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金賞 | 仙波 浩司 | 廃船の行方![]() | |||||||||||||||
銀賞 | 伊藤 達夫 | 郷愁の水辺![]() | |||||||||||||||
銅賞 | 東 一幸 | 上機嫌・不機嫌![]() |
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枝廣淳子審査員賞 | 原澤 宏 | 大きく豊かに![]() |
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織作峰子審査員賞 | 長瀬 芳伸 | これで十分![]() |
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北山孝雄審査員賞 | 高 詩熠 | 川から聞こえてきますか?![]() |
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木元教子審査員賞 | 平野 昌子 | 規格品![]() |
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竹内敏信審査員賞 | 古菅 正道 | 一本珊瑚![]() |
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新美春之審査員賞 | 進藤 直樹 | あくびができなくなる日![]() |
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ブラザー工業株式会社賞 | 柴田 元成 | 想う!!源氏物語![]() |
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三菱UFJニコス株式会社賞 | 糸魚川 恵子 | 省エネとエコ![]() |
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優秀賞 |
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一般部門 金賞 「廃船の行方」 / 仙波 浩司

○×ともに夕暮れの写真だが、現役として大切に利用される船と廃船となって何年、いや何十年も山積みされる船との大きな違いがある。リサイクルされるなら良い事であるが、錆びてボロボロになるまで放置され、管理者がいなくなりはしないのだろうか?不景気の折、そんな危惧も感じる。ゴミとして積まれるのではなく、資源として宝の山になって欲しい。西日に照らされた廃船たちから声にならない声が聞こえてきそうです。

近年、日本各地で問題となっている廃船処理を取り上げた作品。戦後、わが国が享受した繁栄は、こうした物の過剰を原因とした数々の問題を生み出しています。しかし、現状ではまだ廃船に代表されるような過剰物を完全に取り除くための法律は存在していません。本作品に金賞を授与することでこうした問題の解決に少しでも寄与できたらというのが審査員一同の真摯な願い。美しい日本の風景を取り戻すためには早急な法整備が必要だということを、改めて思いました。作者は昨年度の優秀賞に続いての連続受賞。表現の質も撮影技術も格段にアップし、特に斜陽を感じさせる絵作りは金賞に値するクオリティを有しています。
一般部門 銀賞 「郷愁の水辺」 / 伊藤 達夫

画題「郷愁の水辺」昔かし農家が忙しくなる頃田んぼの水も温みオタマジャクシは最高の遊び相手だった。掬っては放し日の沈むまで遊んだものだ、明日は手も足も出るかなと案じながら。卋は平成⇔人知と効率の凌き相の農法も近代化朝靄を裂いて農薬散布ヘリが舞う。整理された水田では小動物の影が絶えて久しい。沢の奥の狭い水田の隅で彼らは懸命に生きて居た小さな命と人間の命のバランスを叶える方程式はいつ誰が解く。そして時間?

ある県でよく聞く話によると、農薬の空中散布をした次の日から昨晩まではあれほどいた蛍がまったくいなくなるといいます。「○」の写真のオタマジャクシも同様に、農薬にさらされたとしたらやはり命はないでしょう。現代の農業はそれほどの犠牲を生物に強いているのです。そして、そこで採れた作物が私たちの食卓にやってきているのです。この作品はあまり一般には知られていない現代農業のありのままの姿を伝えてくれます。
一般部門 銅賞 「上機嫌・不機嫌」 / 東 一幸

私の住む町には「お猿」で有名な高崎山自然動物園があります。この山の中にも環境のいい所、悪い所があります。「○」の写真は美しい別府湾を背景に撮影しました。この写真、実は猿がアクビをした瞬間を撮影したのですが猿もきれいな環境だと自然に笑顔になるのかもしれません。一方「×」の写真は、古タイヤに囲まれいかにも不快そうな顔の猿を撮影しました。それぞれ一瞬の猿の顔ではありますがタイトルの「上機嫌・不機嫌」に見えれば幸いです。

