2008年8月
最近は女性週刊誌にも特集されるほど日本人にはメジャーになったアラブ首長国連邦(UAE)。「沸騰都市」、「オイルマネーが渦巻く」、「高級リゾートにセレブが集まる」というキャッチフレーズを耳にしますが、実態はどうなのでしょうか。今回は巨大プロジェクトやエネルギー産業といった「外向き」のUAEではなく、駐在員の目を通したUAEでの日常生活という「内側」の様々をご紹介し、みなさんに少しでも理解を深めていただければと思います。
「過酷な気候」
まず気候ですが、UAEはものすごく暑い国です。中東事務所がある首都のアブダビの8月現在の気温は40度を軽く超え、真冬でも日中は20度を下回ることはあまりありません。これに加えて夏場の朝夕は湿度が100%近くになり、町中はまさにサウナ状態。風が吹けばドライヤーの中を歩いているような感覚です。しかし、一旦建物の中に入ると、22度前後に設定された空調が一気に体を冷やし、上着が必要になることもあります。この暑さ、大人ならなんとか耐えられるかもしれませんが、子供達には更に過酷です。とにかく暑すぎて、外で遊べないのです。アラブの子供達は夜、日が落ちてから公園でサッカーをしている姿を見かけますが、朝起きて夜は寝るのが当たり前という生活習慣に慣れている日本の子供達にとって、昼間外で遊べないというのは大きなフラストレーションとなっています。また、屋外で働く人にとっても日中(午前5時〜午前11時)の作業は困難であり、午後3時から夜までの作業時間となっているようです。
「昨日と違う今日の道」
UAEでは空前の建設ラッシュと言われていますが、実態は、本当にその通りです。ドバイは言うにおよばず、アブダビでも街のあちこちでクレーンが動き、炎天下の中、作業員が働いている姿をみるのが日課になっています。日進月歩、街が姿形を変える様子が本当によく分かります。道路整備も頻繁に行われており、ドバイでは毎日のように道路が変更になるため、これまで何度も行っているドバイ空港からアブダビへの帰り道が分からなくなって、迷子になったこともあるほどです。ドバイほどではありませんが、アブダビでも昨日と同じ道を通っていたのに、実は全く違う道を走っていた、なんてこともよくあります。あと数年たったら、「ここは本当にUAE?」というほど、街の様子がすっかり変わっているかもしれません。
ドバイで建設中の高層ビル群
「おいしい水あります」
普段何食べているの?と聞かれることが多いのですが、スーパマーケットにある、肉、魚、野菜等を使い、駐在員の奥様方の相当の努力もあって、なんとか普通の食事が食べられている、という状況です。しかしながら、大根やゴボウ、レンコンなどの根菜類は入手困難で、日本からの出張者に「スーパーで大根買ってきて!」と頼むこともあります。また、お土産でいただく日本食や生ラーメン、日本のお菓子等は、普段口に入らないため、社宅に持って帰るとあっという間になくなってしまいます(特に子供達はお土産をすごく楽しみにしています!)。アラブでは「お酒と豚はNG」とよく言われますが、ことUAEでは、お酒は許可証があれば何とか買えますし、豚も非イスラム教徒用の食材コーナーを設けているスーパーで多少手に入ります。ただし、それも非常に限定的で、食べたい時に食べたいものが手に入る日本の食生活とは大きく異なっており、不便を強いられることのほうが多いです。意外かもしれませんが、「ミネラルウォーター」はとってもおいしいです。砂漠のオアシスで採れるミネラルウォーターは、日本人好みの軟水で飲みやすいことで知られています。最近はUAEブランドのミネラルウォーターが日本の高級スーパーでも高値で売られていると聞きますが、当地での値段は1.5ℓで1ディルハム(約30円)とお買い得です。尚、水道水は海水の脱塩水で、飲用には使いません。
「24時間、面倒みます」
アブダビ市内には大きな病院が多数あり、そのほとんどが24時間対応で診察してくれます。どの診療科でも何人かの先生がシフト制をひいて常駐してくれていて、かかりつけの先生がいなくても診察してくれるのですが、「ほんとうにコレだけでいいの?」と疑いたくなる診察方法だったり、言葉の問題で自分達の症状をうまく伝えられなかったり、薬の用法が良く分からない等、とても不安になることもあります。また、当地で出産を経験し、無事に出産できたのはいいのですが、出産当日に産婦人科の先生が遅刻して、出産に間に合わなかったり、産後1日で退院させられるなど、医療という点においては、日本と同水準のサービスが受けられる、とはいきません。ちなみに医師はイラク人、エジプト人、インド人、欧米人が多く、UAE人の医師は少ないようです。
