企画展「Idemitsu Art Award アーティスト・セレクション 2026」

「Idemitsu Art Award アーティスト・セレクション2026」は、Idemitsu Art Awardの受賞・入選後も作家を継続的に支援することを目的とした企画展です。
「Idemitsu Art Award 2025」の審査員が選出した若手作家2名の新作・近作を、12月に開催する「Idemitsu Art Award 展 2026」の展示会場内に展示します。15回目となる今回は、田中 秀介氏、古山 結氏、の2名を選出しました。

中村 史子審査員推薦作家・田中 秀介(Shusuke Tanaka)

中村 史子審査員推薦作家・田中 秀介(Shusuke Tanaka)

経歴

出身地 和歌山県
2009年 大阪芸術大学 美術学科 油画コース 卒業

展覧会

2020年 「なつやすみの美術館 10:あまたの先日ひしめいて今日 」(和歌山/和歌山県立近代美術館)
2021年 「停滞フィールド2020→2021」(東京/トーキョーアーツアンドスペース本郷)
2022年 個展「田中秀介展 絵をくぐる大阪市立自然史博物館」(大阪/大阪市立自然史博物館)
2023年 「VOCA展2023 現代美術の展望-新しい平面の作家たち-」(東京/上野の森美術館)
2024年 個展「有様のほぐしくらべ」(東京/LEESAYA)
2025年 個展「When unrestrained light and an unmoved past mingle」(韓国・ソウル/POST Gallery)
2026年 個展「とどまれよ風の花」by LEESAYA(東京/CADAN大手町)

受賞等

2014年 シェル美術賞2014 木ノ下智恵子入選
2018年 はるひ絵画トリエンナーレ 準大賞 受賞
2023年 令和5年度 咲くやこの花賞 受賞
2024年 令和6年度和歌山県文化奨励賞 受賞

参考作品「そろりと彩浸り」

参考作品「そろりと彩浸り」

技法:キャンバスに油彩
60.7×72.8cm

作品・制作について

日々、あらゆる物事に思いを馳せたり、考えたり、持て余したりする中、とある対象とでくわした途端、心が強く揺さぶられる。その対象は人や物、環境など多岐に渡るがそれらは非現実的なものではない。それは取るに足らない物 事であったりして、私がそれを勝手に特別な物事として受け取ったまでである。なぜその様に受け取ったのか、それは何かの示唆か、喜びや悲しみなどの感情の起伏か、違和感か、何を起因とするものかその時点では知る由も無い。ただその瞬間、心を揺さぶられてはその対象を描きたくなる。私にとって描くことは、その対象との接近をより可能なものにし、その対象から何を感じ得えていたかを明るみにする術である。その対象を描くことは、そのまま現実を描ききることではない。私が目にし、その時得た体感に基づいて現実を歪曲させながら捉え直し、解釈を与える。その結果物が絵となる。

中村審査員 推薦コメント

近代俳句の巨人、高浜虚子は「客観写生」を提唱した。主観を排し客観的に事物と向き合うということだ。しかし、人が作る以上主観は排除できないし、眼前の対象を17文字で写生する過程で大きな変換は免れない。おそらく虚子は、己の主観にむやみにとらわれず、眼前の対象こそをいかに捉えるか思考を巡らすなかで、ありふれた事物を詠んだとしてもその対象を超えた存在が立ち上がると唱えたのではないか。
田中秀介の絵画も同様である。田中は日々の暮らしの中で出会った物や人、風景をそのまま描いている。その多くは彼が暮らす大阪の市中にあるものだ。けれどもそうでありながら、その絵はどこか異様な印象をもたらす。日常的な風景を覆う膜が一枚剥がれた景色とでも言おうか。そして、目にしたものを、絵筆を使って画布に定着させるという行為、それ自体のただごとでなさも、また浮かび上がるのである。

鈴木 俊晴審査員推薦作家・古山 結(Furuyama Yui)

鈴木 俊晴審査員推薦作家・古山 結(Furuyama Yui)

(撮影:小黒由実)

経歴

出身地 愛知県
2016年 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻 卒業
2018年 同大学大学院修士課程美術研究科絵画専攻日本画領域 修了
2021年 同大学大学院 美術研究科博士後期課程 修了 博士号(美術)取得

展覧会

2022年 個展「近接遠眺」(東京/CLEAR GALLERY TOKYO)
「新・今日の作家展2022世界をとりとめる古山結・小林達也・大崎清夏」(神奈川/横浜市民ギャラリー)
2023年 個展「離散の円」(東京/Taku Sometani Gallery)
古山 結・吉田 愛 二人展《集まって引く》(神奈川/Gallery Pictor)
2024年 個展「日々の死角」(東京/twililight)
第18回 灯籠絵展示会「ひじおりの灯」灯篭絵制作
2026年 個展「冬日の浮遊」(東京/TS4312)

受賞等

2022年 「絵画の筑波賞」展 2022 優秀賞 受賞
2023年 Idemitsu Art Award 2023 正路佐知子審査員賞(東京国立新美術館) 受賞
2024年 第12回「郷さくら美術館 桜花賞」展 奨励賞 受賞

参考作品「粒・あめ・つぶ」

参考作品「粒・あめ・つぶ」

技法:木製パネル・木材・μグラウンド・岩絵具・膠
17.9×24×3cm

作品・制作について

私にとって制作は、言葉を書くことに似ています。
加えて最近は、よくよく探ることでもあるなと思っています。

出来上がった作品は、「物っぽい」と感じていて、それが何故なのか長い間分からなかったのですが、近頃「入れ物」なのかなと、思うようになりました。良い入れ物ができたらいいなと思います。

鈴木審査員 推薦コメント

けずったり、やすったり。付け加えてみたり、外してみたり。中身をつくったり、器をつくったり。絵画の実験はもうやりつくされているような、なんだかもう可能性がないように思えてしまうときもあるけれど、いつだって、はたしてそうなんだろうかとも思う。伝統的な日本画を学んできた古山さんの作品は、しかし大上段に構えるのではなく、とりあえずやってみる、というような感触がある。それと同時に、というか、それでもなお、というべきか、そうしたときに絵画がどういったイメージを保持することができるか、少なくとも古山さんの絵がそこに何を保つことができるか、それはやはり切実な問題としてあるようだ。未だ定まりきっていない、手探りの、軽やかでも、切実でもある、そういう絵。