「○」と「×」ともに、とてもドラマ性を感じさせます。特に「×」の写真の不機嫌そうな表情の猿(たぶん母猿でしょう)は、古タイヤに囲まれて何を感じているのか、見る人によってさまざまなイメージがふくらむはず。動物を象徴的に扱った作品としてはこれまでにない出色の出来映えだと思います。一瞬のシャッターチャンスを逃さず撮影した作者のカメラマンとしての腕にも敬意を表し、今回の受賞となりました。
一般部門 枝廣淳子審査員賞 「大きく豊かに」 / 原澤 宏

花粉症の人にとって杉の存在は、やっかいであろう。でも、杉の緑は生活を落ち着かせてくれる。伐採した木材は私たちの住居になるなど、杉は古来から私たちの生活と密接に関係している。杉を活用し豊かな「山」を復活してほしいものである。

日本は国土の67%が森林でありながら、森の手入れができず、山が荒れています。荒れた山は土砂崩れを起こし、水や空気を浄化する大事な役割も果たせなくなってしまいます。森林を守ることは私たち自身を守ることでもあるのです。そのためには、伐りっぱなしではなく、苗木を植え、手入れをしていくことです。そして、すくすくと伸びていく木の自然の恵みを、私たちの暮らしの中で活かしていくこと。この力強さと美しさを伝えてくれる写真です。
一般部門 織作峰子審査員賞 「これで十分」 / 長瀬 芳伸

地方には使われなくなって大分経つのに、解体もされずに残った建物が結構あります。土地代より解体の費用が高くつく場所もあり、企業倒産だとどうにもならない事も。今後、過疎地ではこのような現象が多くなるのでしょう。それに比べ、日高本線の無人駅。北海道なので雪と寒さを凌ぐ駅舎は絶対必要ですが、それらを満たし、かわいいし、何より電車のリサイクルなのがいいですね。こんな楽しい光景がもっと増えればいいですね。

私自身地方を旅していて残念に感じることの一つが、廃屋が放置されている事です。後始末は、建てた者の義務だと思います。このような見苦しい建物が、観光地や温泉地に残骸として残る姿は腹立たしく思います。かわって、駅は廃車を利用して小奇麗な姿で住民たちの役に立っている事、手入れをきちっとすれば、廃棄物が活きるという証です。私たちはもっと物を大切にする心を持たなければならない、と教えてくれる作品です。写真も青空を沢山取り入れ、廃屋とのコントラストが出てとても良いと思います。
一般部門 北山孝雄審査員賞 「川から聞こえてきますか?」 / 高 詩熠

川、子供にとっては夏の大好きな遊び場。生物観察や水遊び、いろんな遊びをできる場所です。日本一の清流―四万十川では、きっと子供たちの心にいっぱい楽しい思い出が残っています。一方、魚にとっては川は生きる環境です。空気みたいな大事な存在です。そこを汚しちゃいけないです。水草から見ると、かなり年月が経っているようです。魚料理を愛する日本人、すこしでも魚の気持ちで考えてみませんか?

人間の生命の源、水。
川に捨てられた自転車。使われている時は、様々な喜びと思い出を運んだはずの道具が、無残にも川に投げ込まれています。水が泣いています。子供たちの笑い声とは、対照的な泣き声が聞こえてきます。見過ごしてきた自分たちの身近な事から、笑顔がはじける美しい街にしたいものです。
川に捨てられた自転車。使われている時は、様々な喜びと思い出を運んだはずの道具が、無残にも川に投げ込まれています。水が泣いています。子供たちの笑い声とは、対照的な泣き声が聞こえてきます。見過ごしてきた自分たちの身近な事から、笑顔がはじける美しい街にしたいものです。
一般部門 木元教子審査員賞 「規格品」 / 平野 昌子

神奈川県三浦海岸の冬の風物詩は、三浦大根の天日干しです。海岸には、形や大きさのそろった真白の大根が並びます。(○の写真)しかし一方では、大きさが合わない大根や形の悪い大根は、規格外として捨てられてしまいます。(×の写真)私たち消費者は、見た目の良し悪しだけではなく、味や栄養分といった食品の本質に目を向ける必要があると強く感じました。

