世界に誇るIdemitsuブルー

Idemitsuブルーの歴史

不可能とされた青い光を求めて

1985年、出光興産は有機EL材料の研究を開始しました。既存の事業である石油・石油化学の枠を超えた新しい事業の可能性を探索したもので、開発のターゲットは光の三原色(赤・青・緑)のうち実用化が最も困難とされていた青色の発光材料でした。当時、電子材料としてもっとも注目を浴びていたのは「無機」半導体。有機発光材料の開発は、まだ海のものとも山のものとも知れないものでした。
開発に着手してから4年後、研究チームは明るい場所でもそれとわかるほどの青い光を放つ蛍光材料「ジスチリルアリーレン」を発見しました。青色の光は、当時まだ無機半導体でも出せない、画期的な成果でした。1997年には光量と寿命を大きく改善する青色ドーパント「スチリルアミン」を発見。長寿命化・高効率化に向けた技術開発をその後も継続し、当社はついに青色の発光材料の開発に成功しました。
そして、当社が1997年に米国で開かれた国際ディスプレイ学会に出展した世界初の有機ELテレビの試作品は、世界の大きな注目を集めました。

1997年に出光が試作した有機ELテレビ初号機

1997年に出光が試作した有機ELテレビ初号機

出光 有機ELの歴史

積層型発光層素子により世界最高レベルの青色有機EL性能を実現

~「Display Week」で2022年につづき2回目となる最優秀論文賞を2025年に受賞~

当社のさらなる挑戦は続き、2018年には蛍光型青色有機EL素子において発光層の積層構造を用いた新たな発光方式を開発し、世界最高レベルの発光効率と長寿命化の両立に成功しました。その後も発光効率の向上と長寿命化を目指して開発を続け、従来の単層発光層と比較して20%の消費電力削減を実現しました。本成果は、ディスプレイ関連の世界最大の学会であるSociety of Information Display主催のシンポジウム「Display Week 2025」において、有機EL技術部門の最優秀論文に選定されました。本受賞は、2022年に続く2回目の選定となります。
有機ELの長年の課題は「寿命と効率のトレードオフの法則」、すなわち寿命を延ばすと効率が下がることでした。これまでの技術の延長線上にあるものではなく、既成概念を覆すような技術開発の必要性を感じた研究チームは、新しい構造のコンセプトやアイデアを創出しては、ひとつずつ過去の研究開発で使用した素材を試す実験を地道に繰り返しました。当社の知財力の高さや研究チームのチームワークといった強みも相乗的に効果を発揮し、2種類の青色材料を積層して機能を分離することで発光ロスを抑え、高い発光効率と長寿命を両立する方法を生み出すことに成功しました。
本技術は従来技術に比べ発光効率の向上と長寿命化を同時に実現し、有機ELディスプレイの省電力化と製品の長寿命化による環境負荷の低減に貢献します。