潤滑油と法規制

危険有害物の法規制と潤滑油の関係早わかり
潤滑油は、基油(ベースオイル)と添加剤とから成り立っています。その種類も自動車用エンジン油をはじめ、工場で使用されるギヤ油など多岐にわたります。その上、潤滑油の用途が広範囲であるため、関連する法規も少なくありません。ここでは潤滑油に関連したいくつかの法規制を紹介します。

危険有害性の分類

化学物質の危険性、有害性が話題になり、テレビや新聞で報道されることが多くなりました。法律では、この危険有害性をどのように分類しているのでしょうか。

労働省の告示によれば、危険有害性は表-1のように分類されており、爆発するもの、急性毒性があるもの、というように11種類に分かれています。

では、潤滑油はどの分類に該当するのでしょうか。一部の軽質油を使用した製品では、引火性液体に該当する場合がありますが、大部分の潤滑油は、これら危険有害性の分類には該当していません。
表-1 危険・有害性分類基準
分類の名称 関連法規 該当物質例
爆発性物質 火薬取締法 ニトログリセリン
高圧ガス 高圧ガス保安法 圧縮アセチレンガス
液化ガス
引火性液体 消防法 ガソリン、灯油、キシレン
可燃制固体または可燃性ガス 消防法 硫黄、マグネシウム粉
自然発火性物質 消防法 黄リン、アルキルマグネシウム
禁水性物質 消防法 金属ナトリウム
酸化性物質 消防法 硝酸、塩素酸塩
自己反応性物質 消防法 ニトロソ化合物
急性毒性物質 毒物および劇物取締法 シアン化水素、砒素、水銀
腐食性物質 安衛法 硫酸、硝酸、塩酸
その他有害性物質 安衛法 塩素化ビフェニル

引火性の分類と規制

潤滑油は石油製品であるため、一般にはまず、引火するのではないかと思われているようです。なるほど、グリース類や水溶性切削油剤の一部を除いて、多くの潤滑油には確かに引火性があり、その程度が区分されています。 労働安全衛生法には、「引火性の物」と規定した法律分類がありますが、この「引火性の物」は、引火点65℃未満が対象になっているところから、潤滑油の多くは、この「引火性の物」の対象外となります。 消防法での規制は、どうなっているのでしょうか。表-2に消防法の引火性液体をまとめたものを示しました。 潤滑油は多くが、消防法の危険物第四類の第三および第四石油類、可燃性液体類に分類されています。その定義は、第四類第三石油類では引火点70℃以上200℃未満、第四類第四石油類では、引火点200℃以上250℃未満、可燃性液体類では引火点250℃以上が分類基準となっています。ただし、表中の指定品目については分類基準に関わらず、特定の石油類に分類されます。なお、ギヤー油につきましては、JIS K 2219に定義されていますので、詳しくはご参照ください。



可燃性液体類は、消防法上は危険物の指定から外れ、貯蔵、取り扱いにおける規制が緩和されます。ただし、保管数量2,000L以上の場合は、市長村条例における指定可燃物としての規制を受けるため、所轄消防署への届出が必要になります。

表-2 消防法分類基準
分類基準 該当物質例
第四類 特殊引火物 ・発火点が100℃以下
・引火点が-20℃以下で沸点が40℃以上のもの
ジエチルエーテル
二硫化炭素
第四類 第一石油類 引火点が21℃未満 ガソリン
アセトン
第四類 アルコール類 飽和一価アルコール(炭素数1~3) メタノール
エタノール
第四類 第二石油類 引火点が21℃以上70℃未満 灯油、軽油
第四類 第三石油類 引火点が70℃以上200℃未満 ATF、重油、切削油
第四類 第四石油類 引火点が200℃以上250℃未満 エンジン油、ギャー油
可燃性液体類 引火点が250℃以上
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