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金賞 | 近藤 長衛 | 棚田が消えていく。![]() | ||||||||||||||||||||||||
銀賞 | 藤井 克己 | 気になる光景![]() | ||||||||||||||||||||||||
銅賞 | 長瀬 芳伸 | じゃがいもが・・・![]() |
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枝廣淳子審査員賞 | 笠原 昭男 | 渡良瀬渓谷の光と影![]() |
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織作峰子審査員賞 | 斉藤 正良 | 最北の原生花園![]() |
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北山孝雄審査員賞 | 長瀬 裕惠 | 山火事![]() |
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木元教子審査員賞 | 細谷 信太郎 | 白い雪、黒い雪![]() |
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神吉猛審査員賞 | 樋口 洋光 | 川下り![]() |
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新美春之審査員賞 | ウェイン ディオン | いろんなネット![]() |
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ブラザー工業株式会社賞 | 原澤 宏 | 海と山の願い![]() |
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三菱UFJニコス株式会社賞 | 福田 尚人 | エコ プロジェクト![]() |
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優秀賞 |
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佳作 |
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一般部門 金賞 「棚田が消えていく。」 / 近藤 長衛

丹後半島の世屋地区に一人暮らしの年寄りが田んぼをつくっている。田植は娘さんが手伝いに来られ急傾面のちっぽけな田んぼを大事に米つくりされている。米のご飯が大好きな私には頭が下がる思いである。一方同様に山間傾面に米つくりがなされているが若者は村から離れ田舎は老人ばかりとなり美しい棚田は消えつつあり、淋しい光景が残念だ。若者が田舎に定着する手段はないものかと、つくづく感じる今頃である。

わが国の食糧自給率が40%を切った、高齢化に伴い放棄された休耕田が増えているなど、最近になって農業に対する問題が注目を集めています。本作品は、その農業という今までの応募作品にはなかったタイムリーなテーマに挑戦し、見事に審査員一同の心をつかみました。やはり印象的だったのは、「○」の写真における親子の笑顔。こういう人たちの笑顔を守りたいという作者のメッセージにとても共感を覚えました。さらに「×」の写真に視線を移すと、棚田が消える現実に対して私たちが今すべきことはなんだろうと深刻な問題を突きつけられる。「○」で和ませ、「×」で考えさせる作品づくりは、本コンテストの金賞にふさわしい巧みさを備えています。
一般部門 銀賞 「気になる光景」 / 藤井 克己

甲子園球場は、阪神タイガースの本拠地であるのと同時に、高校球児の憧れで、また最終目標の球場である。今年も89回全国高校野球大会が開催され、素晴らしいドラマが生まれた。一方タイガースの人気は今や日本一になり、ファンの熱烈な応援でも有名である。だが、応援に熱が入りすぎ、ジェット風船が球場の内外を飛びかい、シーズン終了後も球場の樹木にぶら下がっており、気になる光景です。

甲子園名物のジェット風船による応援は見た目も華やかで美しいものですが、あれらの風船のその後はあまり美しいとはいえないようで…。作者と同様に、「×」の写真の光景が気になっていた方も少なからずいるのではないでしょうか。作者は、8月と12月を選んで計画的に撮影。「○」と「×」の対比によるメリハリが最も高くなるように計算された作品は、夏の青空と冬の枯れ木というように狙い通りの効果を上げています。
一般部門 銅賞 「じゃがいもが・・・」 / 長瀬 芳伸

7月初旬の北海道は、じゃがいもの花がとても美しい。最初は観賞用として日本に入って来たのもうなずけます。さて、問題はこのじゃがいもが廃棄されて土に返っていく写真です。毎年のように生産過剰や規格外で捨てられる野菜、テレビでも報道されますが、実際に見るとまるで墓場のようです。食糧問題は複雑そうですが、消費者としては、少なくとも規格外の商品でも受け入れる姿勢は持っていたいものです。

