潤滑油と法規制

発がん性物質の規制

1987年、国際がん研究機関は、発がん性の分類と基準を1~4段階に定義しました。表-4に発がん性の定義とこの分類に該当する嗜好品や潤滑油基油をまとめました。現在では一般化している高度精製基油は、紅茶や緑茶と同じ「ひとに対して発がん性について分類できない」に分類されています。

1985年、米国労働安全局(OSHA)は、国際がん研究機関が明確に定義しなかった潤滑油基油の精製度で発がん性基準を定めています。一方、1996年に欧州連合(EU)加盟各国は、基油中の多環芳香族化合物の量と動物実験結果には相関があるとし、3%を境にした基準で発がん性基準を定めました。

わが国の石油連盟と潤滑油協会では、米国、欧州のいずれかが「発がん性あり」と定義したものを、自主基準として取り入れています。出光潤滑油製品には、特殊用途を除いて、「発がん性あり」と表示しなければならない潤滑油はありません。
表-4 国際がん研究機関が定義した発がん性物質の分類とそれらに分類されている嗜好品や潤滑油基油
グループ 定義 嗜好品 潤滑油基油
1 ヒトに対して発がん性がある 煙草、アルコール飲料 未精製および軽度精製潤滑油基油
2A ヒトに対して恐らく発がん性がある 熱いマテ茶 -
2B ヒトに対して発がん性があるかもしれない コーヒー -
3 ヒトに対して発がん性について分類できない 紅茶、緑茶、ウーロン茶 高度精製基油
4 ヒトに対して恐らく発がん性がない - -

環境汚染・廃棄物に関する法律

現代社会が抱える問題の一つに「ゴミ戦争」の深刻化があります。廃潤滑油のうち、他人に有償で売却できず不要になったものは、「廃棄物の処理および清掃に関する法律」で定める産業廃棄物としての廃油となります。廃潤滑油は、燃焼処分するか、あるいは再生処理の上再利用されるか、どちらかの道をたどります。

切削加工油用潤滑油の一部には、加工性能を向上させるために塩素系化合物が添加される場合があります。この廃油を燃焼処分すると、有害な塩素系ガスを発生する恐れがあるため、塩素系添加剤を使用しない切削加工用潤滑油が今後ますます注目されることになるでしょう。

自動車をはじめ工場の機械を滑らかに動かすという潤滑油の重要な役割は、炭酸ガス(CO2)削減や省エネルギーの観点からますます重要になっています。しかしながら、使い方や廃棄方法を誤ると、危険な状態になったり有害となる可能性があります。潤滑油の性質をよく理解した上で正しく使用するため、容器に表示してある「安全上の注意事項」や「製品安全データシート」を利用されることを願っています。
これは1998年9月の「月刊出光」に掲載した内容を一部修正したものです。
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