一般部門 金賞 「視線」 / 宮道 成彦

沿岸域に1000万人が暮らす大阪湾。そこに造られた人工ビーチがクサフグたちの産卵場所になった。波間から人工の砂浜に身を投げ出し、懸命に次の世代を残そうとするその厳しい視線は迫りくる敵を常に見つめている。一方、すがるような視線のクサフグの口元には、釣針がしっかりと食い込んでいた。釣りでは「外道」。針を残されたまま海へ放たれたのだろうか。ぼくらを見つめる2つの視線。自然界においても「目は口ほどに物を言う」。

「○」の写真は、自然の持つたくましさをくっきりと写し撮った一枚。魚たちの必死な表情からは生命の尊厳さえも感じられます。一方、「×」の写真は人の外道な行いにより、その尊厳が踏みにじられてしまったことを告発した一枚。何ともうらめしそうな目付きが見る者の心に刺さります。どちらの写真も、なによりシャッターチャンスの勝利といえるでしょう。対象物に肉薄し、その一瞬の視線をとらえた2枚の写真を凝視していると、こちらが見ているのか、見られているのか、複雑な心境に駆られます。人はその欲望を満たすために自然を犠牲にしているのではないか。そんな魚たちの問いかけが聞こえてきそうな作品です。
一般部門 銀賞 「瑞穂の国の赤き怪物」 / 林 信介

古代より連綿と受け継がれてきたわが国の稲作文化。近くの実習田では小学生が体験学習の一環として田植え実習をしていました。数日後、同じ水田に足を運んでみると稲には案の定、毒々しい色や形をしたジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)の卵がびっしりと産み付けられていました。最初に放ったものが今では爆発的に増殖し、この怪物を見かけない田はありません。子供たちに美しい文化を継承するためにも早急な根絶が期待されます。

稲の若苗を食害するスクミリンゴガイ、通称ジャンボタニシの被害が九州を中心に関東以西で広がっています。もともとは食用として輸入されたものの需要もなく、廃棄されて野生化。毒々しいほどの色と形に思わずぎょっとする卵は、タイトル通りまさに赤き怪物です。外来種問題は人の浅はかな行為がもたらした人災だからこそ、人の意識が変
わることで防げるはず。今後も本コンテストを通して警鐘を鳴らし続けたいと考えています。
一般部門 銅賞 「二度ともどらない」 / 丸山 潔高

安曇野には、桜の名所が多く、残雪の北アルプスを背景にした満開の桜は、安曇野を代表する風景になっています。しかし、突如として有名な桜の木々が切られてしまったのです。あの素晴らしい風景は、二度ともどりません。安曇野を代表する風景を未来に残していくことは、安曇野に住む人間の義務だと切に感じました。身近かな環境を大切にできる心を育てていくことが、環境教育には必要だと思いました。

4月に咲き誇った桜の木が、その年の11月にはあっさり伐採されてしまったことに強い憤りを感じずにはいられません。葉っぱが落ちるからという理由で街路樹が切られてしまうなど、日本全国ではよくみられる光景とのことですが、こうしたことが当たり前に行われていることに違和感をおぼえる人もけっして少なくないはず。「二度ともどらない」というタイトルに込められた作者の無念な思いが胸に迫る作品です。
一般部門 枝廣淳子審査員賞 「原始林永遠に」 / 長 吉秀

阿蘇一帯、この地区は湧水が沢山あり名水の宝庫です。それには、森林の役目が大変重要で、その中でも特に、阿蘇北向谷原始林の森は、大変素晴らしく荘厳に見えます。また、森林はダムの働きもしているそうです。一方、見た目は大変美しいのですが、元からあった木は全山切り倒しツツジを植え、観光にはいいのですが、最近よく耳にするゲリラ豪雨には、ツツジの山は耐えきれるか心配です。

×の写真も見た目には美しい風景です。もしかしたら、山肌を飾るツツジは見慣れた緑の森よりもきれいに見えるかもしれません。でも、その根を地中深く張って、緑のダムといわれるほどの保水力で、大雨が降っても洪水が起きないよう防ぐ役割を果たしている原生林と同じ役割を、木を切り倒した後に植えたツツジに果たせるのでしょうか。目に見える美しさだけではなく、目に見えない大事な役割をしっかり考えさせてくれる作品です。
一般部門 北山孝雄審査員賞 「水田を守ろう!」 / くのぎ 隆雄

水田は食料生産のみならず、洪水の防止や地下水のかん養などの機能をもち、さらに、水生動物、昆虫、鳥たちにとっては貴重な生息環境になっています。しかし、休耕や耕作放棄をすれば、水田固有の土壌、生態系に変化を与え、これを元の状態に戻すには相当の労力を要することになります。人の生活にも、生き物にとっても大切な水辺環境である水田を何とか保全していきたいものです。

水田を守ることは日本のいのちを守ること。そんな作者の思いが伝わってくる作品です。水田風景は日本の資産、見ているだけでも美しいのですが、近くを散策すると、太陽の光や風のかおりを体で感じることができ、私たちの心は豊になります。この日本を象徴する風景をいつまでも守ることが、私たち日本人の誇りではないでしょうか。
一般部門 木元教子審査員賞 「故郷の景色」 / 城所 真樹

山の景観が美しい、私の故郷愛知県新城市。○の写真は新城市の名勝四谷の千枚田。×の写真はそんな私の故郷にも通る事になった高速道路の建築現場。日本はこの狭い島国に一体いくつの道路を作れば気が済むのだろう。一度壊した自然はなかなか元に戻らないのに。なぜかお地蔵さんの顔が怒っているように見えるのは、私だけだろうか。

