低炭素化に向けた取り組み

出光興産では、石炭ボイラの低炭素化ソリューションの提供や、石炭鉱山の運営で培ってきた経営資源や知見を最大限に活用した新規事業への移行に取り組んでいます。これらの取り組みを通し、当社の事業ポートフォリオ転換を推進するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

ブラックペレット(バイオマス燃料)の供給に向けた取り組み

石炭と混ぜて燃やすこと(混焼)が可能なバイオマス燃料であるブラックペレット「出光グリーンエナジーペレット」の供給事業に取り組んでいます。石炭火力におけるバイオマス混焼は、効率的なCO2削減策であり、エネルギーミックス実現への現実解であると考えています。

未来を創るIdemitsuのキーワード

バイオマス燃料とは?

化石燃料を除く有機物から生まれたエネルギー資源です。木質バイオマス燃料が燃焼するときにCO2を排出する一方で、植物は生育途中の光合成で大気中のCO2を吸収するため、全体で見ると大気中のCO2量を相殺し、「カーボンニュートラル」となる特徴があります。

取り組みの背景と狙い

石炭火力発電は他の電源に比べ、1kWh(発電量)あたりのCO2排出量が多くなります。石炭とバイオマス燃料と混焼することでCO2排出量を下げる狙いがあります。

今後の展開

ベトナムでサンプル製造、製造ノウハウの蓄積を行いながら、お客様への情報提供を進めてきました。現在、商業運転に向けた準備を行っています。

ベトナム工場の様子1
ベトナム工場の様子2
ベトナム工場の様子3

ボイラ制御最適化システムULTY-V plusの販売

ULTY-V plus

ボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus」は、発電所や工場で使用されている石炭、重油、バイオマス等を燃料とする既存のボイラに接続するだけで機能します。
AI(人工知能)を活用して学習し、一連の制御「計測」、「分析」、「判断」を自己完結型で行うことによりボイラ効率を向上します。これにより、燃料使用量の削減とCO2排出量の削減を実現します。
当社、郵船商事株式会社、日本郵船株式会社の出資会社である郵船出光グリーンソリューションズ株式会社が販売しています。
日本以外にも台湾・インドネシアなど東南アジアへ販売を行っています。

仕組み ULTY-V plusは、ボイラ制御システムに接続して、燃料流量の制御にAI機能を搭載した制御プログラムで補正を行います。
効果 燃料使用量とCO2排出量を0.5~1.5%削減します。
販売先 国内の電力会社や様々な業種の工場といったお客様への納入はもちろん、台湾・インドネシアなどへも販売しており、今後さらに販売地域を拡大していきます。
販売元 郵船出光グリーンソリューションズ株式会社

カーボンリサイクル技術の開発

CO2を資源として捉え、カーボンリサイクル技術(CO2の利用技術)のイノベーションを促進するため、2019年、経済産業省エネルギー庁に「カーボンリサイクル室」が設置されました。時期を同じくして、当社はカーボンリサイクル技術の一つである、コンクリート廃棄物等とボイラ等の排ガス中に含まれるCO2を原料とした合成炭酸カルシウム(合成炭カル:CaCO3)製造技術である炭酸塩化技術の研究開発を開始しました。

カーボンリサイクル技術の開発

当社の合成炭カル製造技術は、廃コンクリート(廃コン)、残コンクリート(残コン)を原料とした2つの方法があります。

当社の合成炭カル製造技術

環境保全に配慮した鉱山操業と鉱山跡地リハビリテーション

自然環境の維持向上

鉱山では環境保全に配慮した操業に努めています。ダスト、騒音、振動、水、温暖化ガス等のモニターを継続しながら、操業に伴う地域コミュニティへの影響を確認し、最小化に取り組んでいます。
また、採掘が終わった鉱山跡地では、埋め戻して整地した後に、植林して自然を元の形に戻すリハビリテーションを行います。これにより、生物多様性への影響の低減、自然環境の維持向上に努めています。

鉱山の跡地やインフラ等を活用した再生可能エネルギー事業への挑戦

太陽光発電事業の検討(オーストラリア)

オーストラリアでは、政府による脱炭素化に向けたエネルギー転換が推進されています。また、国土が広く、風況・日照等の気候条件が再生可能エネルギーの創出に適しているため、他の地域と比較して安価かつ安定的な再生可能エネルギー製造の可能性に富んでいます。
当社は、オーストラリアの鉱山遊休地及び送電線を活用して太陽光発電を行い、鉱山及び地元地域に電力供給を行う事業を検討しています。

揚水型水力発電の検討(オーストラリア)

揚水(ようすい)型水力発電は、水力発電の方法の一つです。太陽光発電量が増大する昼間に、安価な再生可能エネルギー等を利用して下部貯水池から上部貯水池へ水を汲み上げ、朝~夕方といった需要が見込まれる時間帯に、上池ダムから下池へ水を導き落とすことで発電します。
当社は鉱山の採掘跡地を下部貯水池に転用し、周囲の丘陵地を活用する電力発電・供給事業を検討しています。

バイオマス燃料原材料の栽培検討(オーストラリアおよびインドネシア)

鉱山近郊でペレット生産に適する原材料を栽培して、バイオマス燃料を生産し、輸送に鉱山の既存インフラを活用することを検討しています。

レアメタル事業への参入推進(オーストラリア)

鉱物資源に恵まれたオーストラリアにおいて、石炭鉱山操業と親和性があり、低炭素社会を実現する上で不可欠なレアメタル事業への参入を推進しています。

バナジウム鉱山プロジェクト

バナジウム鉱山プロジェクト

バナジウム鉱山と電解液プラントに関するプロジェクトを推進するVecco(ヴェッコ)社(Vecco Group Pty Ltd)に出資し、レアメタル事業の知見獲得に取り組んでいます。Vecco社はプロジェクトにおいて、バナジウムを含む鉱石の採掘・五酸化バナジウムへの精製・レドックスフロー電池*用のバナジウム電解液生産といった、地産地消のバリューチェーン構築を目指しています。

  • レドックスフロー電池:エネルギーを電解液に蓄える仕組みの電池。電池容量の拡大が容易で、長寿命といった電力系統用の大型蓄電池に適した特性を持ち、再生可能エネルギーの導入促進に寄与するものとして注目されている。

リチウム鉱山プロジェクト

リチウム鉱山プロジェクト

リチウム事業を推進するデルタリチウム社(Delta Lithium Limited)へ出資し、リチウム採鉱の知見の蓄積と、地政学的に安定した豪州でのリチウム鉱石の生産・供給安定化に貢献することを目指しています。
リチウムは、電気自動車(EV)をはじめとしたモビリティの電動化や、定置用大型蓄電池需要の拡大に伴い、需要が加速すると見込まれています。