ジャガイモという対象を継続して追ったテーマ性が評価された作品です。食糧自給率が4割以下なのに捨ててしまうのかという理不尽さは誰でも感じるところですが、このようにビジュアルとして見せられると、やはり悲観的な気持ちにさせられます。日本には「もったいない」という世界に誇るべき価値観があるにも関わらず、現実にはこの有様。せっかくの美しい花にも、もの悲しさを感じてしまいます。
一般部門 枝廣淳子審査員賞 「渡良瀬渓谷の光と影」 / 笠原 昭男

足尾から流れ出す渡良瀬川。今、渡良瀬渓谷鉄道がのんびりと走り秋の風景はのどかで美しい。しかし足尾の町のはずれには、廃線となった鉄道や荒涼とした山々が広がっている。足尾鉱毒事件から約120年。しかし一度痛めつけられた自然はなかなか元へはもどらない。多くの人々の努力にもかかわらず、樹木が再生せず土砂の崩壊を続ける山々が今でもある。私はこの土地へ年に数回通い写真を撮っている。私の生家も被害地にある。

以前より「写真はどうやって時間の経過を写し出すのだろう?」と思っていましたが、この写真を見てうなりました。美しい秋の風景と対比されるのは、足尾鉱毒事件から約120年が経過した現在も回復・再生していない山々の姿です。人間の為すことは、たとえそのときは意識していなくても、想像以上に大きな破壊力を持っていることを痛感させます。この学びを私たちは大事にしなくてはならない――そう教えてくれる作品です。
一般部門 織作峰子審査員賞 「最北の原生花園」 / 斉藤 正良

原生花園が泣いている。ここは日本の最北にある利尻礼文サロベツ国立公園。北の雄大な自然が訪れる多くの人々を魅了してくれる。この公園のすぐ傍には、エゾスカシユリやハマナスが咲き競う原生花園が広がっている。しかし、隣接する海岸は漂流ゴミや不法投棄のゴミの山となってしまった。自然を守るのも、壊すのも人間なのだ。

背後にそびえる山の角度から察するに、たぶん「○」と「×」の写真はそう離れた場所ではないのでしょう。少し移動しただけで、こんなにも景色が一変する驚き。しかも、ゴミの山が広がる場所は国立公園に隣接しているという点でもショックを受けました。ゴミは、私たちにとって一番身近な環境問題。その現状を分かりやすくダイレクトに伝える本作品からは、見る者の心を揺さぶる力強いメッセージが感じられます。
一般部門 北山孝雄審査員賞 「山火事」 / 長瀬 裕惠

昨年初めて山火事を見ました。火こそ見えませんでしたが、やはり怖いものです。山火事の原因の半分はたき火とタバコだそうです。この人為的な原因が無ければ、日本では毎年千ヘクタールの森を救うことができます。水や空気、木材や山菜、登山、ハイキングや虫取りまで森の恩恵は計り知れません。もちろんCO2の吸収、貯蔵という重要な役割も担っています。安易な気持ちで森と接する事の無いように心がけたいと思います。

子どもたちが虫取りをして遊ぶ姿は、元気そのもので、とても楽しそうです。子どもたちの貴重な遊び場でもある山は、ちょっとした不始末で、大変なことになります。いつも人間は、「自然の一部なのだ」ということを再認識しなくてはいけないと感じさせられた作品です。
一般部門 木元教子審査員賞 「白い雪、黒い雪」 / 細谷 信太郎

「○」→前日の猛吹雪がウソのようにおさまり、私は家の近くのブナ林へ、スノーシューを持って散歩に出かけました。青空の下、純白の雪原に映る木の影と、野ウサギの足跡が、とても印象的でした。「×」→月山山頂付近の万年雪です。「昔はこんなに黒くはなかった。」一緒に登った年配の方が、私に教えてくれました。冬の街場では見慣れた雪の汚れを、ここではずっと見ることができます。

月山に、環境の視点をおいて見つけた○と×。輝くばかりの雪原に、純白の雪をまとった樹木の影。青空に映えて、山形月山山麓の美しい雪の景色を切り取っています。でも、同じ月山の山頂の万年雪は・・・。驚きました。都会や街中で、ぬくぬくと生活している人間の出した「排気ガス」「粉塵」でしょうか。まさに、知らず知らずのうちに地球を汚している人間のエゴを、山の雪が教えている。○と×、見事な対比です。
一般部門 神吉猛審査員賞 「川下り」 / 樋口 洋光