「ふるさと」という言葉の響きに、「兎追いしかの山」という歌が、自然に心でリフレインします。千枚田の向こうに見える山なみは、「夢がいつもめぐる」山でしょうか。それなのに、お地蔵さんやご先祖が静かに眠るお墓の向こうに、高速道路の建築現場。どう考えても、似合わない。作者の言葉にあるように、今の日本にとって、それは、どうしても必要なモノなのか。「発展と調和」をもう一度考えたいですね。
一般部門 高砂淳二審査員賞 「節電の夏」 / 東 一幸

毎年、夏になるとエアコンは無くてはならない必需品。一家に1台は当たり前。子供部屋や寝室など部屋ごとに設置し、一度に数台も稼動させている家庭も多いはず…‥。今年3月、東日本を襲った未曽有の大震災後の原発の問題が取り沙汰され「節電」を呼びかけられたことをきっかけに我が家でもエアコンは1台だけにし使用する時間を決めたり設定温度を上げたりしています。また、扇風機やうちわを利用するように心がけています。

×の写真は、びっしりと見事に並んだエアコンの室外機。色もくすんでいかにもヒートアイランド現象の発信源のような光景。一方○の写真は、窓を開け放した部屋で団扇を使う幸せそうな表情の男性。向こうには茅葺屋根の家があって、手前にはスイカまで見えている。対照的な絵柄の向こうに、ここまで物質が豊かになった今、何が本当の幸せなのか、という答えも見え隠れするような、面白い作品です。
一般部門 優秀賞 「錨に怒り」 / 古菅 正道

沖縄のサンゴは、13年前、高水温の影響で大きなダメージを受けました。しかし、現在はかなり回復して来ていて、それを見せるシュノーケリングツアーも盛んです。ようやく復活してきたサンゴ、そのサンゴを見せる船が、サンゴを傷つけています。船を泊めるためにはイカリは必要と思う人も居るかも知れませんが、少しの手間と費用を掛けて、ブイを設置すればイカリを投げ込まなくて済むのです。
一般部門 優秀賞 「豪雨のあと」 / 日下 仁司

いずれも普段は美しい水面の海ですが、去年の夏、ゲリラ豪雨ともいえる強い雨で神戸側から流れ出た泥水が、明石海峡の真ん中まで広がって海を二色に分けました。地球温暖化の影響を受けたゲリラ豪雨、また、都市開発で保水力のある山林、里山が少なくなり、雨水が大地にとどまらずに一気に流れ出したせいでしょうか。林業の衰退で山林、里山の荒廃が進みます。改めて里山整備や山林保全を考えさせられます。
一般部門 優秀賞 「「お花見」(No.2)」 / 秋田 寿美

桜の咲く頃、ライトアップされた大阪城西の丸庭園では、夜桜見物で賑わいます。満開の桜のもと、気のあった仲間とすごすひとときは本当に楽しいものです。しかし、宴の後は困った忘れ物があちこちにみられ、翌朝の清掃員の苦労がしのばれます。
一般部門 優秀賞 「素敵なウォーターフロント」 / 平野 昌子

横浜みなとみらいのウォーターフロントは、素敵にデザインされています。シーズンになるとビル群や海を背景に結婚式をあげるカップルをよくみかけます。しかし、海の片隅を見ると、どこから流れてきたのかゴミが浮いている時があります。ゴミの内容から見て、近くで捨てられた物ではないようです。海は一つに繋がっています。一人一人の環境に対する意識が世界の海を守っていく事だと感じました。
一般部門 優秀賞 「変貌する農地」 / 北川 孝

今農業は、営農者の高齢化・後継者不足等により、農業離れが進行し耕地放棄地が年々増え、大きく変わりつつある。○写真は、労働条件の劣悪な谷地田の田植え風景である。老農婦が地域農業を守るため、頑張っている姿には大きなエールを送りたい。×写真は、以前固場整備された平野部の水田であり、労働条件も良く、高い生産性が見込める地域であるのに、何らかの事由により荒廃してしまった。
一般部門 優秀賞 「白の海・赤の海」 / 濱本 秀雄

私の住む町は半島のくびれた所に位置し、高台からは東の海と西の海の両方を見渡すことができます。どちらの海でも魚の養殖が行なわれているのですが年に数回は赤潮に見舞われることがあります。時には、風向きや潮の流れによって○と×が入れ換わることもあります。近くには海のお花畑といわれる海中公園があり熱帯魚が泳ぎ、サンゴの群生が見られる町でもあります。これ以上の海の汚染は何としてでも食止めなくてはなりません。
一般部門 優秀賞 「棚田の現状、でも…」 / 藤井 克己

棚田百選に選ばれている田圃も、オーナー制度の活用で耕作放棄地も減少している。でも現実は厳しく、荒れかけた棚田も見られるようになった。霊峰の里、忍野村では毎年家族総出で田植えが始ります。背景に富士山の頂が見れる情景、でも農業に携わる人々の高齢化が進む中で、心のふるさとがいつまでも残る環境を大切にしていかなければなりません。
一般部門 優秀賞 「足尾の山に緑を再び…」 / 北山 建穂

日光市足尾町の松木地区には、足尾銅山の製錬所からの煙害や山火事などにより、緑を失った山肌が荒涼と続いております。緑化活動が行われている今でも、まだ緑は完全には戻らず、元の山々の姿に戻すのにはあと百年とも二百年とも言われております。×の写真は、「日本のグランドキャニオン」とも呼ばれている場所です。ここにはかつて豊かな村がありました。○の写真は、NPO団体が主として実施している植樹活動の写真です。