エジプト人の先生が熱心に診察中
「止め放題?アブダビの駐車場事情」
現在、UAEで非常に問題になっているのが、交通事情の悪さです。暑い国だけあって、ほんの数百メートル移動するだけでも車を使う人が多く、車両の多さは目を見張ります。これまでアブダビにはバスや電車といった公共交通機関というもがなく、移動はもっぱら自家用車かタクシー(初乗りで70円くらい)を利用するか、歩くしかありませんでした。最近でこそやっとバス(2008年12月まで無料)が走るようになりましたが、焼け石に水で、車両が減った感覚はありません。加えて、交通渋滞の更に激しいドバイからアブダビに移住してくる人もおり、交通事情は悪くなるばかりです。また、運転マナーも決してほめられたものではなく、「譲り合って」というよりも「競い合って」運転する人が多いので、街中にはいつもクラクションがうるさく響いています。駐車場事情は更によくありません。駐車スペースが絶対的に不足しているため、本来駐車できない場所にみんな平気で車を止めており、警察もいたちごっこだからなのか、一向に取り締まる気配がありません。場所があれば道路の真ん中にでも駐車するのが日常茶飯事です。スペースを最大限活用しようということでしょうが、この違法駐車のせいで、駐在員も駐車するたびに冷や汗をかいています。
放置してるのではありません。駐車してるんです!
「高騰する家賃、少ない物件」
アブダビの住宅賃料は統計上、この1年でなんと49%も上がりました。しかも物件数も非常に少なくなっています。2〜3LDKのアパートを探すと、まず、事務所に近いところに空きがあるアパートはほとんど見つかりません。アブダビでは郊外を中心に住宅の建設ラッシュが始まっていますが、完成するまではあと2年くらいかかると言われており、供給不足、価格高騰のピークに差し掛かっていると言われています。そんな中、不動産業者は「興味があるなら、あと数時間で決めて欲しい。借り手はいくらでもいる。」といった具合に非常に強気です。セキュリティーも良く、不便の少ないアパートを借りるためは、結局、即日即決を迫られ、数年前からすると2倍はするであろう家賃で手を打たざるを得ないのが現状です。それでも1ヶ月で見つかればラッキーな方で、人によっては家探しに数ヶ月かかるケースもあります。
「アラブの子供達」
UAEは人口450万人のうち、外国人が8割を占めます。特に多いのがインド、パキスタン、バングラデシュ、フィリピンといった国からの出稼ぎの人々で、この国のあらゆる産業を支える労働力となっています。UAEにとって、こうした外国人は不可欠な存在と言えます。UAEには様々な人種の子供達がいますが、日本人の目からすると、その一部にはルールを守らない子供がおり、がっかりさせられることもしばしばです。列に割り込んできたので、注意すると「この人何を言っているの?」といった表情を浮かべ、私の顔を見て、自分から「NO PROBLEM(問題ないでしょ?)」と言という態度には正直、大きな戸惑いを感じました。しかし、UAEは子供達の教育を最重要課題として、将来を担う人材を育てようと真剣に取り組んでいます。実際、連邦政府の予算の約半分は教育の充実に割り当てられているほどです。
以上、UAE生活のほんの少しですが、思いつくままにご紹介させていただきました。ただ、これら全てに共通するバックグラウンドとしてあるのは、「石油の恩恵」に他なりません。本来、人が生活するのには過酷な環境であるUAEで、石油によって得た収入があるからこそ、輸入された新鮮で安い野菜が買えるし、安い石油製品によって車の需要は増えているし、高層ビルを建て、最新の医療設備も整えられます。また、裕福であるがゆえに人々もおおらかで、家賃が2倍に上がってもなんとか払える、そんな状況が維持できているのです。つい最近まで30ドル台だった原油が今はその4倍以上の140ドルに達し、数十億ドルレベルの巨大プロジェクトや巨額の不動産投資に代表されるように、オイルマネーの力で強力に前進しようとするUAE。この数年でさらにこの国は様変わりしていくでしょう。皆さんも一度その変貌ぶりをUAEに来て確かめてみてはいかがですか?