ある春の日の水郷の町での一コマです。満開の桜の下を川下りの観光客がさかんにシャッターを押しています。一方、ゴミを拾いながら掘割を上っていく舟を見かけました。掘割に流れこむゴミの中には、家庭のゴミ、観光客が出したゴミもあるかもしれません。一人ひとりの心がけで身近なゴミを減らしていくことが、町の環境を良くしていくことにつながるのではないでしょうか。掘割のゴミが少しでも減っていくことを願っています。

桜を愛でる人の姿をしっかりととらえた素晴らしい瞬間です。同じ位置から見た満開の桜の下、役割の違う舟があるだけで、まったく桜の印象が変わります。素晴らしい着眼です。ゴミ集めの船頭さんも、できればお客さんを乗せて、喜んでもらえる仕事をしたいでしょう。しかし、舟からの桜を気持ちよく見ていただくための大切な仕事。みんなのちょっとした心がけで、水面のゴミが無くなれば、この舟も、お客さんのための舟に仕立て直しとなります。そんな川にしましょう。
一般部門 新美春之審査員賞 「いろんなネット」 / ウェイン ディオン

クモの巣は見ていて気持ちのいいものではないが、まさに自然が作り出した産物。一方、張りめぐらされた電線は、現代の利便性を追求した、みにくい怪物である。

縦横に張り巡らされた電線を、自然の産物であるクモの糸と対比させたアイデアが大変おもしろい作品です。グレイと緑の背景色でも人工と自然の対比を感じさせるなど、細かな演出も見事に表されています。電線によるこうした景観の破壊は、全国いたるところで見ることができますが、世界の常識では到底許されないことです。私たち日本人はその醜さに慣れてしまっているのではないでしょうか。一刻も早く改善すべき問題です。
一般部門 ブラザー工業株式会社賞 「海と山の願い」 / 原澤 宏

温暖化現象によって、世界中のサンゴが大きな打撃を受けている。サンゴが白くなってしまう、いわゆる白化現象である。このまま温暖化が進めば、世界中のサンゴがなくなるであろう。そして、 私たちの生活にもいろんな所で影響が出ていることは、誰もが承知している。本来の地球の姿を取り戻すためにも早急の対応が迫られている。

全海洋中、わずか0.2%の面積で世界の魚の1/4が生息しているという珊瑚。海水温の上昇等が原因で「白化」してしまった姿は、正に温暖化現象の深刻さを的確に捉えていると思います。IPCCによると 「このまま温暖化が続けば50年後には世界中の殆どの珊瑚が白化してしまう」とか。魚たちや、未来の子供達のためにも色とりどりの美しい珊瑚を残したい、今すぐにでも環境、地球にやさしい行動を始めよう、と思わせてくれる作品です。
一般部門 三菱UFJニコス株式会社賞 「エコ プロジェクト」 / 福田 尚人

黄色く美しい、花のジュータン。一面に咲く菜の花は私が生まれ育った昭和30年代には、ごくありふれた春の農村風景でした。時は流れ菜の花は、滋賀県から発祥し全国に広まった、環境に優しく無駄の少ない「エコプロジェクト」の主役として今脚光を浴びています。一方遊休地には外来種である、セイタカアワダチソウが繁茂しています。畑一面に同じ黄色い花が咲き乱れますが、ずいぶん重要度や好感度が違いますね。

「○」の写真の季節は春。菜の花の目にも鮮やかな黄色を中心に、SLがちょうど走っている瞬間をとらえるなど、大変美しい風景写真に仕上がっています。一方、「×」の写真の季節は冬。「○」の写真とはわざわざ季節をずらし、枯れた様子を写すことで「○」と「×」の対比を鮮明にし、外来種問題に対する自らの主張を明確に表現しています。また、本作品は写真としての完成度の高さも評価されたポイントです。