潤滑油と法規制

化学物質としての分類と規制 1

「化学物質の審査および製造の規制に関する法律」は、化学反応により得られる物質を対象としています。新たに化学物質を作ったりした場合は、その物質の安全性試験(生分解性、濃縮性など)結果を添えて、上市の三ヶ月前までに通産省、厚生省に届け出る必要があります。 この制度は、日本が初めて法制化したものです。現在では広く世界各国に同様な制度が設けられるようになってきました。潤滑油においても国内では、既存化学物質や新規告示物質に記載されていないものは、販売や流通をさせてはならないことになっています。

化学物質としての分類と規制 2

急性毒性物質は、毒物・劇物取締法によって物質が指定されています。日本、欧州、米国など各国の法律に規制されている「毒性を示す数値」は、国によって少しずつ異なっていますが、一般的に毒性を示す数値は、薬物の50%致死量(LD50)で示されています。これは薬物の量を変化させて、動物に経口投与し、72時間~1週間程度の観察中にその50%が死亡する動物数より求めます。動物ごとに大きさが異なるため、一般的には(体重1kg当たりの薬物のmg数)で表示されています。

毒物研究者であるホッジ氏は、表-3のように毒性ランクと50%致死量(LD50)の関係を公表しています。大半の潤滑油製品は、50%致死量が1kg当たり5,000mg以上ですので、毒性の程度は実際上、無毒に当たります。
表-3 致死量と毒性
毒性度5 LD50 1回経口投与 ラット(mg/kg) 毒性の程度
1 <1 極めて大
2 1~50
3 50~500 中程度
4 500~5,000
5 5,000~15,000 実用上無害
6 >15,000 無毒

化学物質としての分類と規制 3

労働者の健康を保持することを目的とした労働安全衛生法には、作業環境基準が告知されており、物質ごとに管理濃度が定められています。溶剤希釈(ようざいきしゃく)型防錆油に使用されている溶剤が管理濃度規制に該当する場合がありますが、一般的な潤滑油は対象物質ではありません。

日本産業衛生学会は、作業環境での許容濃度の勧告を行っています。

潤滑油に用いている鉱油系基油の場合は、ミスト(気体中の小さい液体粒子)での規制を勧告しており、鉱油ミストとして立方m当たり3mg以内を許容濃度としています。潤滑油を使用する作業環境上では、ミストの発生を極力抑制するとか、発生源の密閉化や排気を行う必要があります。
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