三浦大根の天日干し。波の音を聞き、風に身を縮め、冬の日射しを浴びてお漬け物になる日を待っています。日本のあちこちで見られる、冬の風物詩。でもこれは規格品。選ばれた大根だけのステージなのですね。 一方で、規格外だからと差別され、不要物として捨てられる大根。今まで同じ畑で仲良く育っていたのに。中味だって同じおいしい大根なのに。こんな「規格品偏重思考」は人の世界にだって…。と考えてしまう作品です。
一般部門 竹内敏信審査員賞 「一本珊瑚」 / 古菅 正道

海の中、白い砂地にポツンと立っているこの珊瑚は一本珊瑚と呼ばれていました。水納島の海の象徴的な存在で、皆に大切にされて来た一本珊瑚でしたが、わずか数日目を離した隙に、オニヒトデに食べられてしまいました。オニヒトデがサンゴを食べるのは、自然な事で全然×な写真では無いと言う人もいると思いますが、その海域のサンゴが全滅するような数で発生するのはやっぱり×で、原因は人間が作っていると私は思います。

きれいな海の中で起こっている、見過ごせない現実を捉えています。美しい珊瑚が斯様に壊されていく現象を捉え、訴えている点が評価されます。写真の持つ力を、このような形で十分に表現できているという点が、とても喜ばしいことです。映像の持つ価値を、如実に強いメッセージとして発信している作品です。
一般部門 新美春之審査員賞 「あくびができなくなる日」 / 進藤 直樹

草むらで一匹のキツネを見つけました。あくびをしたり、虫を追いかけ跳ねたりと自然の中で、のんびりと過ごしている様子でした。一方、草むらの奥には伐採跡地。鳥の鳴声や虫の音も少なく感じます。伐採で最初に影響を受けるのは、そこで生活している生き物です。全ての人々が限りある資源を大切にしなければ、キツネも我々も自然の中で「あくびができなくなる日」が来るのではないでしょうか。

人を幸せにするはずの開発が、いき過ぎると野生動物はもちろんのこと、人間をも不幸にするという皮肉。そんな作品に込められた思いをかみしめると、野生のキツネののんびりとした表情が、ただ可愛いだけのものではなく感じられてくるのは私だけではないはずです。また、人間の不幸をあくびができなくなることと喩えたタイトルにも共感しました。表現者としてのセンスの良さが感じられます。
一般部門 ブラザー工業賞 「想う!!源氏物語」 / 柴田 元成

京都嵯峨野は源氏物語の舞台となった所、美しい竹林がつづく一角にやめて!!このイタズラ、現在の人にはこんな事で思い出を残すのでしょうか?

遠くから見て美しい風景も、近くに寄ると…。温暖化などの人類が今、直面している環境の諸問題と比べると小さなことかもしれませんが、本作品を通してこうした美しい景色をいつまでも残したいと願う気持ちも大切にしたいと思いました。また、「×」のような行為は誰かが声を上げれば止めさせることも可能なはず。この賞を通して落書きに対する問題意識を高め、解決へとつなげたい。本作品を選んだ最大の理由がそこにあります。
一般部門 三菱UFJニコス賞 「省エネとエコ」 / 糸魚川 恵子

ショッピングセンターの屋上駐車場に行き、フェンスの外側にずらりと並んだ空調設備を見ました。騒音と熱風で近づきたくない場所です。一方公共施設のロビーの窓に、この夏緑のカーテンが咲きました。朝顔とゴーヤが伸びて、花と実をつけています。目に優しく涼しさが増しました。この大きな窓全面に茂った緑に、職員の努力を感じます。

「快適さ」を求めるあまり、日本の至るところで目にするようになった「×」の風景。今にも熱風と騒音が聞こえてきそう。
一方「○」の写真は、建物の中でありながら、木漏れ日が差し込み、自然の豊かさを感じることができます。私たちの地球を守るために、テクノロジーに頼らずとも自然の恵みを活かしてできることがまだまだたくさんあることを実感できる作品です。