
【グランプリ】町田帆実さん 作品名「食事」
-グランプリ受賞おめでとうございます。今のお気持ちは?
とても嬉しいです。自身の作品を「良い」と思ってはいましたが、やはり他の方からどう評価されているのか不安で、少し悩んでいた時に受賞しました。素晴らしい審査員の方々に選んでいただき、自分が「良い」と思える作品がグランプリという輝かしい賞をいただくことができ、とても励みになりました。
これから制作活動を続ける上で背中を押してくれるような、大切な経験になりました。この気持ちを胸に、これからもたくさんの新しい作品を生み出し続けていきたいと思っています。
また、いつも様々な面で支えてくれている両親、一緒に悩みながらアイディアをくれる恩師の方々、切磋琢磨し合いながら制作を続けている友人たちと、自分の力になってくれた全ての人に感謝の気持ちで一杯です。

-絵はいつごろから描かれていましたか? どのような道のりで今に至るのでしょうか
物心がつく頃から絵を描くことが好きで、毎日のように描いていました。中学卒業後の進路を決める時、両親の後押しの中「これから何があっても、絵を描くことを嫌いになることはない」という自信があって美術の道へ進むことを決意しました。
美術科のある高校へ進学し、油画、日本画、彫刻をひと通り学んだ上で自由度の高い油絵具という画材を選んでいく過程で、その決意はどんどんと確実なものになっていきました。美大への進学を目指して美術予備校での指導を受け、描く楽しさだけでなく苦しみも味わうことになりましたが、絵を描きたくなくなることは一度もありませんでした。
高校卒業後、多摩美術大学でとても充実した4年間を過ごし、自分の描きたい絵が定まっていきました。大学院へ進学し、外へ発信する活動に挑戦し始めています。
-シェル美術賞に応募しようと思ったきっかけは何でしたか?
外へ発信するチャレンジの1つでした。大学院に進学してから、自分の絵をもっとたくさんの人に見てもらいたいという思いが強くなったんです。また、美術館関係の方に自分の絵を見て評価してもらう貴重な機会ということもあり、張り切って応募を決めました。

-受賞作品「食事」はどのようなコンセプトで描かれたのでしょうか。
毎日繰り返している「食事」という日常的な行為も、誰と、どこで、何を食べたのかによって、それぞれに鮮やかな記憶があると思います。今回の絵では、実際に私が参加した飲み会の風景を元に描いています。人数がどのくらいいたのか、何を頼んだのか、1つ1つ思い出しながら、その場の空気や音、味の記憶ごと画面に込めたいと思いました。
おおらかなタッチや余白から想像が膨み、鑑賞者の記憶の中にあるいつかの食事風景を呼び起こせるような作品になればと思います。「食」の持つ楽しさや豊かさ、幸せを実感してもらいたい!という願いをこめました。
-本当におおらかな、独特のタッチですね。
はい。記憶を1つずつキャンバスに置いていくような感覚で描いています。記憶というモチーフを大らかな筆跡でとらえることで、鑑賞者の想像する余地が生まれ、記憶とリンクしてくれれば、と思っています。
また、新しい試みとしてコラージュも用いています。「食」をテーマに描いていく中で、料理という行為と絵の具を置いていく行為が似ていることに気づきました。そこで絵の具を今までよりも、より物質として扱いたいと思い、コラージュに至りました。
コラージュの際に行う、素材を1つ1つ選び、切り取り、キャンバスに盛り付けていく作業は、絵画を描く感覚と料理を作る感覚を同時に体験しているかのようでした。

-今回の受賞を糧に、これからどのような絵を描いていきたいですか? 今後の活動予定や展望、将来の目標や夢をお聞かせください
先のことはまだわからないことだらけなので、今は目の前のキャンバスを「良い」絵にし、外に向けて発信するための挑戦を続けていくことが目標です。また、個展の経験がないので、いつかできたらと思っています。これからも、絵を描くことを一生続けていきたいです。
-来年の応募者の皆さんに、ひとことメッセージをお願いします!
私は今回の応募で、絵を描くことにおいても、外へ発信することにおいても、挑戦することの大切さを実感しました。落選でも入賞でも、素晴らしい審査員の方々の目に触れるチャンスには変わりありません。来年の応募を考えている皆さんも、ぜひ挑戦した作品で、挑んでください!