま使えるだけでなく、e-メタノールを原料としてジェット燃料やガソリン、化学原料などを製造して使うことができます。そのため、海運業界のみならず、多くのセクターの脱炭素に寄与することできます。

●既存のインフラを活用できるため、コストを抑えやすい

次世代燃料の普及には、コストが課題として立ちはだかります。e-メタノールは常温・常圧下で液体として取り扱うことができるため貯蔵・運搬が容易であり、既存のメタノール用のタンクやパイプラインといったインフラをそのまま活用することができます。コストを抑えやすいことはもちろん、市場への導入がスムーズであることも、e-メタノールの普及が強く期待される理由です。

Q4. e-メタノールの社会実装に向けた今後の展開とIdemitsuが生かせる強みは?

A. HIFグローバル社にJOGMECと共同で出資を行い、サプライチェーンの構築に向けた取り組みを加速させます

●Idemitsuの強みとは?

e-メタノールのみならず、e-ガソリンやe-SAFを市場で導入するにあたっては、当社が燃料油事業で培ってきた液体燃料や内燃機関に関する技術・知見を生かすことができます。また、次世代燃料の課題としてコストが挙げられますが、輸送や貯蔵、供給に必要なタンクやパイプラインは、当社が保有する既存の設備を活用することができます。

●今後の展開は?

2020年代後半をターゲットとして、HIFグローバル社※2の海外プロジェクトからe-メタノールもしくは合成燃料の調達を開始することを検討しています。さらに、2024年5月に実施したHIF社への出資を通じて海外拠点でのe-メタノールと合成燃料の製造・開発を推進し、並行してHIF社が保有する製造プロジェクトにおける知見・ノウハウを獲得します。
2024年8月にHIF社への出資がJOGMEC(独立行政法人・金属鉱物資源機構)との共同体制に切り替わり、政府機関との連携をより深めながらe-メタノールや合成燃料の市場形成・導入を加速させています。また、HIF社からの海外調達だけでなく、北海道での製造も併せて検討しており、e-メタノールについては2035年に国内外の拠点において50万トン規模の供給体制を構築することを目指しています。

  • 2. HIFグローバル社:低コストの再生可能エネルギーをベースに、水素を既存のインフラで輸送・利用可能な合成燃料に変換するプロジェクトを推進する、世界有数の企業。

Idemitsuが目指す2050年とアクション

合成燃料をはじめ、SAFやアンモニア、水素といった一歩先のエネルギーへのIdemitsuの挑戦をご紹介しています。